期待を裏切らない、サイズ以上の個性&動力性能

↑リアのLEDキセノンランプやシルバーのアーチ形ルーフラインはオプションで選択できる(左)航空機をモチーフにしたという上級感あふれるインパネ回り。標準装備の最新HDDナビはポップアップ式(右)
アウディが新たなエントリーモデルとして投入したA1は、単なる「A3より一回り小さなアウディ」ではない。

それが端的に表れているのがエクステリア。立体的なグリルに吊り上がったヘッドランプを組み合わせたフロントマスクはいかにも快活な印象だし、色違いのルーフアーチやテールランプ一体型のサイドまで回り込んだリアゲートなど、そこかしこに特徴的なディテールがちりばめられて、全長4m未満のコンパクトサイズながら強烈な個性を発揮している。より大きなサイズのプレミアムカーの中でも、あるいは並み居るコンパクトの中でも埋没することのない存在感があふれているのだ。

室内に乗り込んでも好印象が覆くつがえることはない。ソフトパッドで覆われたダッシュボードの成形は美しく、手に触れる部分すべてのタッチが上質。A6やA8との違いは大きさだけと言っても過言ではない。

期待を裏切らないのは走りっぷりも同様だ。何よりボディのしっかり感が凄い。ドアを閉めた途端の密閉感、走り出した後の包み込まれるような安心感は、まずこの強靭な骨格によるところが大きい。サスペンションは引き締められ、しかも試乗車にはオプション設定となる16または17インチのタイヤが装着されていたため乗り心地は硬めだったが、ショックは一発で減衰されビビリなども皆無。乗り味は上質感が保たれるのだ。
  • アウディ A1 フロントシート|ニューモデル試乗
  • アウディ A1 ホイール|ニューモデル試乗
↑スポーツ仕様のシート&サスペンション(左)16インチタイヤ(右)

爽快なハンドリングと安定感のある走りはさすが

おかげでハンドリングは爽快そのもの。ステアリングの反応は小気味よく、混んだ街中でもスイスイ泳ぐように進路を変えて行けるし、速度を上げればどっしりとした安定感が、コンパクトカーとは思えないリラックスした走りを可能にしてくれる。

動力性能も十分以上。発進時などごく低回転域のトルクにもう一段の厚みがあればなおいいが、速度が乗ってくれば軽快な加速を披露してくれる。注目のスタートストップシステムは、エンジン再始動時の若干のタイムラグが気にならないではないが、その燃費への貢献度は大きい。周囲の状況を読んだ走りを心がけたいところだ。

価格は289万円。MMIと呼ばれるフルスペックのナビゲーションシステムまで標準装備と考えれば、たとえばポロTSIハイライン、ミニクーパーなどと比べても競争力はありそう。その出来映えを見ても、このクラスの勢力図を大きく塗り替えそうな予感十分の一台の登場である。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード ベースグレード
全長×全幅×全高(mm) 3970×1740×1440
車両重量(kg) 1190
エンジン種類 直列4気筒DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1390
最高出力[ps/rpm] 122ps/5000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 20.4kg-m/1500~4000rpm
車両本体価格 289万円
Tester/島下泰久 Photo/向後一宏