マツダ ロードスター▲2021年12月に発表された改良版の新型マツダ ロードスター。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けする

地味だが確実に進化している年次改良

マツダは年次改良をこまめに行って、我々に試乗させてくれる稀有なメーカーである。

車の改良というのは、ランプに油を絶えず加えていつまでも輝きを失わせないのと同じような地道な作業なのだ。デザイナーのように一見すると華やかさはないが、本来の性能をコツコツと高めているエンジニアがいることをこの試乗記で理解していただければ幸いである。

今回は改良モデルの試乗ということで伊豆・修善寺に赴いた。絶景とコーナーの連続が混在した素晴らしいロケーションのエリアだ。

特に伊豆スカイラインは最高である。パワーはなくても速度レンジにかかわらず自動車の挙動を理解できる道だからだ。私の経験では、マツダはサスペンションに自信があるときはこのエリアで試乗会を行う機会が多いように思える。
 

マツダ ロードスター

4代目ロードスター ND型は2015年に登場した。

その当時、発表するかどうかというタイミングで広島ナンバーのND型を試乗したことがある。このときの試乗会で思い出すのが、マニアックなエンジニアの面々だ。

トランスミッションのちょっとした工夫で、ダイレクトで節度ある感触を再現するエンジニア。ディファレンシャル一つにこだわる方の意見も楽しかった。しかし、何よりもマニアックで話が楽しかったのが、開発の梅津さんの話であった。彼はライトウエイトスポーツカーとして必要な乗り味を理解したエンジニアである。

オープンデフ仕様は英国を代表するライトウエイトスポーツカーのMG Bの乗り味に似ていて、ピュアなコントロール性があっていい。

そして、「サスペンションで無理に抑え込むのはどうなのか?」などと話しをしたことがよみがえる。今回試乗したのは、その梅津さんが見えない技術をロードスターにインストールした改良モデルである。
 

横滑り防止システムを基にした新技術

マツダ ロードスター

その新技術とは「キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)」というもので、コーナリング中に後輪の内輪に極微小な制動力をかけてタイヤの浮き上がりを抑制して安定性を増す。

すでに装着されている横滑り防止システムをコントロールして成り立っているため、コストを非常に抑えながら最大の効果を生み出すことができている。

当たり前だと思われていた技術をさらに進化させるほど難しいものはない。エンジニアがサスペンションを十分すぎるほど把握したからこそ、ちょっとした盲点を見つけ出したのである。いかにもマツダらしいアイディアによる技術だ。
 

マツダにとっての「人馬一体」の作り方

さて、実際に試乗してみることにしよう。

ロードスターほど開放感あふれた国産モデルはない。そしてブレーキとシフトフィールは絶品だ。MTに乗って自分なりの走りができることは、ある意味ドライビングで最も幸せな自己実現を感じ取れる瞬間だ。

年次改良されたND型は、繰り返しのタイトなコーナリングでも実にしなやかに旋回する。路面とのコンタクトも抜群だ。

ディファレンシャルの恩恵を100パーセント引き出したコーナリングといっていい。しかも路面とのコンタクトが良好なので、エンジンもとてもスムーズになり軽やかな1.5Lエンジンが成熟したかのように思える。

助手席に乗る人も、嫌な思いを低減できるのではないだろうか。それだけスタビリティが高くなっているということである。
 

ロードスターRF ▲ハードトップのロードスターRFも同時に年次改良が行われ、「キネマティック・ポスチャー・コントロール」が搭載される

さて、私はマツダで最も解せないことは「人馬一体」というフレーズを頻繁に使うことである。

馬乗りの私としては、「人馬一体」とは馬の能力を把握して騎乗者が理性によってコントロールすることであると思う。馬は慌てさせてはいけないし、穏やかな気持ちで動かさなければならない。でなければ危険なのだ。

マツダの場合の「人馬一体」は、馬がコントロールして人を助けるというものである。つまり馬が一体化させており、乗る人は人馬一体感を感じずに乗せられているだけなのだ。

言葉が悪くなってしまうが、馬なりというのがマツダの人馬一体なのである。しかし、理性を持たない鉄の馬は危険である。理性ある人が乗っても情念に突き動かされてしまうこともあるからなおさらなのだ。

様々な状況とシチュエーションでも安全に楽しいドライブをするには、人の理性だけではコントロールできない一つ一つの課題を英知によって克服して完成させるのであろう。

ロードスターの改良版は、確かに地味で分かりづらいかもしれない。しかし、小さな改良が馬なりであろうと人馬一体の感覚をドライバーに養わせていることは事実といえよう。

機械的な理性を感じる技術の一つが「キネマティック・ポスチャー・コントロール」なのである。
 

マツダ ロードスター
文/松本英雄、写真/尾形和美

▼検索条件

マツダ ロードスター(現行型) × 2021年12月以降

▼検索条件

マツダ ロードスターRF(現行型) × 2021年12月以降

【試乗車 諸元・スペック表】
●1.5 RS

型式 5BA-ND5RC 最小回転半径 4.7m
駆動方式 FR 全長×全幅×全高 3.92m×1.74m×1.24m
ドア数 2 ホイールベース 2.31m
ミッション 6MT 前トレッド/後トレッド 1.5m/1.51m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 0.94m×1.43m×1.06m
4WS - 車両重量 1020kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.14m
マニュアルモード -    
標準色

ジェットブラックマイカ、ポリメタルグレーメタリック、ディープクリスタルブルーマイカ、プラチナクォーツメタリック

オプション色

マシーングレープレミアムメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリック、スノーフレイクホワイトパールマイカ

掲載コメント

-

型式 5BA-ND5RC
駆動方式 FR
ドア数 2
ミッション 6MT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ジェットブラックマイカ、ポリメタルグレーメタリック、ディープクリスタルブルーマイカ、プラチナクォーツメタリック
オプション色 マシーングレープレミアムメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリック、スノーフレイクホワイトパールマイカ
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
-
最小回転半径 4.7m
全長×全幅×
全高
3.92m×1.74m×1.24m
ホイール
ベース
2.31m
前トレッド/
後トレッド
1.5m/1.51m
室内(全長×全幅×全高) 0.94m×1.43m×1.06m
車両重量 1020kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.14m
掲載用コメント -
エンジン型式 P5-VP 環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆
種類 直列4気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 40リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 1496cc 燃費(WLTCモード) 16.8km/L
└市街地:12km/L
└郊外:17.7km/L
└高速:19.5km/L
燃費基準達成 -
最高出力 132ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
152(15.5)/4500
エンジン型式 P5-VP
種類 直列4気筒DOHC
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 1496cc
最高出力 132ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
152(15.5)/4500
環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 40リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 16.8km/L
└市街地:12km/L
└郊外: 17.7km/L
└高速: 19.5km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。