スバル クロストレック▲2022年月9月にフルモデルチェンジが発表されたスバル クロストレック。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏による、AWDモデル、FWDモデル 2台のインプレッションをお届けする

先代はインプレッサをリフトアップして作られたXV

スバルが提供するコンパクトクロスオーバーSUV「XV」は2018年より国内のみの名称で発売されていたが、今回のフルモデルチェンジから全世界共通の「クロストレック(CROSSTREK)」に一本化され登場した。

 

スバル クロストレック

クロストレックの先代となるXVは、ハッチバックモデルのインプレッサをスバルが得意とするリフトアップを行い誕生した車だ。それによるギア感が増したデザインが支持されたモデルである。

旧型を見てから、あらためて新型に目を向けるとキープコンセプトであることは一目瞭然だ。これによりモデルのイメージを植え付けさせ、デザインを生モノ化させない効能がある。

スバルの哲学あってのディメンションであるから、「そう簡単に軸を変えない」というのはメーカーとしてはとてもいいと私は思う。
 

スバル クロストレック

さて試乗に移ろう。今回はAWDとFWDの2モデルを試乗した。

タイトな低速から高速コーナーまで体験できるコースのため、様々なフィールを感じ取れそうだ。

また、試乗当日の雨によるウエットなコンディションは、駆動による走りの違いを見るには最良のシチュエーションといえるだろう。
 

スバルが誇るAWDが大幅進化

まず初めにAWDから試乗だ。パワーユニットは2Lーエンジンにe-BOXERと呼ばれる10kWのモーターがジョイントされている。

 

スバル クロストレック

走り出してみると、振動はとても抑えられてシャシーを大幅に改良されている様子が期待できる。

続いてステアリングを左右に切ってボディを揺すったり、一定の舵角で荷重が大きなカーブを曲がって剛性を確認してみた。すると、ボディがねじれるような印象はなく、正確無比に路面とのコンタクトができている。

これは、ハンドリング剛性が高いことを意味している。成熟したリニアトロニックによるCVTの制御はスムーズでいて、今までのスバル車よりもさらに滑らかになっている印象だ。

先代では、走り出しのときと加速中に必要以上のトルクをギア比で大きくする傾向にあったが、このコースを走る限りではスムーズで走りやすい。ちょっとしたモーターによる後押しのトルクとCVTの制御が良好だ。

滑りやすい路面でも従来のモデルに比べて、しなやかで踏ん張りが利いて安心感がある。

さらに、速度を上げてタイトなコーナーを走らせてもトレースが非常にしやすい。

路面の起伏に対しても追従がソフトで、雪の路面ではさらに本領発揮することが期待できる走りだ。
ツイスティーなコーナーをさばいていくと感じるのは、従来よりも目線が安定していることである。これは先代XVとは非常に大きな違いといえよう。
 

本物感漂う新設定のFWDモデル

スバル クロストレック

そして、もう1台試乗したのが従来にはなかったFWDモデルである。

スバルのボディレイアウトは本来FWDを基準としているので、間違いなく良いと感じていた。

走り出すと、エンジン搭載位置が車軸より前方にあることで加速時のトラクションは万全。また、AWDと同一のユニットなので、軽快な動きに拍車がかかる。

さすがに濡れた路面でのコーナリングのスタビリティは、AWDにはかなわないが想像以上に良質なFWDである。

ハンドリングが中心なコースだけの試乗ではあったが、FWDでも手を抜いていない印象が強い。明らかに、横置きFFとはスタビリティの違いがあり「本物感漂うFWD」である。

スバルは新型アウトバックからサスペンションの動きにしなやかさが増したが、クロストレックにもそれが継承されている印象を受けた。

これは今まで以上に目線の揺れも少なく個人的な好きなセッティングである。次は公道試乗で違う進化を感じたいと思わせる仕上がりだ。
 

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。