※この記事はカーセンサー関東版2001年10号(3月8日)に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです

上質さと重厚感を併せ持つ何にも似ていない個性

  • 日産 シーマ 走り|ニューモデル試乗
  • 日産 シーマ リアスタイル|ニューモデル試乗
↑クラス最強の動力性能と最新技術。その良さは日本で存分に“活きる”(左) ボディ塗装は従来の4コートから、滑らかさや光沢などが増す5コート塗装とした(右)
これほど発売間際までデザインを変更した車はかつてない、と関係者が話してくれただけに、やれることはやったという達成感のようなものをヒシヒシと感じた。

堅い話は抜きにして「シーマ」、いいじゃないか。日本の高級車の価値観を変えた初代シーマから数えて4 代目となる日産のフラッグシップカーは、プリメーラほどではないにしても新型/存在感の強さを静かにアピールしてくる。

まずはスタイルがいい。しかも何にも似ていない個性もある。上質さと重厚感を併せ持つ高級車ならではの雰囲気を漂わせている。

もちろん動力性能にも抜かりはない。クラス最強のパフォーマンスを放つ直噴4.5L V8エンジンは低燃費とクリーンな排気ガスの環境対応でもクラスをリードする。

安全面では操縦安定性、ゾーンボディとは別に、各種“最新お助け機能”を満載している。

高トルクで迫力満点のテールを沈めた加速姿勢

  • 日産 シーマ リアシート|ニューモデル試乗
  • 日産 シーマ インパネ(エクリュ色内装)|ニューモデル試乗
↑後席は旧型に比べ、ニールームを40mm拡大し居住性を向上させた(左) エクリュ色本革仕様。本革シートの一番人気色はこのエクリュ色、約5ケ月の納車待ちとなるそう(右)
動き出しは極めてスムーズだ。V8だかV12だか“モーター”なのか判別できないほど低速に余裕があるトルク特性で、シズシズと滑らかにスタートする。電子制御スロットルは低速域ではアクセルに対してリニアに開けない模様。試しに少しだけ強く3分の1程度までアクセルを踏み込むと、モー然とパワフルになった。低速でリニアにしないのは、飛び出し感を抑えるための策なのだろう。

2000rpmでも40kg-mに迫ろうかという高トルクだから“踏み込めば”簡単にダッシュする。試乗時の3名乗車などお構いなし。といったふうで、初代ほど極端ではないにしろテールをグッと沈めた加速姿勢(自分たちはそうなっているとは気づかないが)は、ほかの試乗車を見ていると迫力満点だ。

ただ、ハンドリングは直進性が意外やルーズ。ニュートラル付近の収まりがいま一つで、細かい修正舵がいる。担当者の話ではステアリング系取り付けの剛性の問題か、試乗車固有の問題かは不明だが、この問題はスグに直るであろう。

では大きく切り込む領域はどうかというと、車のサイズを忘れさせるほどスッとよく曲がるフットワークの良さ。もちろんリアの路面追従性も高いため、あり余るエンジンパフォーマンスでパワープレイ!! は難しい、安定姿勢だ。

ブレーキは1.77tの巨体をモノともせず強力に減速させる。ペダルにヤワな部分はなく、加減速を繰り返しても変化はない頼もしさだ。

最新技術で安全性が拡大し自動操縦も現実に近づく?

  • 日産 シーマ インパネ(カフェラテ色内装)|ニューモデル試乗
  • 日産 シーマ インパネ(ブラック色内装)|ニューモデル試乗
↑カフェラテ色本革仕様。シート地はカフェラテ色のモケット地が標準、本革はオプション設定となる(左) ブラック本革仕様。センタークラスター部には集中コントロールスイッチと液晶モニターを配置する(右)
注目のレーンキープサポートシステムを試す。日本語でいえば直線路車線維持支援装置!! CCD カメラが前方の白線をとらえ、車線中央をキープすべくステアリングを自動制御する。基本は直線だから高速道路に限ると思っていい。65~100km/h内で走行中、路面の傾斜や横風などで車線からはみ出しそうになることを自動的にステア操作して修正、警告音と専用の画面表示で知らせる。わかってはいても自動でステアリング操作されると、気持ちのいいものじゃない。あくまでも支援で自動操縦ではないので勘違いしないように。

さらにミリ波レーダーを使った車間自動制御システムと、それに連動したブレーキアシスト(プレビュー付き)が効果絶大。解説を始めるとページが全く足りないから、ディーラーで試してくれ。これらが連携することでより安全性は高まるし、自動操縦の可能性が現実味を帯びてきた…!?

スタイリングと動力性能でライバル・セルシオに勝る

  • 日産 シーマ エンジン|ニューモデル試乗
  • 日産 シーマ エンブレム|ニューモデル試乗
↑4.5Lエンジンはトルクが2WDで46.0kg-m、4WDが41.0kg-mと異なっている(左) 革新的なスタイルと圧倒的な動力性能、先端の技術によって国内だけでなく海外でも高い評価を受けてきた(右)
ライバルは当然トヨタセルシオだ。セルシオは日本のフラッグシップ。世界的にもそれくらいに認知されている車だ。でも、セルシオは成功してるがために大胆なコンセプトの変更が行えないのに対して、シーマはやった。やらざるを得ないという話もあるが、ともかくスタイリングの新鮮さは断然シーマだ。

走りは、直接比較じゃないのであくまでも感覚的な話だが、ハンドリングや高速安定性ではセルシオが勝っている。エンジンのパフォーマンスとダイレクト感、動力性能でシーマだろう。

日本の高級車のお家芸である静粛性では、新型でまたもや無音状態に戻ったセルシオに対して、シーマは“ささやく”レベル。どっちがいいかは好みの問題。

世界のライバル、M・ベンツS430、BMW740iとアウディA8とはどうか。280ps規制がないとしても、回転の上昇と音と力量感がリンクして盛り上がるドイツ勢は優勢。ただし、実際の速さは甲乙つけがたい。

意外にも最もシャープなハンドリングはS430だ。740iは軽快さと限界領域のコントロール性に勝る。A8は4WDを生かした、文句なしの超安定性。とシーマ、セルシオともこの部分ではまだまだ。ただし、これは攻め込んでの話で、車のキャラクター、特に日本での使用状況では必要条件ではないことも事実だ。

日本ではシーマの良さが存分“活きる”ということだ。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード 450XV(2WD)
駆動方式 FR
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4995×1845×1490
ホイールベース(mm) 2870
車両重量(kg) 1770
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V8DOHC
総排気量(cc) 4494
最高出力[ps/rpm] 280ps/6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 46.0kg-m/3600rpm
10・15モード燃費(km/L) 9.2
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/80
車両本体価格 615.0万円

桂 伸一の責任採点

コンセプト 5点 取り回し 4点 加速性能 5点 ブレーキ性能 4点
フィニッシュ 4点 操作系の使い勝手 4点 乗り心地 4点 環境対策 5点
前席居住性 4点 ラゲージルーム 4点 操縦安定性 4点 燃費 5点
後席居住性 5点 パワー感 5点 高速安定性 3点 ステータス 5点
内装の質感 2点 トルク感 5点 しっかり感 4点 コストパフォーマンス 4点
得点合計 85/100
(Tester/桂 伸一 Photo/芳賀 元昌)