日産 アリアの受注再開を待ち疲れた“難民”に贈る「代わりにコレ買っちゃったらどうですか?」5選
カテゴリー: 特選車
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2023/07/17
注文停止となったアリアを買えるのは何年先のこと?
2021年6月に限定モデルの予約注文受け付けが始まり、翌2022年5月にカタログモデルが発売された日産のSUVタイプの新型EV「アリア」が、さっそく受注停止に追い込まれた。
ご承知のとおりアリアは、日産がこれまで培ってきたEV開発のノウハウと最新のコネクテッド技術を融合させたEV専用モデル。SUV風味となるボディのサイズは全長4595mm×全幅1850mm×全高1655mmで、新開発されたEV専用プラットフォームによりフラットで広々としたフロアと、CセグメントでありながらDセグメント並みの室内空間を実現させている。
そこに組み合わされるバッテリーのサイズは66kWhまたは90kWhで、まず発売された66kWhバージョンの一充電走行距離はWLTCモードで470kmと十分なもの。そして運動性能もきわめて良好で、エクステリアおよびインテリアのデザインセンスと質感も、「上々」という言葉では足りないほどに上々である……のだが、今となっては「買えない車」になってしまった。
すでに発売済みの「B6(2WD)」に数多くの注文が入っており、今後発売されるB6 e-4ORCE(4WDモデル)やB9(90kWhバッテリー搭載モデル)の納期も世界情勢の影響でさらなる長期化が見込まれるため、「これまでにご注文されたすべてのお客さまに確実にお届けしていくため、ご注文を一時停止させていただいております」というのが日産の説明だ。(※2023年7月12日現在、公式サイトの情報です)
つまり、まだ注文していない人にとっての日産 アリアは「あと何年待てば乗れるのかまったくわからない車」になってしまったのだ。
数年間、指をくわえて待ち続けるのも一興かもしれないが、まぁ普通は「そんなに待ってられない」ということになるだろう。つまり我々は「アリアの代わりになる何か」を早急に探さねばならないのだ。
だが、しゃれた造形で走りもよく、そしてEVとして十分な航続距離を提供してくれるアリアの代わりになる車など、そもそも存在しているのだろうか?
次章以降、考えてみることにしよう。
代替案1|中古の日産 アリアを買う
→予算目安:総額550万~740万円
最も順当な代替案は、すでに市場に出回っているアリアの“中古車”を買うということだろう。
2023年7月上旬現在、日産 アリアの中古車流通量は33台で、66kWhバッテリーを積むB6系に絞った場合の中古車価格は総額550万~740万円。
まぁB6(2WD)の新車価格が539万円なので、総額640万円以上の中古車は「さすがに割高だな……」と感じるが、総額550万~620万円ぐらいのゾーンで販売されている物件であれば、オプション装備や走行距離次第では普通に納得できる可能性は高い。
実際の中古車価格はもちろん物件によって様々だが、典型的な例としては「2022年式B6(2WD)/走行0.5万km/車両価格550万円/支払総額570万円」といったニュアンスになる。
前述のとおりB6(2WD)の新車価格は539万円なので、上記のプライスは「ちょっと高いのでは?」と思うかもしれないが、実はそうでもない。
というのも、当初の予約注文開始時に発売された「B6リミテッド」はプロパイロット2.0やBOSEプレミアムサウンドシステム、電動パノラミックガラスルーフ等々が標準装備だったが、カタログモデルであるB6(2WD)では、それら装備はオプション扱いになった。
しかし、車両価格550万円ほどで販売されているB6(2WD)中古車のほとんどは「プロパイロット2.0やBOSEプレミアムサウンドシステムなどのオプション装備が付いたうえでの550万円ぐらい」なので、決して超割高というわけでもないのだ。
ただし注意点としては、いくら走行距離数千kmレベルの“新車同然”な車であっても、2022年5月頃に登録された中古車の車検残は、3年ではなく2年弱ぐらいになってしまう。ここがネックではあるのだが、さほど気にならないのであれば、「中古のアリアを買ってしまう」というのは悪くない選択肢だろう。
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日産 アリア(現行型) × 全国代替案2|走行1万kmぐらいのメルセデス・ベンツ EQAを買う
→予算目安:総額470万~600万円
もしも輸入車というものに抵抗がないのであれば、これも日産 アリアの代わりとしては悪くない選択肢だ。
ご承知のとおりメルセデス・ベンツ EQAは、メルセデスのピュアEV第2弾として2021年4月に上陸したCセグメントのSUV。パッと見はけっこう小さな車にも見えるが、実際のボディサイズは全長4465mm×全幅1835mm×全高1625mmと、日産 アリアとほとんど変わらないというか「少し小さい程度」のサイズ感である。
駆動方式はFWDで、フロントアクスルに搭載されるモーターは最高出力190ps/最大トルク370N・m。そして前後軸間のフロア下に搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は、アリアB6とほぼ同じ66.5kWh。WLTCモードでの一充電走行可能距離は422kmと、アリアB6(2WD)より約50km短いが、まぁ「おおむね同程度」と見ることもできるだろう。
そしてインテリアの質感は、日産 アリアも相当高いが、こちらメルセデス・ベンツ EQAもさすがに良好で、プレミアム感は十分以上。走行性能および走行フィールも――感じ方は人それぞれかもしれないが――日産 アリアとおおむね同等と考えていい。
それでいて中古車価格は、比較的安価な部類だと総額470万円ほど。走行1万km前後の物件であっても、アリアの総額よりずいぶんお安い総額でイケるのだ。オプション装備がより充実している個体であっても、走行1万km前後のものが総額520万円付近で狙える場合が多いだろう。
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メルセデス・ベンツ EQA(現行型) × 全国代替案3|走行数千kmのフォルクスワーゲン ID.4を買う
→予算目安:総額520万~610万円
日産 アリアとほぼ同等の性能および満足感を得られるSUVタイプのピュアEVとしては、フォルクスワーゲンの「ID.4」も候補として挙げることができる。
フォルクスワーゲン ID.4は、日本市場へは2022年11月に導入されたCセグメントの電気自動車。シャシーはEV専用アーキテクチャーである「モジュラーエレクトリックマトリックス」で、ボディサイズは日産 アリアに近い全長4585mm×全幅1852mm×全高1612mm。駆動方式は後輪駆動が基本となる。
日本市場にまず導入されたのは2種類のローンチエディション(導入時特有の特別仕様車)で、「ライト ローンチエディション」は52kWhの駆動用バッテリーと最高出力170ps/最大トルク310N・mの駆動用モーターを搭載。「プロ ローンチエディション」のバッテリーは77kWhで、駆動用モーターは204ps/310N・mとなる。WLTCモードの一充電走行距離は前者が388kmで、後者が日産 アリアB6(2WD)を上回る561km。2023年7月上旬現在、中古車市場で流通しているのはすべて航続距離561kmのプロ ローンチエディションだ。
そんなフォルクスワーゲン ID.4 プロ ローンチエディションの内外装は、見てのとおり日産 アリアのそれに引けを取らないセンスおよび質感であり、車内の広さもボディサイズから想像する以上。そして乗り心地の良さと走行安定性の高さについては「これぞ21世紀のフォルクスワーゲン ゴルフ!」と言いたくなるほどの素晴らしさがある。
それでいて走行数千kmレベルでしかない中古車の価格は、総額520万~610万円ほどと、日産 アリアB6(2WD)の新車を買う場合よりも安いか、せいぜい同額程度。中古車の流通量がまだ少ないのが難点ではあるのだが、そこにさえ目をつぶれるのであれば、フォルクスワーゲン ID.4 プロ ローンチエディションは、日産 アリア難民にとっての「強力な代替案」になり得るだろう。
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フォルクスワーゲン ID.4(現行型)× 全国代替案4|いっそ先代BMWアルピナ D3ビターボを買う
→予算目安:総額460万~700万円
ここまでは日産 アリアとおおむね同格・同寸のピュアEVに絞って代替案の検討を進めてきた。だが今ふと思ったのは、「なにもピュアEVに限定する必要はないのではないか?」ということだ。
日産 アリアという車を買いたいと思うそもそもの動機は、「とにかくEVが欲しい」ということではなく――いやもちろんそれもあるのだろうが――それと同時に、根源的には以下のような欲求にもとづいて「アリアが欲しい!」と考えたはずなのだ。
1. 内外装ともにカッコよくて素敵な感じの車が欲しい。
2. 何事においても上質な車が欲しい。
3. そこらへんの大衆が乗っているのとはひと味違う車に、自分は乗りたい。
4. エココンシャスな自分でありたい。または燃料費を低減させたい。
上記のすべてを完全に代替させることは難しいかもしれないが、おおむね代替でき、そして部分的には日産 アリアを大きく上回る満足と感動を、日産 アリアを買う場合とおおむね同予算で手に入れられる選択肢が、実はある。
「先代BMWアルピナ D3ビターボの中古車を買う」という選択だ。
ご承知のとおりBMWアルピナは、素のBMWをベースに、それがさらに数次元上の存在になるように磨き上げられた完成新車群である。「数次元上」というのはインテリアの素材やあつらえだけにとどまらず、ピストンの重量公差などにまで及んでいる。一度でも乗れば誰でも瞬間的にわかるはずだが、すべてのBMWアルピナは、
1. 内外装ともにカッコよくて素敵な感じである。
2. 何事においてもとにかく上質である。
3. そこらへんの大衆が乗っているのとはひと味違う車である。
という存在なのだ。
そして先代BMW 3シリーズ(F30型)をベースとするディーゼルターボエンジン搭載モデルである「D3ビターボ」は、前述4の「エココンシャスな自分でありたい。または燃料費を低減させたい」という欲求を、ピュアEVほどではないかもしれないが、ある程度満たしてくれる1台でもある。
先代D3ビターボに搭載される3L直6ディーゼルターボエンジンは最高出力こそ350psに過ぎないが、最大トルクはなんと700N・m。鬼のような極太トルクである。しかし、それでいてJC08モード燃費は17.0km/L。その性能から考えれば「かなりの低燃費」と評していいだろう。
そんな先代BMWアルピナ D3リムジン ビターボの中古車価格は、総額460万~700万円といったところ。日産 アリアとはずいぶんキャラが違う車ではあるが、アリアが買えなかった悔しさを吹き飛ばしてくれるというか、おそらくはほぼ完全に忘れさせてくれるはずの、素晴らしく甘美なジャーマン・スポーツセダンである。
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BMWアルピナ D3(F30型)× 全国代替案5|あえて内燃機関に回帰して現行型ホンダ シビック タイプRを買う
→予算目安:総額600万~700万円
日産 アリアの代替案としては、他にもスバル ソルテラやテスラ モデルYなどのピュアEVが考えられる。だが、アリアが買えなくなったから他のピュアEVを買うという選択には、「北海道旅行に行けなくなったから、とりあえずその手前の青森県に行きます」的な面白くなさ、あるいは盛り上がりのなさが付きまとう。
いや車選びというのは「面白さ」や「盛り上がり」で行うべきものではないのかもしれない。だが、相手は軽とかの実用車ではなく「最新世代のしゃれた電気自動車」であり、言ってみれば嗜好品である。そういった嗜好品を買うにあたって「面白くない」「盛り上がりに欠ける」というのは、いささか大問題だと思うのだ。
であるならば……ピュアEVを買うのはいったん後回しにして、ここはひとつ人生最後のタイミングとして「地上最高のガソリンエンジン搭載車」を購入し、それをもうしばらくの間、存分に楽しみ尽くしてみる――というのはどうだろうか?
日産 アリアをきっかけにEVに乗り替えるつもり満々だったかもしれないが、まぁEVは今後、いつでも乗れる。1回分先送りしたところで大局的に見れば、自分の人生に対するさほどの影響はない。
だが「地上最高のガソリンエンジン車」は、うかうかしていると10年後にはいろいろな意味で乗れない、または乗りづらくなっている可能性もある。だからこそ今とりあえず、アリアの受注停止をひとつの奇貨として「最高のエンジン車」を味わうのだ。
「最高のエンジン車」といっても候補はフェラーリからBMW M3/M4、あるいは往年のV6アルファロメオなど様々あるわけだが、日産 アリアを買う場合と近い年式、近い予算感でイケる最高のエンジン車は、たぶんこれだろう。
現行型ホンダ シビック タイプRである。
車好きである諸氏に対して、今さら多くの説明は必要あるまい。現行型シビックをベースに作られた最新世代の「タイプR」だ。
鬼神のごとき鋭い吹け上がりを特徴とする2L直4直噴ターボエンジンは最高出力330ps/最大トルク420N・m。緻密に設定されたECUのマッピングなどにより、ペダル開度に対するレスポンスは神レベルであり、四輪独立電子制御ダンパー「アダプティブ・ダンパー・システム」がロール/ピッチだけでなくバネ下加速度も加えた制御を行うことで、これまた鬼神のごときコーナリングが可能となるスーパーなガソリンエンジン車だ。
新車価格は499万7300円であったものの、あっという間に完売した関係で、ふざけた転売ヤーが1500万円ぐらいで中古車を販売していた時期もあった。だが最近は転売ヤーもどこかへ消えたようで、総額600万~700万円という常識的なプライスにて、走行数十kmから数百kmぐらいの物件を買える場合が多い。
ピュアEVの日産 アリアを買いに行った人がシビック タイプRに乗って帰ってきたら、家の人は驚くだろうが、まぁいいではないか。そんな“驚き”こそが、人生の醍醐味なのだから。
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ホンダ シビックタイプR(現行型) × 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。