アウディ TT|伊達セレクション
デザイン的なインパクトは初代TTのほうが上だったかもしれないが、走ってみての安定感と躍動感は、やはり2代目の現行モデル(写真上)が数段上と言わざるを得ない。写真下は高性能バージョンであるTT-RSの内装だが、ベースグレードの内装もこれと似たようなもの。センスも質感も最上級のまさに「出木杉くん」な内装だ。
アウディ TT-RS内装|伊達セレクション
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現行アウディTTは輸入車界の「出木杉くん」である

「愛されるキャラクター」というのは、必ずどこかに欠点のようなものを備えている。マンガ「ドラえもん」でいうならば、主要キャラはドジでグズなのび太や乱暴者のジャイアンでなければならず、愛すべき欠点のない「出木杉くん」は、どうしたって端役にしかなれないのだ。

輸入車においても「本当のスター」は結構な欠点を備えていて、しかしだからこそ、長く深く愛される。重量バランス的には最善とは言い難いポルシェ 911のリアエンジンというレイアウト然り、ちょっとコンビニに乗って行くのは憚られるフェラーリの神経質さ然り。アルファロメオの「故障伝説」もこの部類に入るだろうか。実際に故障しまくるかどうかは別問題として。

では逆に「輸入車界の出木杉くん」はどれかといえば、筆者が考えるにそれは現行アウディTTクーペである。

端正という言葉では足りないほどに端正なスタイルと、それがもたらすアタマ良さそうなムード。実際、直噴ターボにより良好な燃費を叩きだすスマートさがあり、しかし運動神経はバツグン。もちろんオリンピックに出るほどではないが、アマチュアアスリートとしては十分以上……と、それが現行アウディ TTという車だ。頭にくるほど完璧である。ついでに言えば現行TTは内装も上質かつオシャレ。出木杉くんの自宅に招待されたら、インテリアの素材とセンスもやっぱり完璧だった……みたいな話だ。

その中古車相場は今や新車のセレナと似たようなもの

しかしそんなアウディ TTを「アタマにくる」と評してしまうのは、筆者がある種のへそ曲がりだからにすぎず、フツーに考えれば、自分のお金を出して車を買うならばより「完璧」に近いに越したことはない。リアシートが狭いというのが現行TTで考えられうる唯一の欠点だが、そこが気にならない人、もしくは問題ないライフスタイルを送っている人は、今すぐにでもショップに駆け込んで契約を交わしていただきたい逸材だ。

「そんなことは言われなくてもわかってるよ。でも現行TTって高いじゃん」

そうおっしゃる若手~中堅会社員の方もおられよう。確かに現行アウディTTは決して安い車ではない。新車時価格は08年時点の最廉価グレード「2.0TFSI」であっても439万円で、そのSラインパッケージは515万円であった。その後の中古車も、比較的高めの相場水準を長らくキープしていた。

しかし今、現行TTの中古車相場とは日産セレナやトヨタヴォクシーの新車価格と似たようなものである。すなわち250万円前後。それも「くたびれまくった過走行車がその値段」というわけではなく、走行2万~3万km台あたりの好条件物件がそのプライスなのだ。日頃、のび太のような車にばかり乗っている筆者が言うのもアレだが、現行アウディ TTクーペの中古車とは今、本当にバリューで素晴らしい「出木杉カー」である。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
何もかもが「出木杉くん」的に完璧な現行アウディ TTはいかが?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE