日産フェアレディZがフルモデルチェンジ 【試乗by西川淳】
2009/02/09
これほどコストパフォーマンスが高い車は少ない
今年で生誕40周年を迎える、フェアレディZ。日本が誇る唯一の歴史あるスポーツカーだと言っていい。最新モデルは「Z34」と呼ばれ、6世代目だ。先代モデルと同様に、スカイラインクーペのメカニズムを基本的には流用しているが、ホイールベースを短くしてスポーツ性を高め、シャーシセッティングも専用開発するなど、スカイライン系とはまったく違うキャラクターのスポーツモデルに仕立てられた。もちろん、前作と同じく、2ドア2シーターモデルのみの設定となる。
ホイールベースを100mm短くした結果、ボディサイズは見るからに小さくなり、実にスポーツカーらしい雰囲気。ロングノーズ&ショートデッキというスポーツカースタイルはフェアレディZの伝統で、全体の雰囲気は初代モデルの伝説を思い出させる。走りを予感させる力感たっぷりのリアセクションがたくましい。ブーメランモーションと呼ばれる前後ライトのデザインがかなり個性的。
エンジン仕様は3.7LのV6のみ。これにグレードによって6MTもしくは7ATを組み合わせる。ベースグレードと最上級のバージョンSTには両方のミッションが、バージョンSにはマニュアルのみが、そしてバージョンTにはオートマチックのみが、それぞれ用意された。注目は6MTだ。世界初のシンクロレブコントロール付きとした。これは、シフトダウン時にエンジン回転数を適正に制御するというもので、すでにオートマチックでは実用化されていたもの。マニュアルミッションにも導入することで、プロよりもうまくて素早いシフトダウンを可能とした。MT派が少なくなった今、もう一度注目されるきっかけになりそうな装備である。7ATももちろんシンクロレブ付きで、マニュアルモードでダイレクトな変速が可能だ。
旧型で不評だったインテリアにも、今回は相当力が入っている。ドライバーを鼓舞する凝ったデザインとしただけでなく、マテリアル選びも吟味されており、なかなか見映え質感もいい。やや凝りすぎてごちゃごちゃした印象もあるが、好みの問題だろう。サポートのいいシートや、よく考えられたペダル配置、ギアチェンジの邪魔にならないアームレストなど、すべては“走り”のためにデザインされている。
まずはMTのバージョンSTに試乗した。車体の横に立つと、サイズの小ささがはっきりとわかる。従来型よりもルーフからリアにかけての傾斜がきつい。サイドウインドウも薄く、その形は初代フェアレディZを彷彿とさせる。運転席に腰を下ろすと、まずは着座位置の低さに驚かれるだろう。シートが体をぴったりと柔らかく包み込む。適度な包まれ感がいかにもスポーツカーらしい。
トルクがあるので、MTだからといってスタートに面倒はない。ゆっくりクラッチペダルをリリースすれば、するすると車は動き出す。背中の後ろで砂利を跳ね上げる音がした。後輪がすぐ後ろにあるのだ。19インチタイヤを履くだけあって、乗り心地はもちろん硬め。とはいっても、内臓に直接響くような不快さはない。タンタンタンと小気味のいい、一体感を伴った硬さで、街中をすいすいと気持ちよく抜けていく。ボディサイズが小さくなったことのメリットを肌で感じる。峠道で、本領発揮だ。
意のままのハンドリングは、必要十二分なパワーと鍛えられたシャーシ、そして短くなったホイールベースによってもたらされたもの。手ごたえも良く、かなり安心してスポーツドライブが楽しめる。フェアレディZが、格好だけでなく本当のスポーツカーになったと思った。7速オートマチックのバージョンTにも乗った。こちらは一回り小さい18インチタイヤを履いている。それだけに、乗り味はややマイルド。それでいてスポーツ性はほとんどスポイルされていないから、一般的にはこちらで十分。オートマチックの変速も、マニュアルモードを選べば相当にダイレクトで楽しめる。