車は単なる移動の道具ではなく、大切な人たちとの時間や自分の可能性を広げ、人生をより豊かにしてくれるもの。車の数だけ、車を囲むオーナーのドラマも存在する。この連載では、そんなオーナーたちが過ごす愛車との時間をご紹介。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

▲カーシェアリングを利用するうちに、自分の理想の生き方が見えてきたという水谷さん。便利な環境でも、あえてマイカーが欲しくなる気持ち……分かります▲カーシェアリングを利用するうちに、自分の理想の生き方が見えてきたという水谷さん。便利な環境でも、あえてマイカーが欲しくなる気持ち……分かります

最初はカーシェアリングを活用。だが次第に「心理的限界」が

取材日の午前中も「ふと思いたって」、都内の自宅から埼玉県川越市までBMW X1 18d Mスポーツを飛ばし、市の中心部からちょっと離れた場所にある「知る人ぞ知るラーメン屋さん」まで行ってきたという。

東京都在住の会社員、水谷拓樹さん。彼がBMW X1を購入した理由はそれだった。

いや「ラーメン屋さんに行くためにビーエムを買いました」という話ではなく、「ふと思いたったときに、それができる環境」を重視したということだ。

▲青が好き、という水谷さん。お気に入りの青いスニーカーが青いマイカーに映える ▲青が好き、という水谷さん。お気に入りの青いスニーカーが青いマイカーに映える

車好きだった父と兄の影響で、自身もなかなか車好きだった水谷さん。

だが地元から東京へ出てきてみるとすぐ、2つの事実に気がついた。

1つは駐車場代が猛烈に高いということ。そしてもう1つが「東京では自分の車がなくてもぜんぜん普通に生活できる」ということだった。

ということで電車やバスなどを利用するかたわら、必要なときにはいわゆる「カーシェアリング」を積極的に活用するようになった。しかしすぐに心理的な限界を迎えた。

予算内で借りられる車は、どうしたって凡庸な国産実用小型車。それだと、乗ってて正直つまらないのだ。

そのため次第に「個人間カーシェアリング」を活用するようになった。このサービスであれば、例えばミニ クロスオーバーなどの洒落た輸入SUVであっても、比較的安価に借りることができた。

「これは素晴らしい!」ということで都合10回は利用し、ちょっとした旅行や趣味のスノーボードなどへガンガン出かけたそうだ。

が、それにもあるとき「限界」を感じてしまったという。

「1週間後の行動」を固定したくない

「人様の車を借りるわけだから、やっぱりいろいろ気兼ねしてしまう」

そのある種のストレスが次なる「限界」だった。

加えて、水谷さんが「コレ、自分には合わないかもしれないな」と感じた最大のポイントは、「車を使って何かをしたいと思ったとき、その1週間前には、自分の1週間後の行動を確定させなければならない」ということ。

水谷さんの理想は、朝起きてふと思ったことをそのまま実行する……みたいな生き方なのだ。しかし、それを人様の車を借りながらやるのはさすがに無理である。

さらに言えば、1週間後には自分の気分や体調が変わってる可能性だってある。

これらの経験から、結局、「自分の車」を持つしかないと考えた水谷さんは、コツコツ貯めていた貯金を頭金にして今年3月、エストリルブルーのBMW X1を購入したのだった。

購入時の走行距離は約0.3万km。その後は月に1000km以上のペースで(思いたったそのときに)各地へガンガン出かけ、7月末現在の走行距離は約0.9万kmに達したそうだ。

で、念願の「自分の車」がある暮らしはというと……「最高!」 の一言だという。

▲「最高!」と言っているわけではないが、最高! と書いてありそうな素敵な笑顔 ▲「最高!」と言っているわけではないが、最高! と書いてありそうな素敵な笑顔

主な使い道は、冒頭に書いたように「ふと思いたったことをそのまま実行するための手段として」だ。

あとは深夜の瞑想(?)。日中や夕方、あるいは週末などはかなり混雑している東京・代官山の蔦屋書店(大型駐車場を備える有名商業施設)なのだが、水谷さんいわく「平日の深夜はけっこう空いている」とのこと。で、深夜、ちょっと考えごとをしたくなったときなどにX1のエンジンに火を入れ、それこそフラッと代官山まで行き、駐車場で物思いに耽る。あるいは店内で、気になる書籍や雑誌などを心ゆくまで吟味するのだという。

もちろん、東京であれば公共交通機関でどこへだって行けるので、代官山にだって電車で行ける。

しかし、自分の車があれば電車の時間なんてものに縛られず、“自分のタイミング”で生きることができるのだ。そこが、車を所有することのいちばん素晴らしい点だと水谷さんは言う。

もちろん駐車場代などのいわゆる維持費は、若手会社員の彼にとって決して小さな額ではない。だがそこは昔取った杵柄で(?)個人間カーシェアリングに登録し、今度は「シェアに出すオーナー」としてそれを活用することで、上手くやりくりできている。

「東京でも“自分の車”は絶対にあった方がいい!」というある種シンプルなメッセージも、水谷さんから発せられると、より説得力が増すように思えた。

▲個人間カーシェアリングサービス「Anyca (エニカ)」を利用している水谷さん。今までは予約をする側だったが、今は予約を受け付ける側に ▲個人間カーシェアリングサービス「Anyca (エニカ)」を利用している水谷さん。今までは予約をする側だったが、今は予約を受け付ける側に

どんなクルマと、どんな時間を?

BMW X1(現行型)と、ふらっと気ままに出かけたくなる時間を。

FFベースに生まれ変わったBMWのコンパクトSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)。先代モデルから全長が30mm短くなり、全高が35mm高められたことで、取り回しの良いコンパクトなボディサイズながら、たくましいスタイリングに。後席スペースも先代モデル比で最大66mm拡大され、1クラス上のモデルに匹敵する室内空間となっている。

▲水谷さんのモデルは、ダイナミックなスタイリングと走りを強調した「Mスポーツ」仕様 ▲水谷さんのモデルは、ダイナミックなスタイリングと走りを強調した「Mスポーツ」仕様
▲愛車との時間は…… ▲愛車との時間は……
text/伊達軍曹
photo/早川佳郎