ヴェゼル▲自動車・中古車に関する調査・研究を通じ業界の発展を目指すリクルート自動車総研が、調査データと独自の考察をお届け。今回のテーマは「若者の車離れ」。写真は若者世代が車を買い始めた2010年代にヒットしたホンダ ヴェゼル(初代)

購入単価が高い若者たち。彼らがマーケットインしている年代に注目

「免許取りたては、擦ったりぶつけたりするから安い車を買って練習した方が良い」。そもそも、「若者はまだあまりお金がないから安い車しか買えないだろう……」。そんなイメージをステレオタイプ的にお持ちの方も少なくないはず。

ましてや、「若者の車離れ」なんて言葉が世の中に定着してしまっているのですから。ですが、リクルート自動車総研が毎年実施している中古車購入実態調査では、そのイメージとは真逆の結果が出ています。

そもそも平均購入単価は年々増加傾向にあるのですが、なんとその上昇要因は若者なんです。
 

リクルート自動車総研グラフ

平均の156.6万円に比べて、30代でおよそ20万円、20代で10万円程度支払う総額が多いのです。背景として考えられるのはズバリ「車のトレンド」。

30代、20代ということは免許を取得し実際に車を購入し始めたのは早くても2000年代半ば以降、主に2010年代がメインでしょうか。その頃、新型車ではハイブリッドなどの電動化したモデルが主流となっていきましたし、安全装備に対する意識や、SUV人気なども高まりました。
 

プリウス ▲2010年代、ハイブリッド人気のけん引役となったトヨタ プリウス(3代目)

燃費が重視されてコンパクトカーや軽自動車が注目を集めた2010年代と少し流行が変わったのです。

結果として、ハイブリッドのグレードを購入すれば中古車でもガソリンエンジン車に比べて少し価格は高くなりますし、SUVを選べばコンパクトカーよりも高額になります。
 

プリウス ▲こちらは2012年に発売されたスバル インプレッサXV(2代目)。上級グレードには先進運転支援システム「アイサイト(Ver2)」を採用

買いたい車が高いだけ? 高くても買っちゃうほど欲しい?

つまり若者たちはいたずらに高いお金を払っているわけではなく、純粋に自分たちが欲しい形や装備をもつ車を選んでいるだけ。その結果として、平均よりも多く払っているのだと思います。

さて、欲しいものがあり、それにお金を払うことができる、これって「離れ」でしょうか?

離れているかどうかの論争をするつもりはありませんが、能動的な消費を楽しむことに対してカーセンサーは全力で応援いたします。私含めましてオトナな皆さま、平均価格を押し下げて「離れ」レッテルを貼られぬよう、一緒に欲しい車を手に入れて思う存分楽しみましょう(笑)!
 

文/西村泰宏、写真/篠原晃一
西村泰宏(にしむらやすひろ)

リクルート自動車総研所長

西村泰宏

カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長。自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入するすべての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事している。