スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

品川ヒロシの自伝的小説&コミックを、品川自身の脚本&メガホンで映画化!

ドロップ|映画の名車
(C) 2009「ドロップ」製作委員会
劇場公開情報
『ドロップ』2009年・日 原作・脚本・監督:品川ヒロシ 出演:成宮寛貴/水嶋ヒロ/本仮屋ユイカ/上地雄輔/中越典子/波岡一喜/若月徹(若月)/綾部祐二(ピース)/増田修一郎/住谷正樹(レイザーラモン)/宮川大輔/坂井真紀/哀川翔/遠藤憲一ほか 配給:角川映画 3月20日(金)より、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
マジメ学生ばかりの私立中学に退屈した少年が、わざわざ公立中学に転校してケンカ三昧の日々を送る!! コミックス版も含めて250万部オーバーのスマッシュヒットを飛ばした品川ヒロシ(品川庄司)の自伝的小説「ドロップ」が映画化。品川自身が脚本とメガホンを担当し、唯一無二の世界観を映像化してみせた。主人公の信濃川ヒロシに扮するのは髪を短く刈り込み赤く染めた成宮寛貴。ヒロシの憧れである不良のカリスマ・井口達也に水嶋ヒロ。さらには品川の芸人仲間たちも不良役で脇を固めている。

時は1980年代後半。狛江北中学に転校してきたヒロシは、赤く染めた髪が目立ちすぎて、さっそく不良たちに呼び出しをくらう。きれいな顔のくせに腕っ節がやたら強い達也とタイマンを張ったヒロシは、何もできないままボロ雑巾にされるが、最後まで立ち上がろうとする粘りと根性を買われて北中不良グループの仲間入りを果たした。北中不良グループは、冷静沈着なメガネの森本(波岡一喜)、いちど噛みついたら放さない狂犬ワン公(若月徹)、天才的な小泥棒ルパン(綾部祐二)、そして、リーダー的存在である達也の4人。ここにムードメーカーのヒロシが加入して5人になったことで北中不良グループはがぜん活気づき、ケンカに明け暮れながらも笑いの絶えない愉快な日々がスタートする―。

不良に憧れて私立から公立に転校というのは、品川自身が歩んだ本当の話。品川が中学時代を過ごした1980年代後半は『ビーバップハイスクール』と『湘南爆走族』という2大不良マンガが圧倒的な人気を誇り、それぞれ映画化して大ヒット。ヤンキー=カッコイイと中坊が思い込むのも無理はない。なにせ『ビーバップ』からは仲村トオル、『湘爆』からは江口洋介、織田裕二と、現在でも第一線で活躍するビッグスターを輩出したのである。だからといって本気で不良に憧れて、わざわざ私立から公立に入り直すような輩が品川以外にいたのかは定かではないが…。

とにもかくにも主人公のヒロシは憧れの不良ライフをおおいに満喫する。敵対する学校の猛者とも昨日の敵は今日の友になってバカ騒ぎを繰り返していくのがヤンキー映画の王道なら、多勢に無勢の無謀な戦いがクライマックスに待ち受けるのも王道だ。それでもどこか新しく感じるのは、BGMを流すかのように全編を覆う笑いの要素が大きい。口が達者なヒロシ=成宮寛貴がヤンキーの会話に突っ込みまくり、ラブラブな展開でもボケまくり、スパイス的に登場する人気芸人たちとわたりあう。テンポもバランスもばっちりで、これが非常に心地いいのだ。

一方、アクションは徹底的に“生”にこだわっていて、ケンカのシーンはド迫力。特にコミック版「ドロップ」から抜け出てきたかのような水嶋ヒロのキレキレの動きは死ぬほどかっこよく、男惚れさせられるだけの説得力にあふれている。また、ハードゲイの仮面を脱ぎ捨て、素顔で勝負しているレイザーラモンの住谷正樹にも注目。何度も何度も達也たちの前に立ちはだかる調布南中の加藤を、貫禄たっぷりに演じている。

舞台設定が1980年代後半であるにもかかわらず、登場するヤンキーたちの髪形やファッションが現代的で洗練されたものになっているのも大きなポイント。時代考証的にはおかしくとも「古臭く、ダサい映画にしたくない!! 」という品川のこだわりだ。毎日のようにテレビを彩る人気者たちが次々に出てくるので、たとえマジメな演技をしていてもコントに見えてしまい、少々シラけてしまうシーンがあるのがたまに傷だが、総体的にはテンポのいい笑いの要素と生身のアクションがミックスされた、新しいタイプのヤンキー映画に仕上がっている。「どうせ芸人のお遊びでしょ!? 」などとスルーしてしまうのはもったいない。品川の多才さに唸らされる一本だ。

映画に登場する車たち

トヨタ クラウン S110(後期型)

トヨタ クラウン S110(後期型)|映画の名車
ファミレスでの食事中に調布南中の赤城(増田修一郎)と加藤(住谷正樹)に不意打ちをくらい、ズタボロにされてしまった狛江北中不良グループの5人。同じく赤城と加藤に酷い目にあった狛江西中のテル(坂本雅仁)を加えた6人は、達也のオヤジ(遠藤憲一)からクラウンを借りて、溜まり場に乗り込んだ―。ハッキリとは明示されないが、舞台はおそらくは1980年代後半。中学生軍団が6人乗りした車は1979年から1983年まで販売された6代目クラウンの後期型だと思われる。クラウンはいわずと知れたトヨタの高級車。中学生の分際で堂々と車を運転し、敵陣に突入した6人は、借り物のクラウンをぶんぶん振り回して大暴れ。鬼の形相で迫ってくる加藤たちにキモを冷やしながらも見事に振り切り、勝ち逃げに成功するのである。

Text/伊熊恒介