もう弟分とは言わせない、恐るべき“クールな”ホットハッチ

  • フォルクスワーゲン ポロGTI 走り|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ポロGTI インパネ|ニューモデル試乗
↑専用の前後バンパーとクロームの2本出しマフラーを採用(左) 本革ステアリングにはパドルシフトを搭載(右)
雨中のワインディングロード、にもかかわらず、これほど安心して楽しめた“ホット”ハッチは初めてだ。いやはや、VWってどこまでも真面目で車が好きで奥が深い。ショージキ、脱帽。

ベースモデル同様、GTIも排気量ダウンサイジング&燃費向上(CO2削減)&パワーアップ(約2割)を果たしている。専用チューニングの足回りで、車高もキリリと15mmローダウン。先代より大きいタイヤ(17インチ)を履きこなし、ゴルフGTIで評判の“アンダーステア防止装置”こと電子制御デファレンシャルロックXDSも備わった。そして、歴代ポロGTIとしては初採用となる7速DSG専用車ということで、その加速タイムはなんとゴルフGTI同等というから、恐ろしい弟分の登場だ。ちなみに現行ポロの人気は予想を上回る勢いで、ついにゴルフと同じだけ売れる銘柄に。

弾力硬め=スーパーボールくらいの硬さ、の乗り心地である。ただし、路面からの入力に対して収束がシンプルかつ一発だから嫌味がない。タンタンタタンとリズミカルな走りに徹している。
  • フォルクスワーゲン ポロGTI エンジン|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ポロGTI ホイール|ニューモデル試乗
↑179psの1.4LTSIは7速DSGとの組み合わせで16.6km/Lのカタログ燃費を実現(左) タイヤは215/40R17(右)

VWの渾身の高性能コンパクト

オートマチックでドライブすれば、いかにもエコな走り、早めにどんどん上の段をつかみ、ギアが甘噛みするような感覚で“薄~く”走っていく。このとき、硬い乗り心地と手によく馴染むスポーツハンドル以外にGTIをことさら意識することがない。

ところが、だ。パドルシフトを積極的に操作すればキャラは一変。野太いサウンドとあふれるトルクで弾丸加速を見せたかと思うと、コーナーでは実に手ごたえのいいハンドリングで応えてくれる。ゴルフより小さいぶん、(車に助けられるのではなく)自分で操っているという感覚がとても強い。よくできたボディと十分なパワー、フラットだが要所要所で適度なタメをこさえる絶妙な足回りチューニングのおかげで、どんどん“運転”にのめり込んでしまう。

それでも乗り手は不思議なほどに冷静なままだ。汗をかくような場面などまるでない。たとえ滑っても適切に気持ちよく処理してくれるから、焦らない。憎らしいほどに不安のないスポーツ走行が楽しめた。

要するに、ベースのポロがもっている長所を、何もホットハッチだからと言って捨てることなく、ただただ走りの性能に磨きをかけたということ。実にフォルクスワーゲンらしい考え方の“クール”なホットハッチなのだった。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード GTI
全長×全幅×全高(mm) 3995×1685×1460
車両重量(kg) 1194
エンジン種類 直4DOHC+ターボ+スーパーチャージャー
総排気量(cc) 1389
最高出力[ps/rpm] 179ps/6200rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 25.5kg-m/2000~4500rpm
車両本体価格 294万円
Tester/西川 淳 Photo/向後一宏