4WDを徹底解説! 日産の4WD車を雪上試乗であれこれ比較してみた
カテゴリー: クルマ
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2016/03/05
日産4WD車オールラインナップ雪上試乗会in長野ビーナスライン
日産の様々な4WD車で雪上を走行する機会に恵まれた。ひと口に4WDといっても、そのシステムは異なる。日産車だけでも数種類のシステムをラインナップする。代表的なシステムを採用する4WD車について、その特徴と印象を報告したい。ホントは凍った女神湖(長野県立科町)での氷上試乗会の予定だったのだが、暖冬のため氷の厚さ足りず。無念!
エクストレイルHVはハイテクてんこ盛りのオールラウンド4WD
エクストレイル・ハイブリッド(HV)の4WD方式はオールモード4x4-i。現代の乗用4WDの多くが採用する、普段はFWD(前輪駆動)で走行し、必要が生じると4WDとなるオンデマンドタイプだ。
初期のオンデマンドタイプは前輪がスリップし始めてから、初めて後輪も駆動する機械的な仕組みだったが、エクストレイルHVの4WDシステムをはじめとする最近のそれには、電子制御を駆使した様々な機能が盛り込まれており、場面に応じて前輪がスリップしなくても後輪が駆動する。
オールモード4x4-iは、オートモードにしておけばドライバーのアクセルを踏み込む量やステアリングを切る量などを検知し、車が自動的に前後トルクをきめ細かく配分する。ドライ路面で燃費を重視したい場合にはFWDに固定することもできるし、悪路を走破する場合に直結(前後トルク配分50:50)状態で固定することもできる。
この他、エクストレイルHVには車両安定のための電子制御システムが多数採用されている。まずアクティブエンジンブレーキ。これはスピードやステアリングを切る量、ドライバーのブレーキング量などを検知し、コーナーにさしかかったと車が判断すると、CVTのギア比が自動的に変化し、エンジンブレーキが強まる仕組み。これによってドライバーは知らず知らずのうちに安定してコーナーをクリアできる。
次にアクティブライドコントロール。車は加速すれば上を向くし、減速すれば下を向く。これを利用し、凹凸路面を走行するなどして車体が上を向いた際にトルクを絞って車体が下を向くよう促し、下を向いた際にはトルクを上乗せして上を向くよう促す仕組み。要するに揺れに対して、それを打ち消すように細かくエンジン(やモーター)の力を加減したり前後ブレーキをかけたりする。
横滑り防止装置を利用したコーナリングスタビリティアシストも付く。コーナリング中、オーバースピードによって車が傾きすぎたり外へ膨らみすぎた場合に、内輪のみにブレーキをかけることでそれを是正する。横滑り防止装置が危機回避のためのお仕置き的な機能なのに対し、コーナリングスタビリティアシストはそのずいぶん手前の段階で自然に作動することで、ドライバーが気持ちよくコーナーをクリアできるようにアシストをする。
ハイテクてんこ盛りの4WDシステムによって、エクストレイルHVは実にフールプルーフに雪道を走らせることができた。急加速、急ハンドル、急ブレーキなど、【急】の付く操作をしないというのは雪道ドライブの基本だが、あえて少々ラフにアクセルを踏み込んでも、何事もなく発進することができた。前輪が滑ってから後輪にもトルクが伝わるのではなく、最初から四輪が駆動してスタートしている感覚。アクセルの踏み方などを車が検知し、発進とほぼ同時に後輪にもトルクが伝わっているのだろう。
ジューク NISMO RSは積極的に曲がろうとするスポーティ4WD
登場当初ファニーなルックスが話題となったジューク。コンパクトなわりに車内も広くて実用性が高いカジュアルSUVだが、ニスモが本気を出してイジったらしく、走り始めた瞬間、いかにもソリッドで、ボディ剛性が高いのを感じる。ボディ下部、後部を中心に補強されているそうだ。専用のスポーツスプリングはガチガチとは言わないまでも硬い。エンジンは最高出力215psのハイチューンな1.6L直4ターボだ。
ジュークにもオールモード4x4-iが備わるが、ジュークのそれはトルクベクトル付き。これは後輪の左右にトルクを振り分けるデファレンシャル部分に電子制御の仕掛けがあって、外側にトルクを多めに配分することで車をより曲がりやすくする機能。最近になってこの機能が付いた4WDが増え始めた。
4WDというのは根本的に直進性が高い駆動方式であり、つまり曲がりにくい。4WDの歴史はいかに車を曲げるかという戦いの歴史でもある(大げさか……)。昔ながらのセンターデフなど機械的な工夫もあれば、前述したエクストレイルHVのコーナリングスタビリティアシストなどの電子制御もある。
トルクベクトルは最も積極的に車を曲げようとする装置で、効果は抜群。本来ドライ路面でスポーティな走りを楽しむための機能だが、ドライ路面だと一定以上のペースで走行しないとご利益を実感できない。けれど雪上では30km/h前後でも十分に曲がりやすさを感じることができた。運転がうまくなったような気にさせてくれるが、それは錯覚なので、ジューク NISMO RSに乗った後、他の車に乗る場合は気をつけよう。
GT-Rは雪道でも速い
GT-Rは世界最速の部類に入るスポーツカー。GT-Rが4WDを採用する理由は悪路走破性を高めるためではなく、有り余るパワーを効率よく路面に伝えて速く走るため。GT-Rに限らずスーパースポーツがこぞって4WDを採用するのもそのためだ。
1989年登場のR32型スカイラインGT-R発売に合わせて日産が開発したアテーサE-TSが最新のGT-Rにも採用される。RWD(後輪駆動)をベースに、湿式多板クラッチを介して必要なタイミングにのみ前輪にもトルクを配分するシステムだ。必要なタイミングとは、コーナー出口でドライバーがアクセルを踏んだ際にトルクが強大すぎてタイヤがスリップし、車体が外へ膨らみそうなとき。その場合に前輪が駆動して車を引っ張り、外へ膨らむのを防ぎ、車を前へ進めるのだ。RWDベースとFWDベースという違いはあれど、アテーサE-TSもオールモード4x4-iと同じオンデマンドタイプといえる。
最高出力550psのGT-Rで雪道を走るとなると、どうやったって緊張を強いられる。こわごわスタートし、雪上ワインディングロードへ向かう。ところがいざ走らせてみると、さっき乗ったエクストレイルやジュークと同じように加速し、曲がり、減速できるではないか……。GT-R、恐るるに足らず! というわけで、横滑り防止装置を安全重視のノーマルモードから、ある程度スリップアングルを許す「R」モードにして走り始めたら、最初のコーナー出口でズリッと後輪が飛び出しかけ、激しく後悔した。
お尻が出るのはRWDかRWDベースの4WD車特有の挙動だ。エクストレイルやジュークではあり得ない。そんなに乱暴に踏んだつもりはなかったのだが、アクセルレスポンスが非常に鋭いので、わずかな右足の動きに車がビビッドに反応してしまうのだ。レスポンスのよさはドライ路面では速さ、気持ちよさにつながるが、雪道では怖さにつながる。
けれど、それにもだんだん慣れてくる。相変わらず踏むと後輪がズリッと外へ飛び出しそうになるけれど、必ず「ズリッ」で止まる。と同時に前輪が車を引っ張って前へ進めてくれる。それがわかったら、もう加速、減速、曲がってズリッと加速という一連の動きが楽しくなっちゃって、時間いっぱい延々と繰り返してしまった。
速さが売りのハイパフォーマンス4WDが総じてRWDベースのシステムを採用するのは、RWD車からの派生が多いということもあるが、それだけではなくRWDがもたらす挙動こそが多くの人にスポーツドライビングにおける理想的挙動とされているからだ。しかし後輪二輪で受け止めるには現代のハイパフォーマンスカーのパワーは大きすぎるので、前輪にもトルクを配分して速さにつなげるということだろう。
4WDは日本でますます重要になるだろう
日本は冬季に豪雪地帯が多いだけでなく摂氏ゼロ度近辺の気温となる地域が多く、もっとずっと気温が低い北欧やロシアなどよりも路面が滑りやすい状態になりやすい。冷凍庫から取り出したばかりの氷は指にむしろ張り付くような感じで滑らないが、しばらくすると表面が溶けて滑りやすくなるが、あれと同じだ。だからこそ日本車は昔から4WDが充実している。
加えて、全体的にパワーが上がった現代では、4WDの目的は悪路や雪上での走破性の向上というだけにとどまらず、車がもてるパワーを効率よく路面に伝えるためにも重要視される。弱点だった曲がりにくさも電子制御によって克服した。コストと重量、それに燃費の面でのネガはまだ完全に克服したとはいえないが、かつてに比べれば改善されつつある。4WDはこの先ますます重要な駆動方式になっていくはずだ。
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