ポルシェ 911を買うなら知っておきたい! 今お買い時を迎えている「996型」「997型」のチェックポイント!!
2025/03/29

ちょっと古い“水冷モデル”のトラブルにはどんなものが?
901型、930型、964型、993型と空冷エンジンを搭載するポルシェ 911の中古車相場はいまや高値安定でまさに高嶺の花。その一方で1997年に新設計のシャシー&水冷水平対向エンジンを採用した新世代の996型は空冷エンジンマニアからは評価されず、また伝統の丸型から涙滴型に変更したヘッドライトが不人気なこともあり中古車相場は911の中でも最も低値で取引されてきた。その後、丸型ヘッドライトにデザイン回帰し2004年にデビューした997型も初期型であればすでに20年超ということもあり、相場は順調に値下がりしてきた。
しかし近年、現行911の992型のボディサイズの拡大、新車価格の高額化、さらに世界的な電動化の流れをうけピュアな内燃エンジン車がいつまで存続できるのか先行き不透明なこともあり、996型や997型の手頃な価格や使いやすいサイズが再評価され、中古車相場は上昇傾向にある。
そうした中で996型や997型といった水冷エンジンモデルをメンテナンスするニーズが高まっている。空冷の911を専門にメンテナンスするショップは多くあるが、水冷の996型や997型をはじめボクスター、ケイマンなどをメインに手がけるプロショップは意外と少ない。

神奈川県川崎市にある高木モータースには、996型や997型をはじめケイマン、ボクスターなどちょっと古い水冷ポルシェのエンジンオーバーホールの依頼が定期的に月に2台は舞い込む。もともとはメルセデス・ベンツやBMWなどドイツ車全般のメンテナンスを行っていたが、いつしか口コミで広がり水冷ポルシェオーナーにとって駆け込み寺のような存在になっていった。
996型、そして997型(の前期)の代表的なトラブルといえば、“インタミ問題”をよく耳にするだろう。インターミディエイトシャフトという部品が破損し、エンジンが動かなくなるというものだ。
しかし、実際はその当時ポルシェの正規ディーラーがサービスキャンペーンを実施しており、ディーラー車であれば対策部品に交換されているケースがほとんどで、トラブルの発生率は極めて低いという。高木モータースにもこのインタミ問題で入庫するケースはほとんどないそうだ。
定期的なオイル交換をしていれば911はめったに壊れない
では、どのようなケースでエンジンオーバーホールのような重整備が必要になるのか。代表の高木さんが真っ黒に焦げ付いたピストンを手にしながら話しだした。

「ピストンのまわりに小さな穴が見えるでしょ。オイルがこの穴を通って噴き出してピストン潤滑するわけだけど、管理状態がよくないと穴がつまって、それで潤滑しなくなる。このピストンって短くて 頭がでかい。だから潤滑がうまくいかないと振れやすい。ピストンがシリンダーの中であばれて傷だらけになって最後はこうなってしまうんだよね」
その原因は、意外なほどに単純なもので定期的なオイル交換を怠っていることだという。空冷エンジンにとってオイルは命ともいえるもの、それだけに空冷911オーナーがオイル交換を怠ることはないだろう。しかし、水冷911は信頼性が向上したことで、誰もが気軽に乗れるモデルになった。中古車価格も数年前までは200万円を切るものが結構流通していた。安価で壊れないがゆえに乗りっぱなしにされた個体があるのも事実だ。
高木さんも「こうなってしまうのは、ほぼ100%オイル交換をちゃんとしていない車だね。このポルシェの水冷エンジンはオイル交換さえ定期的にしていれば、壊れることなんてめったにないくらい丈夫なんです。それからエンジンを始動していきなりアクセル全開にはしないこと。停止した状態で暖気運転ができないときでも油温計の針が動くまではゆっくり走るように心がけた方がいいね」と話す。
トランスミッションに関してだが、種類はMT(マニュアルトランスミッション)か、996型と997型の前期型はティプトロニック(トルコンオートマチック)、997型の後期型からPDK(ダブルクラッチトランスミッション)となっている。
MTやティプトロックは耐久性も高く、丁寧に扱っていれば10万kmでもまったく問題ないという。一方でPDKに関しては初期モデルでまれにシフトフォークセンサーの不良が発生するケースがあるようだ。シフトが固着してしまい走行不能になってしまうという。ちなみに高木モータースではPDKを取り外しするためのSST(スペシャルツール)を用意しており修理対応が可能だ。
最後に、これから996型や997型を購入するにあたってどこをチェックすればいいのか高木さんに尋ねてみた。
「内装を見ればある程度はどんな使われ方をしていたか想像できるけど、機械的な部分の良し悪しは一般の人が見て判断するのは難しいでしょう。996型なんてもう30年近く前の車だし、やっぱりどんなメンテナンスがされてきたのかは整備記録簿が残っている車かどうかがひとつの判断材料にはなると思いますね」
やはり古い車こそ整備記録簿が重要な目安となる。もちろんすべての車に残されているわけではないので、もし記録簿のない車を購入するのであれば予防整備の意味もこめて、高木モータースのようなプロショップへ持ち込んでみることをオススメめする。

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ライター&エディター
藤野太一
カーセンサー、カーセンサーネットの編集デスクを経て、カーセンサーエッジの創刊デスクを務める。現在はフリーランスのライター&エディターとして、自動車誌をはじめビジネス誌、ライフスタイル誌などにも寄稿する。