新聞などでも大きく報道された日産自動車の車の自動運転技術。日本の自動車メーカーでは初めて、「2020年までに複数車種に搭載する」と時期を明確にしての発表となった。

日産の自動運転技術の特徴は、外部からの情報だけに依存しない自律型であること。レーザースキャナーやアラウンド・ビュー・モニターカメラで車線や標識、他の車や障害物を認識して走行する。

この自動運転技術に大きく関わっているのが蜂や魚の行動形態だ。その行動パターンを研究することが、次世代自動車の衝突防止システムの開発に生かされているのだ。

実は蜂は非常に優れた衝突回避能力を持っている。その秘密は、300度以上の視界を持つ複眼。この複眼にヒントを得て、前方180度、2メートル以内の視界の中にある障害物を検知して距離を計算、衝突を防ぐために車両を動かしたり、位置を変えたりするシステムが開発された。

では、魚はどうだろうか。魚は、主に「側線感覚」と「視覚」をセンサーとして、周囲の状態を認識し、最寄りの仲間の位置に応じて、「遠くに行き過ぎない」、「近づき過ぎない」、「ぶつからない」という3つのルールで動きを変化させている。自動運転技術では、「側線感覚」と「視覚」の役割を、レーザーやパルス信号を利用して再現し、他車との位置関係において「遠くに行き過ぎない」、「近づき過ぎない」、「ぶつからない」というルールを応用しているのだ。

これらの技術を用いて開発されたのが2009年の東京モーターショーでお披露目された「エポロ(EPORO)」というロボットカー。車同士が互いにコミュニケーションを取りながら、衝突を回避したり、並走したり、1列になって移動したり、お互いの位置を調整する。

日産の先進技術開発のエキスパートリーダーである二見徹氏は、「もし車が集団で同じことを行い、同じように走ることができれば、道幅は変わらずに、より多くの車を走らせることが可能なはずです。これにより、車の数が増えますが、渋滞は少なくなるでしょう」と予測する。

エポロは、交差点に差し掛かるとお互いにコミュニケーションを取り、どちらが先に進み、どちらが止まるかを決めることができる。車同士がコミュニケーションを取り、動きをコントロースする未来が来れば、信号は必要なくなるということだ。

自動運転技術を搭載した車が普及すれば、渋滞も信号もなくなり、まるで電車で移動するような感覚で車に乗る未来が来るのかもしれない。

「リーフ」がベースの自動運転試作車。「現実的な価格」を想定しているという。自動運転車開発専用のテストコースも建設中だ

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ロボットカー「エポロ」。日産の技術開発の目標のひとつは、日産車が関わる事故について死亡・重傷者数を実質的にゼロにすること

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