▲S660の大試乗会に参加。当日は天気が心配されていましたが、見事な快晴でした。皆さんオープンにして試乗を楽しまれていました ▲S660の大試乗会に参加。当日は天気が心配されていましたが、見事な快晴でした。皆さんオープンにして試乗を楽しまれていました

人気車ゆえのジレンマ「試乗車が足りない!」

今年の春、ある注目の車がデビューしました。ホンダが生み出したその1台は、一世を風靡した名車ビート以来の軽ミッドシップカーであると同時に、S2000以来途絶えていたホンダのスポーツカー「Sシリーズ」の復活でもありました。そう、その車とはホンダ S660。20代半ばという新しい世代が指揮を執った開発体制なども話題性となり、瞬く間に人気を集めました。

しかし、人気となりすぎた故に困ったことが起こります。それは「試乗がままならない」ということ。大量生産に向く車種ではないのに受注が殺到し、ディーラーが十分な試乗車を用意できないという事態に。試乗を希望する人も販売する側もジレンマを抱えています。

そんな状況を打破すべく企画されたのが、今年5月末に行われた大試乗会です。S660を販売するHonda Cars 埼玉が県内にあるS660の試乗車を狭山市に集め、多くの人に予約不要で実車に触れてもらおうというものでした。通常であれば試乗車は各店舗に分散してありますが、あえて1ヵ所に集めることで希望する方に確実に乗ってもらおうというわけです。

Honda Cars 埼玉の水口部長にお話を伺うと「発表以来、大変多くのお客様から試乗のご希望をいただいております。我々としても、お客様にはぜひ実際に触ってみてS660の価値を納得していただきたいという思いがありました」とのこと。

いずれにせよ「実車に触れたい」「乗ってみたい」というユーザーにとって、ようやく訪れた機会なのです。

S660大試乗会に潜入!

というわけで、私も大試乗会に参加。ユーザーのナマの声を聞きに行ってきました!

イベント当日、開始時間の午前10時に狭山市内の会場に着くと、すでに試乗が始まっていました。 後で聞いたところでは、受付開始の2時間前にいらっしゃった方もいたとか。今回は予約不要だったとはいえ、参加された方の熱の入りようが伝わってきます。

用意された試乗用の車両はMT仕様が3台、CVT仕様が6台。最近ではスポーツカーといえどATが人気の車種もありますが、今回はMT仕様が人気でした。シビックTYPE R EUROにお乗りの方は「発表前から興味があってMT車に乗ってみたかったけど、機会がなかったんです。ようやく念願が叶いました」と目を輝かせていました。

MT車はクラッチやシフトノブの感触を確かめてから購入したいという方も多いでしょうから、試乗したかったのでしょう。さらに「今の車も十分楽しいけど、単純に運転する楽しさで比べたらS660は別格ですね」とも話されていました。

S660がもつ魅力は「車に乗る、運転する楽しさ」

そう、取材の中で見えてきたS660の姿というのはさきほどのユーザーの方がおっしゃっていた「楽しい車」。運転が楽しい、乗って楽しい車なのです。

日産のSUV、デュアリスのオーナーは「友人が試乗したときの話を聞いて自分も乗ってみたくなりました。彼の話は嘘じゃなかった。運転が楽しいってことを体感できました」。普段スポーツカー以外に乗っている方にも共感できる乗り味ということなのでしょう。

50年以上ホンダ車を乗り継いでいる男性は「これからは本当に好きな車に乗ろうと思っていた。S660の乗り味は衝撃。スピードを出さなくても楽しいですから。もう70歳になるんだけど、今でも運転で気持ちがこんなに昂ぶるとは思わなかった」と熱弁。現在はオデッセイにお乗りだそうですが、S660の楽しさに驚いていました。

クラスを大きく超えたボディ剛性やオープンカーならではの爽快感、利便性をいい意味で割り切ったからこその運動性能。それが皆さんがおっしゃる楽しさに寄与しているのは間違いないでしょう。もちろん荷物がほとんど積めない点に言及される方もいましたが、それを踏まえても皆さん楽しんでいる様子でした。それだけ魅力的だということなのでしょう。

Honda Cars 埼玉では今月28日(日)に3回目となる試乗会を予定しているそう。こちらに参加するためには事前予約が必要で、前日の27日18時まで申し込みできます。楽しい車に飢えている方はHPなどをチェックしてみてはいかがでしょうか。

▲試乗は高速道路の走行を含め約30分間。皆さんハンドリングやエンジンの吹け上がりをじっくりと確かめていました ▲試乗は高速道路の走行を含め約30分間。皆さんハンドリングやエンジンの吹け上がりをじっくりと確かめていました
▲CVTとMTどちらも試乗車が用意されましたが、人気だったのはMT車。「車はやっぱり自分で操りたい!」という方が多かったのでしょう ▲CVTとMTどちらも試乗車が用意されましたが、人気だったのはMT車。「車はやっぱり自分で操りたい!」という方が多かったのでしょう
▲会場にはご先祖様というべきビートも登場。同じくミドシップレイアウトの軽オープンという点では今なお貴重な存在です ▲会場にはご先祖様というべきビートも登場。同じくミドシップレイアウトの軽オープンという点では今なお貴重な存在です
text/田端邦彦 photo/若菜乱太郎