スバル ソルテラ▲自動車テクノロジーライター松本英雄氏がソルテラプロトタイプに試乗した際のレポートをお届けする

スバルらしい走りと高い質感のバランスに優れた電気自動車

トヨタと共同で開発を進めたスバル初の量産型BEV「SOLTERRA」。

今回、そのプロトタイプをスバルの本拠地の群馬にて、雪上の山中を試乗した。その様子をお伝えしたい。

まず思ったのは、スバルらしいとも言える、わかりやすいネーミングだ。SOLは太陽、TERRAは地球―と、非常にわかりやすく、直球だ。

その名前に、生命に最も必要なエレメントを使うというところが、大地と対話を心がけながら、真摯に車づくりをしている―という意思が伝わってくる。

事務局から簡単なレクチャーを受けた後、いよいよSOLTERRAの試乗だ。

現物を見て感じたことのひとつは、脈々と受け継がれてきた設計要件は守られているのか?という点である。
 

スバル ソルテラ
スバル ソルテラ

細かく比較することはできないが、これまでの経験から感じるのは、後方のクオーターパネルの部分は、スバルの要件では難しいのでは、と思うデザインだ。

スバルはこれまで、目視を重んじてボディのデザインを行なってきた。

だからこそ、他の自動車メーカーとスバルの違いが、デザインに反映されてきたのだ。しかし、目視の部分に電子的な目を増やすなどで、設計要件の変更も可能だと考えたのだろう。それは試乗する前に感じたことである。

スバル車の真骨頂は、4WDの制御によるスタビリティの良さだ。

今回の試乗では、それを確かめることにする。それでは、気持ちを切り替えてスタートしよう。

想像するに、プロペラシャフトがない4WDはスバルは初めてなので、どんな動きをするのか楽しみだ。
 

スバル ソルテラ

走り出しのゆっくりとした制御はまずまずである。コントロール性も高い。そこからグリップを最優先のスロットル操作で速度を上げていく。

これは、後軸にウエイトが大きいトルク配分のように感じられる。なぜならば、ゆっくり落とした加速中でもフロントのコンタクトが今までのスバルのモデルよりも薄い印象だからだ。
 

スバル ソルテラ

もっとも、トヨタ“bZ4X”とも共通の車両であるから難しいのだろうか。

ツイスティーなコースで加速させ、速度も上げて走らせてみると、先ほどよりもリアにトルクが大きくかかることが理解できる。

スポーツドライビングとしてはかなり楽しい。SOLTERRA独自のパドルシフトを併用すると、路面とのコンタクトを高くできるので安心感はある。

それと、ブレーキのコントロール性はまだこれからの印象を受けた。中間のコントロール性は難しい。

これは滑りやすい雪上というところもあるだろうが、それでも世界を股にかけ、4WDとラリーフィールドを席巻したスバルがまだ見えてこない。

ステアリングフィールは路面とのフリクションが少ない分希薄になりがちだが、もう少しアナログチックな、ねっとりした重さがあると正確性が増すのではないかと思った。

ただ驚いたのは、これだけ雪が積もった路でも、下をこすることなくグイグイと走り、ダイナミックな走りを見せたことだ。ロードクリアランスは思った以上にある。
 

スバル ソルテラ
スバル ソルテラ

これは、EV車両としては魅力の部分だと感じた。シャシーが強固なため、不愉快なバイブレーションもなく質の高さが想像つく。

アスファルトでの走りも楽しみである。

タイトなコーナが連続したときのコントロール性は、(BEVで見た目はそこまでスポーティとはうかがえないが)走ればスポーツ感満載の4WD電気自動車である。

また、極低速でのシーソー地形で、対角線上に車輪が浮いたときの制御時に前に進もうとする制御は、最もスバルらしさを感じられたシチュエーションであった。

現状のスバルのモデルの中では、質感が高く、バランスも取れたモデルであることは言うまでもない。

だからこそ、価格が気になるところである。
 

文/松本英雄、写真/スバル
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。