白いBMW Z4で、思い出をシェアリングしています
2018/08/17
車は単なる移動の道具ではなく、大切な人たちとの時間や自分の可能性を広げ、人生をより豊かにしてくれるもの。車の数だけ、車を囲むオーナーのドラマも存在する。この連載では、そんなオーナーたちが過ごす愛車との時間をご紹介。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
乗るためではなく「シェアするため」に買ったBMW Z4
何をもって「普通」とするかはさておき、まぁ普通、車というのは実用のためもしくは趣味のため、あるいは仕事のために購入するものだろう。
だが東京都の会社員、佐野寿樹さんが今から3年前にBMW Z4を購入した理由は「シェアするため」だった。や、もう少し正確に言うなら「自分のビジネスセンスを検証するため」だった。
会社員でありつつも「自分自身のビジネス」に興味を持っていた佐野さんは3年前、たまたま自宅で見ていた経済ニュース番組で、某IT系大企業がまったく新しいタイプの個人間カーシェアリングサービスを開始したことを知った。
「これは面白いことになるかも?」と直観した佐野さんはその晩、すかさず「ひとりマーケター」としてひとりミーティングを開催した。
自分が住んでいるエリアでは、どんな車種がすでにそのサービスに登録されているのか? また逆に、されていない車種はどれなのか? ユーザーがそのサービスに求めているモノってそもそも何なのか……等々を、夜を徹して調査した。そして翌々日には実際にそのサービスを利用してみた。
結果、以下の仮説が立てられた。
「白のBMW Z4なら(たぶん)勝算あり」
さっそくカーセンサーnetで検索したうえで販売店へ行き、2005年式のBMW Z4 2.2iを購入した。ニュース番組を見たのが火曜の晩で、Z4を契約したのは日曜日、わずか5日後のことだった。
仮説は大正解だった。多くの人から、佐野さんの白いBMW Z4 2.2iを「ぜひシェアしたい」という旨のリクエストが送られてきた。
ある人は「結婚式で使いたい」と言い、ある人は「勝負デートをZ4でやらせていただきたい!」と言う。またある人は「結婚記念日をBMWのオープンカーで素敵に過ごしてみたい」と。
もちろん繁盛の裏には、「ひとりマーケター」である佐野さんならではの創意工夫もあった。
プロフィール画面には車だけでなく自分の画像、そして妻・麻弥さんの画像も載せることで「信頼感」をアピールし、料金設定や割引制度なども極力細かく、正確に記載。さらには中国語圏への留学経験を生かし、中国語によるサービス案内も併記したという。
車そのものには特に興味がなく、都心部に住んでいるということもあって「必要なときはレンタカーを借りればいいし」ぐらいに思っていた。実際、自分が買ったBMW Z4のグレード名すら知らなかった佐野さんだ。
だがZ4を買い、それを求める様々な人たちの心に触れ、そして当然ながら自分自身も妻・麻弥さんと一緒にZ4ロードスターに乗っているうちに、佐野さんの中で何かが、少しずつではあるものの、確実に変わっていった。
車という機械が持つ不思議な力に気づかされた3年間
最初は「自分のビジネスセンス」を見極めることを、主たる目的としていた。あとは、決して安くはない都心部の駐車場代と保険料ぐらいをペイできればいいな、と。
だがいつからか、車を通して「誰かの思い出に貢献できること」自体が嬉しくなってきた。
前述の「結婚式で使いたい」と言ったユーザー。「記念日にぜひ」という人。挙げていけばキリがないのだが、この白いBMW Z4がきっかけで誕生したカップルもいる。
佐野さん自身も実は、自分のZ4をシェアしたとあるドライバー氏と懇意になり、その結果としてなんと、その方が経営する会社への転職(!)を果たしている。車は人生を作るのだ、ある意味。
そしてもちろんBMW Z4は、佐野夫妻のステキな日々も作り上げている。
相変わらずぜんぜん車マニアというわけではないので、乗るのはせいぜい週に1回。麻弥さんと2人で近所のショッピングモールまで買い出しに行くか、あるいは残業でちょっと遅くなった麻弥さんを、寿樹さんが会社近くまで迎えに行くか。
2人でZ4に乗るときは必ずルーフを全開にする。麻弥さんは「それって正直ちょっと恥ずかしい」そうだ。
しかし風の音と季節の匂いを感じながら狭いロードスターの車内で2人、まったく他愛のないことを話しながら、でもどこか密接なつながりを感じることができるZ4の車内。そこは、他の移動手段では決して代替できない2人だけの特別な空間になってきていると、夫妻は言う。
どんなクルマと、どんな時間を?
BMW Z4(初代)と、ご縁を繋ぐ時間を。
BMWの2シーターオープンスポーツ Z3の後継車として登場したモデル。ロングノーズと短いリアエンドという特徴的なデザインはZ3と変わらないが、クラシカルな雰囲気から一転してバングルデザインのモダンなボディとなった。エンジンは直6の2.5Lと3Lの2機種で、いずれも5速ATと組み合わされる。
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