西川淳の「SUV嫌いに効くクスリをください」 ジープ グランドチェロキーLの巻
カテゴリー: 特選車
タグ: ジープ / SUV / 4WD / グランドチェロキーL / EDGEが効いている / 西川淳 / c!
2022/04/06
SUVの本家本流、そのすべてがアメリカンSUVらしい……
正直に言ってジープの中でもラングラーだけはSUV嫌いの枠を超えた永遠のアイドルだ。否、SUVなどではなかった。クロスオーバー系のSUVカテゴリーが生まれる前から存在した車が原点だからだ。“ジープ”の味わいをとどめたスタイルと性能が、「SUVなどと気安く呼んでくれるなよ」とアピールしているようでなんとも男らしい。ジムニーと同様、一度は買ってみたいクロカンだ。
一方で、ジープブランドの高級モデル、グランドチェロキーはというと、こちらはチェロキーと並びSUVの本家本流というべき存在で、10年ぶりに行われた今回のフルモデルチェンジでは、そのプライドがスタイルにはっきりと現れた。古き良き時代のアメリカンSUVをほうふつとさせるデザインで、実際、SUVの元祖というべき“ワゴニア”がデザインモチーフとなっている。逆スラントの立派な顔立ちからは写真で見てもすでに威風堂々の貫禄さえ漂っていた。ちなみにワゴニアブランドも復活しており、こちらはワンランク上のサイズ、エスカレード&ナビゲータークラスのフルサイズSUVである。
新型で最大のポイントは、そのサイズだ。3列シートのマルチパッセンジャーSUVは今、ミニバンに代わる人気のファミリーカーカテゴリーとなっているが、ジープもそこに目を付けた。全長5.2mのグランドチェロキーLを新たにラインナップしたのだ。
日本仕様としてまずはそのLのみ、「リミテッド」(7人乗り)と「サミットリザーブ」(6人乗り)を導入した。パワートレーンは今のところ1種類のみ。3.6L V6+8AT+4WDで、本国に設定のあるV8 HEMIやプラグインハイブリッドの導入は見送られている。
発表写真をネットで見て「ワゴニアみたいでカッコいい」と思っていたから、大いに期待して実物と向かい合う。大きくなったという情報を意識しすぎていたからか、実物を見てもかえってあまり驚かなかった。きっと復活したワゴニアと混同してしまっていたのだ。当然ながらそこまではデカくない。グラチェロサイズにちゃんと収まっている。
Lだけに確かに長い。けれどもマスクが低く幅広いので威圧感がない。水平基調のため、スマートにさえ見える。インテリアの高級感も期待していたほどではなかった。当たり前だけれど、イマドキの高級アメ車レベルだ。
アルファ ロメオFR系と同じジョルジョプラットフォームを採用、と事前に聞いていたので、ひょっとして脱アメリカンな走り? とさえ期待していた。ところが、乗り味はまさにグランドチェロキー、アメリカンSUVそのもの。安堵と期待外れがミックスする複雑な心境に。
それよりも、パワートレインの古さが乗り味に少々ネガな印象を与えてしまっている。微妙なアクセルコントロールが難しく、全体的に制御も荒っぽく感じた。駐車場からだだっ広いアメリカンな環境で乗るならともかく、微速域でのドライブに慎重さを求められる日本の社会環境ではちょっと乗りづらいように思う。
ライドフィールのおうようさもまたアメリカンの典型だった。以前に比べてボディ骨格こそ強くなってはいるけれど、そのぶん下半身の震えも正直に伝わって、タッパの大きなタイヤの存在を忠実に感じてしまう。そう、SUV特有のライドフィールだ。
残念ながら、新型グランドチェロキーLにはまるで食指が動かなかった。いっそワゴニアなら、と思ってしまう。これをグレードダウンしたスタイルで、チェロキーXJ(大ヒットした第2世代、SUVブーム拡大のキープレーヤーだった)のようにもっとアメカジなモデルが登場してくれたなら。期待してみようじゃないか。
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ジープ グランドチェロキーL× 全国自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。