TN HOUSE+植本俊介

内にも外にも思えるガレージ

施主の希望は愛車と同じ空間で過ごせる家作り、そこに生活の場としての快適性を融合させたのが TN HOUSE。ガラスと木を使った大胆な間仕切りによる空間演出が特徴だ

施主の要望を取り入れつつ快適性も付け加える

乗り物好きなら誰しも、愛車に囲まれて生活したいと思うもの。しかし、それを現実のものとするには、数々の制約が発生する。それをクリアし施主の夢を叶えるのが、建築家の仕事であるといってもいいだろう。

今回の住宅は敷地が変形していること、ガレージに入れる車やオートバイが趣味性の高いモデルであるということ、施主の希望である“ウッディな居住空間”と車のイメージが合致しないことなどが、制約となって表れた。設計担当は、建築家の植本俊介さん。

「当初はガレージが中心で人が暮らすスペースは最小限でいい。ショールームのような空間を…というオーダーでした。しかし、家というものはこれから先、何十年も生活をする場所なので不便のないプランを提案したい。さらに排気ガスやガソリン、オイルの匂いなどを考慮して、ガレージとリビングルームを一つの空間にするのは避けたいと説明しました」

その結果、具現化された住宅は、蝶ネクタイのような形をした敷地を巧みに利用することで、各部屋をセパレートしキャラクターを明確化することに成功している。建物の外観は一見するとクールに見えるが、一歩邸内に足を踏み入れると木の温かみと自然光の明るさにより居心地のよい空間が広がっている。施主のTさんは、

「住めば住むほどよく考えて作られていることがわかります。どんなに車が大切でも、実際にインナーガレージの家に住んでみると、いつも車を見ながら生活をするわけではないことがわかりました。植本さんのプランは、普段は車が主張しすぎることはなく、ふと振り返ると車が見えるという絶妙の距離感です」

と植本さんのプランニングを絶賛する。

「TN HOUSE」
建築家:植本計画デザイン一級建築士事務所

tel.03-3355-5075 http://www.uemot.com
所在地:東京都町田市 主要用途:専用住宅
構造:木造 規模:2階建 敷地面積:180㎡ 延床面積:106㎡
設計・監理::植本計画デザイン一級建築士事務所/植本俊介

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村博道 photos / KIMURA Hiromichi

TN HOUSE+植本俊介

植本さんからの提案で、ガレージの真横に階段を設け、普段では目にしない角度から愛車が眺められるようにしている。階段の踏み板は薄く、リビングからの眺めを邪魔しない

TN HOUSE+植本俊介

玄関は奥にある中庭への通路も兼ねて4畳の広さをもっている。竣工から7年が経過し、木材の玄関扉は落ち着いた風合が漂う 

TN HOUSE+植本俊介

リビングの天井高は、もっとも高い部分は5.7mもある。木造で広い空間を確保するため、リビング部分には強度の高い門型フレーム構造を採用

TN HOUSE+植本俊介

ガレージの壁に外壁と同じガルバリウム鋼板とする。自然光が注ぎ込むガラス張りの天井と合わせて、内と外の中間のような場所としている