(Tester/谷津正行(インポートカーセンサーデスク) Photo/尾形和美)

死角なき、輸入車界の「出来杉くん」。背徳も欲しいというのは贅沢か

  • フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン 走り|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン エンジン|ニューモデル試乗
↑15.4km/Lという超絶低燃費をマークしながら、4人の男が乗っていることを忘れさせる疾走力を見せる(左)アイドリング直後の1250rpmですでに最大トルクの80%を発生。だから、ほとんどアクセルを踏まないでも速いこと速いこと!(右)
いささか旧聞に属するが、7月上旬、洞爺湖サミットが開催された。二酸化炭素ダダ漏れ状態の中国やインドなど、新興8カ国が新たに参加したことでこのサミットをご記憶の方も多いだろうし、都内在住の小生としては、警備当局の気合を久々に感じた超絶警戒態勢の光景とともに、このサミットのことを思い出す。 「2050年までに温室効果ガス排出量を半減」という数値目標は玉虫色になったが、ともあれ今日も暑い。温暖化防止は、G8首脳にいわれるまでもない我々の急務だ。

で、新登場のVWゴルフTSIトレンドライン。これまでのボトムレンジだった「ゴルフE」に代わるモデルである。国内初登場となる1.4L TSI“シングルチャージャー”エンジン(これまでのTSIはターボとスーパーチャージャーのツイン式)と、世界初の7速DSGを採用することなどで、「フォルクスワーゲンの販売モデルとして過去最高の10・15モード燃費と、2Lエンジンに匹敵するトルク特性を実現した」とVWジャパンが胸を張る、この夏の新作である。

過去最高の10・15モード燃費と十分な疾走力を見せる死角のないモデル

  • フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン インパネ|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン 後席|ニューモデル試乗
↑ステアリング部分で操作できるパドルシフトは、このグレードには付かない。ちなみに7速DSGは、VWの6速MT以上に燃費がいいシステムだ(左)180cm級の人間が座っても、後席は頭上方向・前後方向ともかなり余裕がある(右)
こいつはどエラいクルマだ。 何がどエラいって、まず第一に、1.6L FSIのそれを20%上回る15.4km/Lという超絶低燃費をマークするくせに、取材時、ボクシングでいうミドル級(70kg前後)3名+ヘビー級(86kg以上)1名という計4人の男が乗っていることを、完全に??本当に完全に!??忘れさせるほどの疾走力を見せたこと。しかしながら車両本体価格248万円というバーゲンプライスで、排気量1.4Lなもんだから税金も安いこと。けれども、「ゴルフ!」という一点ですべてをねじ伏せることも可能な不滅のブランド力を備えていること。つまり、死角がない。

このクルマは自動車業界の「出来杉くん」なのだ。今、ともあれ暑い地球の未来を考えながら、それでいて自動車愛好家としての自分のエゴをフツーの財力で満たそうとするなら、これ以外の選択肢はちょっと考えにくい。

だが、このちょっとヘソ曲がりな雑誌のデスク担当は、同時にこうも思うのだ。「我らにもっと毒を!」と。あまりに“正しい”人物や意見“だけ”では、世の中も、人生も、うまく回らんと思うのですよ。とはいえ、温暖化防止も急務……。

そこで小生考えた。ガイシャ好きの皆さんは、やはりTSIトレンドラインを買うべきです! でも、心にちょっとした「毒」を飼っている自覚がある人は、この新車と同時に、本誌情報ページにたくさん掲載されている刺激的な中古車もどうぞ。「魅惑の8輪態勢」が、あなたの生活にいいバランスをもたらすはずです。きっと。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード TSI トレンドライン
駆動方式 FF
トランスミッション 7AT
全長×全幅×全高(mm) 4205×1760×1520
ホイールベース(mm) 2575
車両重量(kg) 1310
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHCシングルターボ
総排気量(cc) 1389
最高出力[ps/rpm] 122ps/5000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 20.4kg-m/1500ー4000rpm
10・15モード燃費(km/L) 15.4
ガソリン種類/容量(L) 無鉛ガソリン/55
車両本体価格 248.0万円