トヨタ ランドクルーザー300▲70年にわたって歴史を積み重ねてきたランドクルーザー。新型も「どこへでも行き、生きて帰ってこられること」を使命に開発された

伝統の走破性を守りながら軽量化で環境性能も向上

トヨタ自動車は、8月2日に新型ランドクルーザーを発表&発売した。

ランドクルーザーは、1951年8月にトヨタ BJ型として誕生した四輪駆動車がルーツで、「様々な人々に安全と安心を届けること」をめざしてきた。「どこへでも行き、生きて帰ってこられること」を使命とし、これまでに累計約1060万台が世界170の国と地域で販売されてきた。

2007年以来のモデルチェンジとなる今回は、

●信頼性・耐久性・悪路走破性を進化させつつ継承
●世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りの実現

がテーマに掲げられた。フレーム構造のままTNGAの思想が反映されたGA-Fプラットフォームを新開発し、素性が刷新された。フレームはトヨタ自動車の本社工場で生産され、組み立てはトヨタ車体の吉原工場で行われる。

設定されているグレードと税込み価格は次のとおりである。

【3.5L-V6ガソリンツインターボ&10速AT】
GX(5人乗り) 510万円
AX(7人乗り) 550万円
VX(7人乗り) 630万円
GRスポーツ(7人乗り) 770万円
ZX(7人乗り) 730万円

【3.3L-V6ディーゼルツインターボ&10速AT】
GRスポーツ(5人乗り) 800万円
ZX(5人乗り) 760万円
 

高次元な走りと環境性能の向上をめざしたGA-Fプラットフォーム

伝統のラダーフレームは、最新の溶接技術が活用されて剛性が20%上がり、軽量化と相まって衝突安全性能、静粛性、走りの質が向上した。

ボディは、高張力鋼板の採用が拡大され、ボンネットフードやルーフ、ドアパネルをアルミ化。その結果、約200kgの軽量化が実現された。

また、パワートレインは後方に70mm、下方に28mm移されたことで、前後重量配分も改善されて意思に沿った走りと環境性能の向上に貢献している。
 

トヨタ ランドクルーザー300▲ラダーフレーム構造のままTNGAの思想が反映されたGA-Fプラットフォームや一部パネルのアルミ化によって200kgの軽量化を実現

プラットフォーム刷新に合わせ、前後サスペンションも新開発された。とくにリアサスペンションはショックアブソーバーの配置が最適化されて乗り心地と操縦安定性が向上。

サスペンションアームの配置が変更され、ブレーキング時に安定した車両姿勢を維持。タイヤの浮きづらさ(ホイールアーティキュレーション)も向上して悪路走破性も高まった。

過酷な環境下でも使用に耐える油圧式パワステが踏襲され、レーントレーシングアシストなどの操縦支援機能を実現するために。電動式の操舵アクチュエーターが加わった。

また、ブレーキはペダル操作量をセンサーで検出して最適な制動力をもたらす電子制御タイプに変わった。

後輪には、トラクション性能を確保するトルセンLSDが採用されている。旋回加速時に駆動力が最適配分され、高いコントロール性を実現。直進時には路面状況に応じてレスポンスよく反応し、優れた直進安定性が確保される。

オフロードでスタックや駆動力不足が発生した際に重宝するマルチテレインセレクトは、AUTO/DIRT/SAND/MUD/DEEP SNOW/ROCKの6つのモードから選べる。モードごとに駆動力、サスペンション、ブレーキ油圧が自動的に制御されて高い走破性を確保。

マルチテレインモニターは、フロント、左右、リアに装備されたカメラからの映像で周囲の路面状況が確認できる。停止中に画面スイッチを押すと、手前で撮影された過去の映像が透過映像として映し出されて車体下の様子が見られる。その際、車体とタイヤの位置を示す線が合成される。

さらに、後輪周辺を大きく表示する新ビューでタイヤ付近の障害物との距離感が把握でき、スタックからの脱出に役立つ。

12.3インチのディスプレイ画面には傾斜計、デフロックの状態、アクセル&ブレーキワークなどを表示して車両の状態を直感的に把握することもできる。
 

ランクルにふさわしいパワーと環境性能を兼ね備えたパワートレイン

ガソリン車には、415ps/650N・mの3.5L V6ツインターボを搭載。直噴インジェクター付きD-4STの採用、ロングストローク化、バルブ挟角の最適化で力強い低速トルクと優れた過給レスポンスを実現。
 

トヨタ ランドクルーザー300▲ガソリン車に搭載されるV35A-FTS型エンジンは、3.5L V6ツインターボで415ps/650N・mを発生する

ディーゼル車には、309ps/700N・mの3.3L V6ツインターボを搭載。燃焼室や吸気ポート、インジェクターなどが最適化され、可変ノズル付き2ウェイツインターボによって爽快な加速を実現。低速域ではシングルターボの高レスポンスによる力強さ、高速域ではツインターボによる伸びやかな加速がもたらされる。
 

トヨタ ランドクルーザー300▲再びラインナップされるディーゼル車には309ps/700N・mのF33A-FTV型3.3L V6ツインターボが搭載される

トランスミッションは、発進時を除くほぼ全域でロックアップする10速AT。ギアレシオのクロス化と、ワイドレンジ化によって心地いい走りのリズム、高速燃費、オフロード性能の向上を同時に果たしている。
 

機動性と走破性を重視した伝統のパッケージと内外装

全長やホイールベースといったボディサイズ、アプローチアングル、ディパーチャーアングル、ランプブレークアングルは従来型と変わらず、扱いやすさを継承。

室内では、フロントの着座位置が後方に移され、2列目および3列目シートは構造と配置が見直された。それにより居住性、荷室容量、衝突安全性能が向上。3列目シートは、荷物の積みやすさを考慮してフロア格納式に変更され、一部グレードでは電動で格納と復帰が行える。

エクステリアは、キャビンを後ろ寄りに配置するキャビンバックワードプロポーションで歴代モデルのヘリテージを追求。前後バンパーの下部は障害物をいなす形状に設計され、オフロード走行時の機能性を重視。また、ボンネットフードには凹みが設けられて前方視界と衝突安全性能が両立されている。
 

トヨタ ランドクルーザー300▲前方視界の確保と優れた衝突安全性能を両立するため、ボンネットフードには凹みが設けられている

インパネ上部は、車両の姿勢が把握しやすい水平基調に設計されている。また、車両状況が把握しやすいよう、スピード・エンジン回転・燃料・水温・油圧・電圧が直感的に確認できる6針式メーターを採用。ドライブモードセレクト、マルチテレインセレクト、ダウンヒルアシストコントロール、クロールコントロールはひとつのダイヤルに統合された。
 

トヨタ ランドクルーザー300▲オフロードで車体の傾きが即座に把握できるよう、水平基調にデザインされたインパネ。見やすくて信頼性の高いアナログメーターが採用されている

快適温熱シートとシートベンチレーションは、フロントシートに加え、一部グレードでは2列目シートにも装備。幅広のコンソールボックスは両開き式で運転席、助手席だけでなく、後席からもアクセスしやすい。また、ペットボトル飲料などが冷やせるクールボックスも設定。

ナビやオーディオに加え、オフロード機能もわかりやすく表示される12.3インチの高精細タッチディスプレイは、オプションで選択できる。

最大3名分の車両設定(ドラポジや空調の設定など)が記憶させられる、マイセッティング。スマートキー携帯時にバンパー下に足をかざすだけで開閉する、ハンズフリーバックドアも採用されている。
 

最新世代のランクルにふさわしい安心&安全装備

トヨタ初採用の指紋認証スタートスイッチは、スマートキーを携帯した状態でスタートスイッチの指紋センサーに触れると、車両に登録された指紋情報と照合。指紋情報が一致しなければエンジンは始動しない。

全車標準装備のトヨタ・セーフティセンスには、昼夜の歩行者や昼間の自転車、右左折時の横断歩行者、右折時の対向直進車も検知して緊急時操舵支援機能が稼働するプリクラッシュ・セーフティが含まれている。

静止物や後方接近車両および後方歩行者に反応するパーキングサポートブレーキ。降車時の危険も知らせてくれるブラインドスポットモニター。アクセルの踏みすぎや踏み間違いを検知すると車の加速を抑制するプラスサポート。バックカメラの汚れを落とす洗浄機能。車同士が通信して死角の車や歩行者、緊急車両の接近を知らせてくれるITSコネクトもオプションで用意されている。
 

ダカールラリーで鍛えられて創り上げられたGRスポーツ

ランクルは、1995年から25年以上にわたってダカールラリーの市販車部門に参戦し続けている。新設定されたGRスポーツの開発にあたっては、「モータースポーツを起点にした、もっといい車づくり」を実践。

ラリードライバーからのフィードバックが生かされ、過酷な環境下でも安心して運転でき、疲れない車をめざした。2023年以降にはトヨタ車体のチームがGRスポーツをベースにした車両で出場する予定だ。

GRスポーツの専用装備として世界初採用されたE-KDSSは、市街地での走行安定性とオフロードでの走破性を両立させるサスペンション制御システムだ。路面状況に応じて前後スタビライザーが独立制御されてスタビライザー効果が変化する。また、リアに加えてフロントにも電動デフロックを装備。

この他に、以下の専用アイテムが装備されている。
●専用ラジエターグリル
●専用フロントバンパー
●専用リアバンパー
●専用ホイールアーチモール(ブラック)
●リアトヨタエンブレム(アクリル+ブラック)
●専用リアマッドガード
●18インチアルミホイール(マットグレー塗装)
●専用エンブレム(フロント・サイド・リア)
●専用バックドア下端デカール
●専用ロッカーモール(ブラック)
●専用車名エンブレム(ブラック塗装)
●アウトサイドドアハンドル(ブラック塗装)
●ドアミラー(ブラック塗装)
●専用本革巻きステアリングホイール(切削カーボン調加飾・GRエンブレム付)
●専用オープニング画面(T-Connectナビ装着時)
●専用フロントシート(GRエンブレム付)
●インテリア加飾(切削カーボン調パネル)
●内装色 : GR専用ブラック/GR専用ブラック&ダークレッド
●専用スマートキー(GRエンブレム付)
 

トヨタ ランドクルーザー300▲足回りのデバイスに加え、ラジエターグリルやバンパー、アルミホイールにも他グレードとは異なる専用品が採用されているGRスポーツ
文/マガジンX編集部、写真/トヨタ