ランドクルーザー70 ▲トヨタ ランドクルーザー70が2度目の再発売となりましたが、新車を買おうにもモノがほとんどなく、2014年と2015年に期間限定で再発売されたモデルの中古車価格も高騰中……。ということで、ランドクルーザー70の約半額で買える「ランクル70の代わり」を考えてみることに

新車は手に入らず、中古車価格も高騰

昨年11月、8年ぶりに再々発売されたトヨタ ランドクルーザー70。ご承知のとおりヘビーデューティ系ランドクルーザーの超ロングセラーモデルが、様々な進化を遂げたうえで再び再発売されたわけですが、その新車を手に入れるのはなかなか難しい状況です。

メーカーの公式サイトによれば、新車の納期は「詳しくは販売店にお問い合わせください」となっており、実際には納車まで数年は待つ必要がある模様。

ならば! ということで2014年から2015年にかけて期間限定で再発売された世代を狙おうにも、その中古車価格も高騰中。具体的には総額500万~700万円というのが、再発売モデルの中古車価格です。おそらくその平均価格は今後ますます上がっていくかもしれません。
 

ランドクルーザー70▲こちらは2014年から2015年にかけて期間限定で再発売されたランドクルーザー70。今回の再々発売モデルが2.8Lディーゼルターボエンジンであるのに対し、こちらは4L V6ガソリンエンジンだった

こうなるともう「ランクル70の中古車をお安く買える未来はやって来ない」と思った方がいいのかもしれません。残念な話ではありますが。

しかし残念がってばかりいても仕方がありません。ヘビーデューティでカッコいいランドクルーザー70に憧れているならば、ランクル70と似た喜びを与えてくれるモデルを現実的な予算で、具体的には新車のランドクルーザー70の約半額である「250万円ぐらい」でとっとと買ってしまった方が、人生は有意義になるような気がします。

では「新車のランドクルーザー70の約半額で買える、ランクル70の代わりになり得るモデル」とは、果たしてどれのことなのでしょうか?

以下、検討してみることにしましょう。
 

 

候補1|トヨタ FJクルーザー(初代)
→想定予算:総額230万~290万円

再々発もしくは再発版ランドクルーザー70の代わりになり得て、なおかつ総額250万円ぐらいで買えるモデルとしては、まず第一にこれが挙げられるでしょう。

もともとは北米市場専用車として開発および発売され、2010年からは日本でも販売されたオフローダー、トヨタ FJクルーザーです。
 

ランドクルーザー70▲2010年から2018年まで販売されたトヨタ FJクルーザー

シャシーはランドクルーザープラドと共通のラダーフレーム方式で、パワーユニットもプラドと同じ4L V6ガソリンエンジン。その最高出力は231psで、最大トルクも380N・mという十分な力強さ。ちょっとレトロでユニークなビジュアルを採用している車ではありますが、オフローダー四駆としての実力は、ランクル70と同様に“本物”です。

そして今申し上げたレトロでユニークなビジュアルも、ランドクルーザー70のシブいニュアンスと方向性は異なりますが、「インパクトがある」という意味では同じとも言えます。
 

ランドクルーザー70▲FJクルーザーの運転席まわり。駆動方式はオフローダーの王道である副変速機付きのパートタイム4WD

そしてFJクルーザーは中古車価格も比較的お手頃。再々発売されたランクル70の新車購入総額のおよそ半額である「250万円前後」を見ておけば、まずまずコンディション良好な2012~2013年式が見つかるはずです。

若干古い世代のオフローダーであるため、ADAS(先進運転支援装備)の面では最新のランドクルーザー70にはまったくかないません。しかしそれ以外については、ランクル70の約半値であるにもかかわらず、「代わり」としての働きは十分以上にこなしてくれるはずです。
 

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トヨタ FJクルーザー(初代) × 全国
 

候補2|三菱 パジェロ(4代目)
→想定予算:総額190万~290万円

トヨタ FJクルーザーもかなりナイスな選択肢かと思いますが、もしもそのポップなデザインがあまりお気に召さないのであれば、狙ってみるべきは最終型(4代目)の三菱 パジェロです。
 

ランドクルーザー70▲こちらが4代目三菱 パジェロ。写真はロングボディの上級グレード
 

ご承知のとおり三菱 パジェロは、ラダーフレームを採用する本格オフローダーとして1982年に初登場したモデル。その歴史と伝統は、さすがにランドクルーザーにはかなわないかもしれませんが、ダカール・ラリーなどで残した輝かしい戦績などと併せて考えれば、ブランドとしての威光は「ランクルに勝るとも劣らず」と言ってもいいでしょう。

今回「ランクル70の代わり」として推したいパジェロは、2006年から2019年まで販売された4代目、つまり「最後のパジェロ」です。

三菱パジェロは3代目からモノコック構造を採用したため、世の中には「ラダーフレームじゃなくなったパジェロは、もはや本格オフローダーではない」と言う人もいるようですが、それはちょっと違います。

3代目および4代目パジェロで採用されたフレーム構造は「ビルトインラダーフレーム」というもの。これは、ラダーフレームのシャシーにモノコック構造のボディを溶接でくっつけてしまう――という構造です。

「超」の字が2つも3つも付くような悪路を走る場合は、純粋なラダーフレーム構造の方が有利なのでしょう。しかし、一般的にはビルトインラダーフレームで十分以上であり、高速域での走行性能は、明らかにビルトインラダーフレームの方が有利です。
 

パジェロ▲4代目パジェロのインパネまわり。4WDシステムは、4つのモードの切り換えが可能な「スーパーセレクト4WD-II(SS4-II)」が採用されている

そのような本格オフローダーである4代目三菱 パジェロは総額で250万円も出せば、タフでトルクフルな3.2L直4ディーゼルターボエンジンを搭載している中古車を見つけることができます。ご承知のとおり再々発売版ランドクルーザー70も、排気量は異なりますが、同じく直列4気筒のディーゼルターボエンジンを搭載しています。

そういった意味でも4代目三菱 パジェロは、「約半額で買える再々発売版ランクル70の代わり」として、素晴らしい働きをしてくれるはずです。
 

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三菱 パジェロ (4代目) × 全国
 

候補3|スバル フォレスター(5代目)
→想定予算:総額200万~250万円

トヨタ FJクルーザーも4代目三菱 パジェロも、いずれも屈強でタフな素晴らしいオフローダーです。とはいえ、世の中には「そこまで屈強じゃなくてもいい」という考え方もあります。

もちろんランドクルーザー70に憧れる人は、あの「屈強でタフな感じ」がお好きであるということは重々承知です。しかし、やはりモノコック構造を採用している一般的なSUVの方が高速道路などでの走りは快適であるため、キャンプやスノーボードなどを行う現地までの往復は圧倒的にラクになります。そしてその結果として、現地でのアクティビティをより集中して楽しむことができ、安全に帰宅することも可能になるわけです。

とはいえ、あまりにも一般的で軟弱な「なんちゃってSUV」では、ランドクルーザー70の代わりになどなり得ないことも明らかでしょう。ランクル70の代わりとなるモノコック構造のSUVは、快適であるだけでなく「本格的な悪路走破性能」ももち合わせている必要があるのです。

であるならば、現行型の5代目スバル フォレスターが適任なのではないでしょうか。
 

ランドクルーザー70▲現行型スバル フォレスター。写真は前期型の「X-BREAK」
 

フォレスターは1997年から製造販売されているスバルの中型モノコックSUV。いわゆるクロスオーバーSUVと呼ばれるカテゴリーですが、その悪路走破性能はいつだって本格的で、それは2018年に発売された現行型(5代目)においても変わりません。

そして現行型フォレスターは「スバルグローバルプラットフォーム」という非常に出来の良い新世代のプラットフォームを採用したことで、舗装路での走行安定性や快適性は、ちょっと言葉を失うぐらい素晴らしいものがあります。

そして現行型フォレスターは登場時から「アイサイト・ツーリングアシスト」が全車標準装備であるため、高速道路を安全かつ楽ちんに走るのは大の得意。その結果として、アウトドアアクティビティの現場での活動クオリティも向上することでしょう。
 

フォレスター▲この世代のスバル車におおむね共通するデザインが採用されたインテリア。ビッグマイナーチェンジ前の運転支援システムは「アイサイト・ツーリングアシスト」

2021年6月以降の大幅改良モデルはさすがに総額250万円ではまだ無理ですが、大幅改良前の2018~2019年式付近の世代であれば、総額200万円台前半で2.5L水平対向エンジンを搭載する各グレードを見つけることができます。

この2.5L自然吸気エンジンは2020年10月の一部改良を機にカタログから消えてしまいましたが、なんとも自然な力強さを発揮してくれるナイスなパワーユニットです。ランドクルーザー70とは毛色も方向性も異なりますが、きっと同じような量のよろこびと幸せを、オーナーに与えてくれるでしょう。
 

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スバル フォレスター(5代目) × 全国
 

候補4|トヨタ RAV4アドベンチャー(4代目)
→想定予算:総額240万~280万円

ここまでは、ランドクルーザー70という車がもち合わせている本格的な各種性能に対抗し得る本格的なモデルを、「ランクル70の代わり」として挙げてまいりました。

しかし世の中には、ランドクルーザー70の本格的な性能にはさほど興味がなく(したがって悪路を走る予定もほとんどなく)、あくまでも「あのビジュアルと雰囲気が好き」という人だっているはずです。最近はそういった意味と目的で、本格派の軽オフローダーである現行型スズキ ジムニーを買っている人もたくさんいます。

もしもあなたがそうであるならば、つまりランドクルーザー70の見た目と雰囲気だけが好きゆえに買おうと思っていたならば、例えば現行型トヨタ RAV4の「アドベンチャー」というグレードの方がハマる可能性はあります。
 

ランドクルーザー70▲こちらが現行型トヨタ RAV4アドベンチャー。当初は2L自然吸気エンジンのみで、のちにハイブリッドのアドベンチャーも追加した。写真は2L自然吸気エンジンのアドベンチャー
 

現行型のRAV4は2019年4月に登場したモノコック構造の中型SUV。4WD車の四駆システムはなかなか先進的なものが採用されていますが、基本的には悪路ではなく「都市部中心」に使っているユーザーの方が多いでしょう。トヨタ ハリアーと同じプラットフォームを使用していますので、舗装路での乗り味は非常に良好で、快適でもあります。

そんな現行型RAV4は通常のグレードでもほのかなアウトドア風味が感じられる外観デザインを採用していますが、その中でも「アドベンチャー」という4WDグレードは、まさに冒険的なというか、専用のグリル&バンパーやスキッドプレート、グレーメタリック塗装の17インチホイールなどにより、アウトドアテイスト満点の外観デザインが採用されています。
 

ランドクルーザー70▲アドベンチャーの「オフロードパッケージII」。ブラックアウトされたスキッドプレートセットや、オールテレインタイヤ+マット調ブラック塗装の18インチホイールなどが特徴で、サスペンションチューニングにより最低地上高も10mmアップされている

超ハードなクロスカントリー走行を想定している人には向いていませんが、もしもそうでないならば、総額240万~280万円ぐらいで狙える現行型RAV4アドベンチャーの2Lガソリン車で“雰囲気”を楽しむというのもアリなはずです。

ちなみに少し高くなってしまいますが、「オフロードパッケージ」または「オフロードパッケージII」という特別仕様車であれば、さらにオフロード風味は満点となります。
 

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トヨタ RAV4(4代目) × アドベンチャー × 全国
 

候補5|ホンダ エレメント(初代)
→想定予算:総額130万~250万円

もしも候補4の場合と同じく雰囲気優先で考えるのであれば、ホンダが2003年から2005年までの短い期間だけ販売したホンダ エレメントというMPVも適任かもしれません。
 

ランドクルーザー70▲2003年から2005年までアメリカから逆輸入されたホンダ エレメント
 

ホンダ エレメントは、米国ホンダが企画から開発、生産までを行った逆輸入車。

外観は、海辺でライフガードが待機する「ライフガードステーション」をモチーフにデザインしたもので、センターピラーレス&左右観音開きの「サイドアクセスドア」が採用されています。

汚れや水に強く、モップなどで拭き取れる「ワイパブルフロア」も採用し、濡れたままのサーフボードなどを載せても簡単に拭き取ることが可能。そしてシート表皮にも撥水加工が施されるなど、アウトドアユースをかなり意識したつくりになっています。
 

ランドクルーザー70▲観音開きの「サイドアクセスドア」を採用。Bピラーは観音ドアに内蔵されているため、後部座席へのアクセスは容易で、キャンプ場などでは前後のドアを開け放っておくのも一興

パワーユニットは最高出力160psの2.4L直4「i-VTEC」で、駆動方式は、油圧多板クラッチを備えた4WD。通常はほぼFF状態で走りますが、走行状況に応じて後輪に駆動を伝えるタイプです。

とはいえ当然ながらランドクルーザー70や、あるいはFJクルーザー、三菱パジェロ、さらにはスバル フォレスターのように「どんな悪路も苦にしない!」というタイプの4WD車ではないのですが、最低地上高はそれなりに高いため、ある程度の悪路は普通に走ることができます。

本格オフローダーを探している人には縁のない車かもしれませんが、もしもそうでないならば、総額100万円台半ばから後半ぐらいで狙えるホンダ エレメントも、なかなか悪くない選択肢になるはずです。
 

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ホンダ エレメント(初代) × 全国
文/伊達軍曹 写真/トヨタ、三菱、スバル、尾形和美、ホンダ
※記事内の情報はすべて2024年6月1日時点のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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