現行型と先代、中古車として買うなら「どっちのゴルフ」がおトクなのか、よ~く考えてみよう
2022/03/29
▲2021年6月に登場した現行型の中古車流通量もそれなりに増えてきた今、フォルクスワーゲン ゴルフの中古車を買うならやはり現行型がオススメなのか、それとも意外と先代の方が好バランスなのか? 様々な角度から検討してみることにしましょう!(写真は先代フォルクスワーゲン ゴルフ)流通量が増えてきた現行型の存在が気になるところだが?
最近は「実用車の鑑(かがみ)」と呼ぶには大きく・豪華になってしまったきらいはありますが、それでも「5ドアハッチバックの世界的ベンチマーク」であることは間違いない、ドイツのフォルクスワーゲン ゴルフ。そんなゴルフは2021年6月、8代目の通称ゴルフ8へとフルモデルチェンジされました。
そしてモデルチェンジからまだ丸1年もたっていませんが、中古車市場ではそれなりの数のゴルフ8が流通しています。
となると、さっそくゴルフ8の中古車を狙ってみたくなるわけですが、市場には前身である「ゴルフ7(7代目フォルクスワーゲン ゴルフ)」の中古車も流通しているというか、むしろ中古車市場ではそちらがメインになっています。
それなりの流通が始まった最新ゴルフ8と、豊富に流通している1コ前のゴルフ7とでは、“中古車的”にはどちらがより狙い目となるのでしょうか?
以下、様々な角度から検討してみることにしましょう。
▲こちらが2021年6月に上陸した現行型、8代目のフォルクスワーゲン ゴルフ
▲こちらは2013年から2021年5月まで販売された先代、7代目フォルクスワーゲン ゴルフ現行型の中古車流通量はまだ十分ではない
まずはそれぞれの「流通量」を比較してみます。性能うんぬんを語る前に、中古車の場合は「まずは流通していること」が、購入するための必須条件だからです。
で、結論から言いますと2022年3月下旬現在、ゴルフ7の流通量が1138台であるのに対し、ゴルフ8はわずか47台。……全国47台でも探せないことはありませんが、いろいろ見比べるうえではちょっと厳しい数字です。
さらに、この47台というのは「世代全体」の数字であって、グレード別に考えると、ガソリンエンジンの中心的グレードである「eTSI アクティブ」はわずか13台で、ディーゼルエンジンの「TDI アクティブ」は0台です。
……流通量の多寡という点に関しては「先代ゴルフ7の圧勝」と、早々に結論づけてOKでしょう。
▲「ない」というわけでは決してない現行型ゴルフの中古車だが、「数多くの類似条件車を見比べながら選べる」というほどの流通量ではないのが現状だ▼検索条件
フォルクスワーゲン ゴルフ7現行型の中古車価格はまだ「新車より若干安い程度」
お次、とっても重要な「価格」に関してはどうでしょうか?
まず先代ゴルフ7の方は、世代全体としては「総額80万~550万円」といったところで、前期型の一般的なグレードに限った場合の相場は総額80万~190万円とかなりお手頃。2017年5月以降の後期型でも、「R」や「GTI」ではない一般的なグレードであれば総額140万~330万円ぐらいと、まずまずお手頃です。
一方の現行ゴルフ8は、例えば新車の乗り出し価格(支払総額)が約400万円となる「eTSIスタイル」の中古車支払総額が、約380万円~といったところ。……新車よりも若干は安いのですが、「このぐらいの差なら自分は新車をオーダーするよ」と考える人も多いでしょう。
よって、この項目に関しても「先代ゴルフ7の圧勝」ということになりました。
▲こちらは先代ゴルフ7。安価なものであれば総額80万円程度から、程よい塩梅のものでも総額140万円ぐらいから見つけることができるとはいえ「価格と品質のバランス」はどうなんだ?
しかし、物事というのは「安けりゃいい」というわけでもありません。場合によっては高いモノをあえて選びたいことだってありますし、一番大切なのは「品質と価格のバランスである」ということになるのでしょう。
そのあたり、どうなんでしょうか?
まず現行世代のゴルフ8は、新しいだけあって何かと素晴らしい品質であることは間違いありません。
ガソリンの方のパワーユニットは1Lまたは1.5Lのターボにマイルドハイブリッドシステムを付加し、力強さと燃費の良さを両立。そしてインテリアは「Degital Cockpit Pro」というデジタルメータークラスターとタッチ式のインフォテイメントディスプレイを全車に採用したことで、グッと現代的になりました。
そして様々な運転支援システムも標準で装備され、最適な配光によってハイビームが利用できるLEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT」もオプションとして装備可能です。
▲完全デジタル化された現行ゴルフ8の運転席まわり。使いやすいかどうかは別として、現代的にシュッとしてるイメージになったことは確かだ
▲フロントカメラで対向車や先行車を検知するゴルフ8のLEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT」とはいえ、先代ゴルフ7の方も、実はあんまり負けていません。
上級グレードである「TSIハイライン」に搭載された1.4L直噴ターボエンジンは、マイルドハイブリッドなしでも十分以上にパワフルかつまあまあ低燃費で、ベーシックな「TSIトレンドライン」と「TSIコンフォートライン」に搭載された1.2L直噴ターボエンジンも、その排気量であることが信じられないぐらいパワフルです。そして燃費も良好。
インテリアは、確かに現行ゴルフ8の方がモダンでカッコいいというのはあるのですが、多くの操作がタッチ式になったため、物理スイッチで様々なON/OFFや調整ができたゴルフ7の方が実は断然便利だった……という声も多いのが実情です。
▲古典的な「物理スイッチ」が中心であるため、走行中に手元を凝視しないでも様々な操作が行えるゴルフ7の運転席まわりそして「走り」に関しては、確かにゴルフ8は優秀です。1.5Lターボの方であれば3気筒エンジンでも何ら不足はありませんし、ビシッと真っすぐ走ります。コーナリング性能もかなり高いと言えます。
しかし、「ビシッと真っすぐ走る。コーナリング性能もかなり高い」というのはゴルフ8の専売特許ではなく、歴代のゴルフにだいたい共通しているものです。その中でも先代ゴルフ7はそのあたりの性能がかなり高かったので、「ゴルフ8と7の走行性能は、まぁだいたい同じぐらいである」と、雑に言うこともできるのです。
▲厳密な比較テストをする場合はさておき、普通に公道で走らせる分には「どっちも素晴らしい」という意味で「現行型とだいたい同じ」と言えるのが、ゴルフ7の各種走行性能となると、ここでの結論は「ゴルフ7の圧勝」ということにはさすがになりませんが、「引き分け=両者とも品質と価格のバランスは良好である」ということになるでしょう。
ただ、「両者のバランスが同じぐらい良好であるなら、車両価格がより安いゴルフ7の中古車の方がおトクじゃないか!」という考え方もあるはずです。そして筆者個人は、どちらかというとそのように考えるタイプの人間です。
狙い目はズバリ「TSIコンフォートライン」
以上の検討結果をまとめると、下記のとおりとなります。
・流通量:先代ゴルフ7の圧勝。探しやすいし、比較検討しやすい。
・価格:先代ゴルフ7の圧勝。ゴルフ8はまだ割安感がほとんどない。
・品質と価格のバランス:引き分け。ただ、安い分だけゴルフ7がやや優勢。
……こうなるともう(中古車としては)現行ゴルフ8を選ぶ意味はほとんどなく、「中古車として買うなら断然ゴルフ7!」というのが結論となります。
それを踏まえたうえで、「ではどんなゴルフ7を探せばいいのか?」という部分について考えてみましょう。
●なるべく安価に買いたいなら?
→前期型TSIコンフォートライン(予算目安:総額90万~140万円)
前期型TSIコンフォートラインは、2013年4月から2017年4月までの1.2L直噴ターボエンジンを搭載したグレード。最高出力105psの1.2Lエンジンでも、動力性能にはまったく不満を感じないはずです。
同じエンジンを積んだ「TSIトレンドライン」というベースグレードもあるのですが、より上級なTSIコンフォートラインであればアダプティブクルーズコントロールやリアビューカメラ、16インチアルミホイール、フロントフォグランプなどが標準装備ですので、できればこちらを選んだ方がいいでしょう。
もしもベースグレードであるTSIトレンドラインを買う場合は、オプションとしてのアダプティブクルーズコントロールやリアビューカメラが付いているかどうかをチェックしてください。
▼検索条件
フォルクスワーゲン ゴルフ7×2013年4月~2017年4月生産モデル×TSIコンフォートライン●程よい予算で「いいモノ」を買いたいなら?
→後期型TSIコンフォートライン(予算目安:総額160万~200万円)
▲同じTSIコンフォートラインでも、様々な改良が加えられた2017年5月以降の後期型(通称ゴルフ7.5)は、前期型より若干高くはなるが、それでも強くオススメしたい選択肢格安とまでは言わないが「程よく手頃な予算」で、しかしなるべく良いモノが欲しいという場合には、俗に「ゴルフ7.5」と呼ばれている2017年5月以降の後期型がいいでしょう。その中でも、1.2Lターボエンジンを搭載した「TSIコンフォートライン」または限定車の「TSIコンフォートライン テックエディション」は、総額100万円台の予算で、かなりいい感じの個体を探すことができます。
車好きの間で「7.5」と呼ばれている世代は、12.3インチ大型ディスプレイのデジタルメータークラスター「Active Info Display」を採用するとともに、純正インフォテインメントシステムのスクリーンも大型化。ナビゲーションシステムの「Discover Pro」は8インチから9.2インチへ拡大され、同時に全面フラットなタッチスクリーンへ変更されています。
またDiscover Proには、フォルクスワーゲンでは初採用となった「ジェスチャーコントロール機能」も加わっっています。これはスクリーンをタッチすることなく、手を左右に動かすだけでホームメニューの切り替えやラジオの選局などができるというものです。
さらに、渋滞時追従支援システム「Traffic Assist」も一部モデルを除いて標準装備となり、全車標準装備となるプリクラッシュブレーキシステム「Front Assist」には、新たに歩行者検知機能が追加されました。
外観ではフロントバンパーのデザインが変更され、フェンダーの奥まで切れ込んだ新形状のヘッドライトも採用。そして一部モデルを除いてヘッドライトはLED化されています。
現行型ゴルフ8を見た後では正直ちょっと古さも感じさせるゴルフ7の内外装デザインですが、この「ゴルフ7.5」であれば、いわゆる古くささを感じることはほとんどないでしょう。
▼検索条件
フォルクスワーゲン ゴルフ7×2017年5月~2021年5月生産モデル×TSIコンフォートライン
▲デジタルメータークラスター「Active Info Display」内にはナビ画面を表示させることもできる
▲手を左右に動かすだけでホームメニューの切り替えやラジオの選局などができる「ジェスチャーコントロール機能」
▲通称ゴルフ7.5ではバンパーやヘッドライトのデザインも微妙に変更され、微妙にスポーティなたたずまいに生まれ変わっているその他、もしも総額200万円台後半の予算でも検討範囲内であれば2Lディーゼルターボの「TDI」もオススメですし、よりスポーティに走れるゴルフがお望みであれば「GTI」や「R」といったグレードにも注目すべきです。
ただ、「けっこう手頃な予算でゴルフという名車の真髄を味わいたい」というのであれば、ここで挙げたゴルフ7の前期型および後期型TSIコンフォートラインこそが適任であると確信します。
たったの1.2Lであることが信じられないぐらいの走りを披露するステキなハッチバックで、なおかつお値段もお手頃ですので、ぜひぜひ前向きにチェックしてみてください。
▼検索条件
フォルクスワーゲン ゴルフ7
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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