A4 ▲「なんだか妙にカッコいいアッパーミドルクラスの輸入車」の代表格と言える現行型のアウディA4およびA4アバント。新車や高年式の中古車は高値ですが、現行型の中でも「前期型の中古車」なら、総額200万円ぐらいからなかなかの1台が見つかること、ご存じですか?

前期型も後期型も見た目はおおむね同じ?

「知的かつ都会的」といったイメージをまさに体現している感があるドイツのアウディ A4およびA4アバント。

かなり魅力的なミドルサイズのセダンおよびステーションワゴンですが、魅力的なだけあって、新車で買うとなると、A4セダンの一番安いやつでも車両本体だけで473万円ですし、2021年式あたりの中古車でも、支払総額は430万円を超えます。

しかし、同じ現行型アウディ A4/A4アバントでも「前期型の中古車で良し!」と考えるなら、実は総額230万円ぐらいからけっこう魅力的な物件が普通に見つかるのです。

もちろん前期型と中期型/後期型ではデザインやメカニズムが異なる部分もあるのですが、超大幅に異なっているわけでもありません。具体的には、おおむね下記の程度です。

【2019年1月~2020年9月の通称中期型】
・主力グレードにSライン用だったフロントバンパーとグリル等を採用
・ベースグレードを含め、リアディフューザー一体型のレールパイプを装着
・「Sラインパッケージ」のフロントバンパー等を変更

【2020年10月~の後期型】
・外装デザインを微妙に変更
・パワーユニットがマイルドハイブリッド機構付きに
・センタースクリーンがタッチパネル式に
・運転支援機能のさらなる強化

2020年10月以降の後期型はさすがにいろいろ変わってますが、それでも「超大幅変更!」というほどではありませんし、中期型に至っては「前期型とおおむね同じようなもの」とすら言えるでしょう。

ということで、総額200万円台前半から狙える現行・前期型のアウディ A4/A4アバントは「本当に“買い”なのか?」という点について、さらなる検討をしてみたいと思います。
 

A4▲総額200万円ぐらいから狙える「現行・前期型」のアウディ A4およびA4アバントについて、もろもろ検討してみましょう!

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ボディサイズ・見た目:サイズは現行型BMW 3シリーズより少しだけ大きい

軽く前述したとおり、アウディ A4およびA4アバントは、ドイツのアウディ社が製造販売しているミドルサイズのセダンおよびステーションワゴン。「A4」が4ドアセダンで、「A4アバント」というのがステーションワゴンです。

2016年2月(※アバントは同年4月)に発売された現行型は、「A4」という車名になってからは5代目のモデル。最新のモジュラープラットフォーム「MLB evo」を採用し、従来型以上にシングルフレームグリルの幅を広げたり、ヘッドライトの意匠をよりシャープにするなどして、いわゆるアウディらしい「クールな感じ」がよりいっそう際立つデザインに変わっています。
 

A4▲こちらが現行型アウディ A4の前期型
A4▲こちらはそのステーションワゴン版であるA4アバント
 

前期型のボディサイズは下記のとおりですが、サイズ感をイメージしやすいように「現行型BMW 3シリーズ」のセダンおよびツーリング(ステーションワゴン)の数値も添えてみましょう。

●2016年式アウディ A4 2.0 TFSI スポーツ
全長:4735mm × 全幅:1840mm × 全高:1410mm

■2019年式BMW 320i Mスポーツ
全長:4715mm × 全幅:1825mm × 全高:1430mm

●2016年式アウディ A4アバント2.0 TFSI スポーツ
全長4735mm × 全幅1840mm × 全高1435mm

■2019年式BMW 320iツーリング Mスポーツ
全長:4715mm × 全幅:1825mm × 全高:1460mm

比較的小ぶりに見えるかもしれない現行型アウディ A4およびA4アバントですが、実際には「現行型BMW 3シリーズよりも少々長くて幅広い」という寸法です。しかし、全高は3シリーズよりもちょい低いため、いわゆるスポーティなイメージが際立つフォルムになっています。

2019年1月の仕様変更時にバンバーの形状を変えたことで全長は20mm長くなり、2020年10月以降の後期型でもさらに全長が5mm長くなり、車幅も5mm広くなってはいます。とはいえ、大局的に見れば「前期型も中期/後期型も、ボディサイズはだいたい同じぐらい」と言っていいでしょう。
 

A4▲現行アウディ A4前期型の運転席まわりはおおむねこのような世界観。写真は左ハンドルの本国仕様で、Sラインパッケージに相当するオプション装着車
 

インテリアデザインは、A6など上級モデル同様の「ラップアラウンドデザイン」を現行・前期型から採用し、エアコン吹き出し口とダッシュボードを帯状に結んだデザインにするなどして、かなりクールなイメージに仕上がっています。

また、フルデジタルメーターである「アウディバーチャルコックピット」がオプション設定されたことも、現行型A4およびA4アバントのインテリアの雰囲気を一変させた大きな要因です。

中期型ではインテリアデザインに大きな変更点はありませんが、後期型はダッシュボード中央のディスプレイが8.3インチから10.1インチに大型化され、さらにタッチ式ユーザーインターフェイスになりましたので、ここについては正直ちょっとモヤモヤするかもしれません。

とはいえそんな後期型も、エクステリアデザインは「前後にブリスターフェンダーを採用してイメージを大幅に刷新!」といわれているものの、実際は左右合わせて5mm拡大されているだけですので、それほど大きな違いは感じられないはずです。
 

A4▲こちらが2020年10月以降の後期型。フロントマスク周辺は確かに少々変わった印象を受けるが、ブリスターフェンダーうんぬんはちょっとよくわからないかも?
 

エンジンタイプ・走行性能:190psのFF車でも力感は十分。素早い7速DCTも好印象

現行・前期型のアウディ A4およびA4アバントに搭載されたパワーユニットは、当初2種類の2L 直4ガソリンターボエンジンで、途中から1.4L 直4のダウンサイジングターボエンジンも追加されました。

FF車に搭載されるミラーサイクルの2L 直4ターボは最高出力190psで、4WD車に搭載されるのは同252psのハイチューン版。2016年10月に追加された「1.4 TFSI」系に搭載されるのは同150psの1.4L 直4ガソリンターボです。

トランスミッションは、いずれのエンジンにも7速DCT(アウディ流の呼称は7速Sトロニック)が組み合わされました。

FF車の2L ターボエンジンに採用された「ミラーサイクル」という技術は、エコカーにしばしば使われるもの。そのため「燃費が良い代わりにやや非力……」みたいなイメージもあるのですが、A4 2.0 TFSIに搭載されるそれは心配ご無用。2000rpm以下の常用域でも十分にトルクフルで、2000rpmを超えるとかなりパワフルにも感じられます。

また、先代のA4はトランスミッションにCVTの「マルチトロニック」を使っていたのですが、現行型からはデュアルクラッチ式の「7速Sトロニック」に変更されたというのも重要な変更点です。
 

A4▲新世代プラットフォームの採用に加え、CVTから7速DCTに変更されたこともあって、心地よいダイレクト感と快適性、俊敏性等はセダンもステーションワゴンも従来型を大きく超えている

そして最高出力252psの2L 直4ターボを搭載する4WD車は、端的に言って「……速い!」というニュアンス。まぁ0-100km/h加速が5.8秒という、ファミリーセダンとしては過剰なほどの性能を誇る1台ですので当然かもしれませんが、このエンジンの最高出力をマークする5000~6000rpmを超えてもさらにグングンと、しかしあくまでスムーズに回っていく様には「……驚異的!」という言葉がふさわしいでしょう。

2020年10月以降の後期型では前述のとおり、最高出力150psおよび249psの2L 直4ガソリンターボエンジンに、ベルト駆動式オルタネータースターターと12Vのリチウムイオンバッテリーを用いたマイルドハイブリッドシステムが組み合わされました。

こちらは当然ながら素晴らしいユニットではあるのですが、マイルドハイブリッドといっても12Vの簡易版で、どちらかといえば燃費性能と「街中での洗練された身のこなし」に大きく寄与しているパワーユニットです。そのため、動力性能そのものに関しては「前期型でもフツーに十分以上」と断言して構わないでしょう。
 

 

機能・安全性能:基本的な先進安全装備は前期型ベースグレードでも標準装備

現行前期型アウディ A4およびA4アバントのグレードは「1.4 TFSI」「1.4 TFSI Sport」「2.0 TFSI」「2.0 TFSI Quattro」に大別されます。それぞれの装備や安全性能の差異は、おおむね下記のとおりです。

【1.4 TFSI】
・ホイール径は16インチ(※オプションで17インチも装着可能)
・シートヒーターはオプション
・リアビューカメラはオプション
・アダプティブクルーズコントロール(ACC)は設定なし

【1.4 TFSI Sport】
・スポーツバンパーとスポーツサスペンションを装着
・フロントスポーツシート採用
・ホイール径は17インチ
・シートヒーターは標準
・ACCは設定なし
・アウディパーキングシステムは標準

【2.0 TFSI】
・ハイビームアシストは標準
・ホイール径は16インチ(※オプションで17インチも装着可能)
・「アウディドライブセレクト」は標準
・ACCは標準
・「アウディアクティブレーンアシスト」は標準

【2.0 TFSI Sport】
・ホイール径は17インチ

上記の他、「Sラインパッケージ装着車」には主に下記の専用装備が追加されています。

・Sラインバンパー
・18インチの5スポークアルミホイール
・スポーツサスペンション
・スポーツシート
・LEDヘッドライト
・その他もろもろ……

現行型A4で採用され話題となった「バーチャルコックピット」は、前期型の全グレードで選択可能だった当時7万円のオプション装備。またその他にも様々なパッケージオプションが設定されていたため、実際の市場にある現行・前期型アウディ A4/A4アバントの装備内容は多種多様です。
 

A4▲12.3インチの液晶を使ったフルデジタルメーター「バーチャルコックピット」は2017年当時7万円のメーカーオプション。これを装着している中古車は多数流通している
 

A4セダンのオススメ:手頃な予算で狙うなら「2.0 TFSI」、怒涛の走りを求めるなら「2.0 TFSI クワトロ」

現行型アウディ A4全体の中古車価格は総額170万~630万円といったところですが、その中で「できるだけ手頃な予算で、しかしなるべくいいモノを入手したい」と思うなら、狙うべきは「2016~208年式の2.0 TFSI」でしょう。最高出力190psの2L 直4ガソリンターボを搭載するFF車です。
 

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アウディ A4(現行・前期型) × 「2.0 TFSI」
A4▲190psの2L直4ターボ+FFレイアウトとなる「2.0 TFSI」

1.4Lのダウンサイジングターボエンジンを搭載する「1.4 TFSI」は若干ながら装備レベルに寂しい部分もあるのですが、「2.0 TFSI」であればあらかたの装備は最初から付いており、高速道路で威力を発揮するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)も標準装備。

これの走行距離4万km台までの物件を総額200万~260万円あたりのレンジで見つければ、購入後の満足感はかなり高くなるはず。そして「マトリクスLEDヘッドライトパッケージ」や「バーチャルコックピット」が装着されているものであれば、満足度はさらにアップするでしょう。

190psの「2.0 TFSI」でも動力性能に不満を覚えることはないと思いますが、「それでも自分は怒涛の走りを堪能したい!」と思っている人も少なくないかもしれません。そんな場合のオススメは「2016~208年式の2.0 TFSI クワトロ」ということになります。最高出力252psの強力な2L 直4ターボを搭載する4WD車です。
 

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アウディ A4(現行・前期型) × 「2.0 TFSI クワトロ」
A4▲アウディ得意のフルタイム 4WD機構「クワトロシステム」に最高出力252psの強力な2L 直4ターボエンジンを組み合わせる「2.0 TFSI クワトロ」

FFの「2.0 TFSI」よりも流通量は少なめとなりますが、総額220万~260万円付近で「2.0 TFSI クワトロ」の走行距離4万km台までの物件を、同340万~360万円あたりで、そのSラインパッケージ装着車を見つけることができます。

「鬼のように速いスポーツ4WD」を探している人には、うってつけの選択肢と言えるでしょう
 

 

A4アバントのオススメ:好バランスな選択肢は「1.4 TFSI スポーツ」

アウディ A4の場合はセダンよりもアバント(ステーションワゴン)の方がやや人気が高いため、流通量もアバントの方が豊富。「セダン以上に吟味と取捨選択がやりやすい車」だと言えるでしょう。

そんな中で現行・前期型A4アバントのオススメとなるのは、1.4Lのダウンサイジングターボエンジンを搭載して途中から追加された「1.4 TFSI スポーツ」です。

これの走行距離2万km台から3万km台の物件を、総額270万~330万円あたりのレンジで見つけてみるのが、総合的に見ればかなり好バランスな選択肢となりそうです。
 

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アウディ A4アバント(現行・前期型) × 「1.4 TFSI スポーツ」
A4▲2016年10月に追加された「アバント1.4 TFSI スポーツ」。最高出力150psのダウンサイジングターボエンジンを搭載するが、その力感にはまったく不満なし

2L ターボを搭載する「2.0 TFSI」でもいいのですが、異様になめらかな1.4L ターボエンジンは、長距離を走ることが多いと想定されるステーションワゴンにはぴったりで、1.4Lだからといって非力さを感じることはまったくないはず。

そして全体として軽量であるため動きもしなやかで、サスペンションは程よく引き締まっているのに、乗り心地はきわめて良好。

さらにパッケージオプションも充実している中古車と巡り合えたなら、総額300万円前後で狙える輸入ステーションワゴンの中ではトップレベルの快適性を味わえることでしょう。

以上のとおり、現行前期型のアウディ A4およびA4アバントは、「総額200万円ぐらいから300万円ぐらい」というきわめて現実的な予算であっても、後期型にさほど大きくは劣らない諸性能とビジュアルを手に入れることができるという、なかなかナイスな選択肢。

「ちょっといい感じの車」を探している人は、ぜひ現行前期型のアウディ A4シリーズに注目してみてください。
 

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文/伊達軍曹 写真/アウディ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。