Q.これまで交渉していた担当者が急に退職
      交渉の継続はどうなるの?

気に入った中古車を見つけて、購入を前提に何度か交渉をしていました。追加オプションや値引きなどのサービスもある程度まで引き出しに成功。いよいよ契約しようと販売店に行ったところ、担当者が辞めていて、新担当者が現れました

新担当者いわく「サービスの件は話を聞いていないので、対応できない」とのこと。この言った言わないの話、どうにかなりませんか?

A.メモでもいいので証拠があれば有利になります

基本的には、前担当者が社員として約束をしたことならば、会社側はその約束を守る義務があります。常識のある会社なら、頭ごなしに客側の申し出を却下することはないでしょう。

ただし、前担当者が営業成績を上げるために独断で過剰なサービスを約束をしているケースだと少しややこしいかもしれません。販売店としては本来あり得ないサービス内容を客側から提示された場合、すぐに応じるわけにはいかないでしょう。前担当者の独断で、きちんとした引き継ぎもされていないと考えられます。

本来であれば、販売店は責任をもって前担当者と連絡を取り、事実関係を確認する義務があります。ただ、円満退社でなければそれも難しいかもしれません。そのようなケースでは、販売店と客側は新たに交渉しなおすことになるでしょう。

そのときに、前担当者と約束をしたことを証明できる証拠があれば、かなり主張が通りやすくなります。レコーダーなどで録音した音声データがあれば完璧ですが、そこまで用意していることはまれだと思われます。現実的な話だと、日記に「その日、販売店でこんな交渉をした」と書いているだけでもかなり有利な証拠になります。特に、バインダー式ではなく、綴じ込み式であとから日付の入れ替えができない日記帳なら証拠力も高いでしょう。ちなみに、メモ書きでも、内容と共に日付や時間、場所などが書いてあると証拠力があります。

契約時や交渉時、言った言わないの水掛け論をなくすためには、サービスなどの特約を結んだときに見積書や契約書にその旨を一筆書いてもらうことをオススメします。

法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

使用者責任(しようしゃせきにん)
民法第715条にある使用者等の責任のこと。ある事業のために他人を使用する者(雇い主など)は、使用される者(雇用されている社員など)がその事業を行う過程で第三者に与えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被使用者の選任やその事業の監督について相当の注意をしていたにもかかわらず、損害が生じたときにはこの限りでない。
証拠力(しょうこりょく)
民事訴訟では、証拠力(証拠となる資格)の制限は特にないが、録音した音声データやメモ、日記、現場写真などは、裁判官の心証(自由心証主義)で諸処力や信用性が判定される。トラブルが発生する前に、その都度作成され内容も真実と思われるものは証拠力が高いと言える。