今週の車ニュース斜め読みはグローバルな話題から。とはいえ、海外と国内のボーダーラインがどんどん曖昧になっていることも実感します。もはや海の向こうだからといって対岸の火事とはいえなさそうです。さて、最初のニュースは、車がハッキング(クラッキング)される恐れから初めて届け出されたリコールの話題です。

テクノロジー

■ハッキングされる恐れで140万台がリコール!?(CNET Japan発|7月22日)

『2人のセキュリティ研究者が、インターネットを介して「Uconnect」搭載車を遠隔攻撃することに成功した。WiredのAndy Greenberg氏がこの車を運転していた。こうした攻撃が可能になったのは、Fiat Chryslerの一部モデルに搭載されているソフトウェアベースのコネクテッドカー向けシステムUconnectに脆弱性があるからだ。Uconnectは、Sprintの通信網を利用して、スマートフォンで自分の車と無線通信することができる。このシステムは、オーナーが車から離れた場所からエンジンを始動したり、GPSで自分の車を追跡したりすることができるほか、盗難防止機能も複数搭載している』

ネットにつながっているPCがハッキングの脅威にさらされているのと同様、車もその脅威から逃れられるものではありません。そのことを警鐘するために、2人の研究者が実際にハッキングして車を遠隔操作してみせたのです。

フィアット・クライスラー・オートモーティブ(FCA)は、この実証を受けて16日にパッチを公開。スマートフォンのようにWi-Fiからダウンロード&インストールするのではなく、車のオーナーが手作業でインストールしなければなりませんでした。

少し混乱を招きそうな雰囲気があった中、24日、FCAは対象となる140万台にリコールを発表しました。車がハッキングされる恐れのある脆弱性を塞ぐために適用される初めてのリコールです。

こういった事態をうけて、プログラムのアップデートがより手軽にできるようになる仕組みが現れたり、セキリュティソフトが現れたりしそうですね。

▲YouTubeでも、ハッキングの模様は公開されています。その反響が大きかったのでしょうか、自己修復から一転してリコールとなりました ▲YouTubeでも、ハッキングの模様は公開されています。その反響が大きかったのでしょうか、自己修復から一転してリコールとなりました

テクノロジー

■呉越同舟 独ブランド3社が地図分野で協力(日本経済新聞|7月22日)

『BMW、アウディ、ダイムラーのドイツ高級車メーカー3社が、通信機器大手ノキア(フィンランド)の地図情報サービス部門を共同買収することが21日、明らかになった。月内に合意し、買収額は25億ユーロ(約3400億円)を超える見通し。欧米メディアが一斉に報じた。3社連合で、高度な自動運転技術の実用化に欠かせないデジタル地図情報サービス技術を取り込む』

BMW、アウディ、メルセデス・ベンツの真のライバルは、自動車メーカーではなくグーグルとなるのかもしれません。グーグルは自動運転車を開発、路上テストを行っていますが、快適に移動するためには、自動運転技術と地図、それにまつわる情報は密接に連携することが重要でしょう。ちなみに、グーグルは自動運転車を普及させることで個人所有の車を減らし、カーシェアリング(必要なときに車が迎えに来る)が中心になる車社会を思い描いています。

そんなグーグルが設計する「グーグル・マップ」を使い続けることは、いわば車の未来への道案内をグーグルに委ねることにもなりかねないのでしょう。ライバル関係にあるBMW、アウディ、メルセデス・ベンツが協力しながら独自の地図を用意することにしたのは当然のことのように思えます。

自動運転車の覇権はITメーカーが握るのか、それとも自動車メーカーが握るのか、地図の問題はその前哨戦になるのかもしれません。もちろん欧州の問題ではなく、日本を含むグローバルな話題です。

▲直近の話題としてナビを、グーグルの「Android Auto」、アップルの「CarPlay」どちらに、もしくは両方に対応されるのかといった選択肢があります。そして、近々そのどちらも選ばないメーカーが現れるかもしれません ▲直近の話題としてナビを、グーグルの「Android Auto」、アップルの「CarPlay」どちらに、もしくは両方に対応されるのかといった選択肢があります。そして、近々そのどちらも選ばないメーカーが現れるかもしれません

テクノロジー

■自動的にハイビームになる! (日刊工業新聞|7月21日)

『三菱自動車はSUV「パジェロ」に、同社として初めて「オートマチックハイビーム」を採用するなど一部改良して発売した。夜間の視認性を向上させたほか、内装の質感向上や新外色の追加を行った。消費税込み価格は292万6800円から』

道交法上は、ヘッドライト点灯はハイビームがデフォルトだってご存じですよね。必要なときにだけロービームを選ぶのが法規上、正しいのです。しかし、車の交通量が圧倒的に増えてしまった現在において、実情にマッチしているかといえばノーでしょう。

ハイビームにしても、すぐに対向車が現れてロービームに……。そんなジレンマを解決しているシステムがパジェロに搭載されたわけです。どれほど感度よく適切に切り替えてくれるのか気になるところですが、実用性が高ければ、ぜひ普及してほしいものです。

▲オートマチックハイビームが新たに採用された三菱 パジェロ ▲オートマチックハイビームが新たに採用された三菱 パジェロ

マーケット

■今年は輸入車が熱い!クリーンディーゼルが鍵を握る(産経ニュース|7月22日)

『日本自動車輸入組合の庄司茂理事長(フォルクスワーゲングループジャパン社長)は22日の記者会見で、2015年の輸入車(日本メーカー車除く)販売は「30万台超えが視野に入ってきた」と述べた。各社の新車投入やクリーンディーゼル車の普及で、18年ぶりの大台突破を目指す』

「30万台超え」を牽引するのがクリーンディーゼルです。燃費が良いだけでなく、厚いトルクでパワフルな走りをしてくれるクリーンディーゼルが、かつての悪しきディーゼルイメージを払拭。ドライバーの厚い支持を集めそうです。

メルセデス・ベンツは直4ディーゼル「BlueTEC」エンジンを日本に今春から初導入。7月にはBMWが5シリーズのディーゼルエンジン車を値下げ。60万円近く下がったグレードもあります。

フォルクスワーゲンは新生パサートにディーゼルをラインナップすると発表しており、ボルボは投入した新ディーゼルエンジン搭載車を今後中軸に据えると公言しています。ジャガーも日本デビューさせたミドルセダンの「XE」にもディーゼルを追加するとしています。

すでに、クリーンディーゼル車が新車販売に占める割合が6月にはついに10%を超えたとのこと。あくまで単月の結果とはいえ、この傾向はますます加速しそうです。

▲こちらは、2.2L直4「BlueTEC」エンジンを積んだCLS。コモンレール直噴システムや2ステージ・ターボチャージャーによって最大トルク400N・mを発生 ▲こちらは、2.2L直4「BlueTEC」エンジンを積んだCLS。コモンレール直噴システムや2ステージ・ターボチャージャーによって最大トルク400N・mを発生

まとめ

いよいよ夏本番。熱い日が続きますが、車にまつわるニュースもますますホットになってきています。とりわけクリーンディーゼル搭載車の話題は今後も過熱間違いありません。このコーナーでも積極的に採りあげていきたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

text/ブンタ
photo/フィアット・クライスラー・オートモーティブ、BMW Japan、三菱自動車、graaab