不満がなかったはずの旧型が霞んで見える出来

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↑トランスミッションは6速のDSG。(左)GTIのロゴが刻まれたステアリングやシフト回りなどには赤いステッチがアクセントとして入る。18インチホイール+DCCのセットオプションは21万円(右)
ワッペン(=盾型)グリルを一代で引っ込めて、初代や2代目あたりを彷彿とさせる横バー型のシンプルなグリルを採用した新型ゴルフGTIのエクステリアは、そのグリル両脇のつり上がったヘッドライトや水平基調のボディラインなどが相まって、先代以上にスポーティなというかワルい感じを漂わせている。第一印象はコレ、ナカナカ悪くない。

しかしこの新型ゴルフGTI、驚きはその走りにこそ詰まっていた。車体の基本骨格は先代を踏襲。直列4気筒2L直噴ターボエンジンに6速DSGというパワートレインもほとんど一緒かと思いきや、そこにはワンランク質の高い走りの世界が展開されていたのだ。

まず圧巻がシャーシ。特にオプションの18インチタイヤ&ホイールとDCCと呼ばれる減衰力可変ダンパーのセットを装着した車両の走りは絶品だ。絶対的にはソフトなわけではないのに荒れた路面でも跳ねずにタイヤがぴったりと張り付き、涼しい顔で驚くほどのハイスピードコーナリングを決めることができるのである。

これはサスペンション自体の洗練に加えて、新搭載のXDSも貢献度は大きい。ブレーキを使って疑似LSD的な効果を実現したこのXDSが、きわめてニュートラルステアに近いフットワークを実現。不安なく思いどおりに曲がるアシを得て、ますます右足に力が入ってしまうというわけだ。

先代とは全く別物のエンジンで、スポーツカー顔負けの走りっぷり

  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI エンジン|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI リアスタイル|ニューモデル試乗
↑前型比で最高出力+11ps、最大トルクはより低回転域から発揮される(左)大型リアスポイラーやリアディフューザーなど専用装備を多数装着(右)
エンジンも、代わり映えしないかと思ったら実はコレ、先代までとは完全に別物。振動を打ち消すバランサーシャフトの採用などによって吹け上がりは俄然滑らかになった。新型ゴルフ自体の静粛性の向上ぶりと相まって、上質なスポーティさを演出。不満のなかったはずの先代が荒っぽい車と思えるほど、実は大きくソフィスティケイトされているのである。

誰もが快適に普段使いできて、それでいていざ鞭を入れればヘタなスポーツカー顔負けの走りっぷりを披露する。一見それほど代わり映えしないようでいて、そんなGTIらしさを全体に一段あるいは二段レベルアップさせたのが、この新型ゴルフGTIである。価格は366万円と先代の7万円高。この内容ならば、文句なしにバーゲンプライスだと言っていい。

ただし予算に余裕があれば、18インチ+DCCセットはぜひ装着したい。特に後席に人を乗せる機会がある人は、ゲストに快適に過ごしてもらう意味でも必須だと言い切ってしまおう。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード GTI
駆動方式 FF
トランスミッション 6速DSG
全長×全幅×全高(mm) 4210×1790×1460
ホイールベース(mm) 2575
車両重量(kg) 1984
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1984
最高出力[ps/rpm] 211ps/5300~6200rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 28.6kg-m/1700~5200rpm
10・15モード燃費(km/L) 10.3
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/55
車両本体価格 366.0万円
(Tester/島下泰久 Photo/尾形和美)