【試乗】ベントレー ミュルザンヌ|ドライブして初めて知ることができる“優雅さ”という独自の高級思考
2019/12/11

真性なる高級車に都内で3度目の試乗
2010年に登場した2代目となる現行型のベントレー・ミュルザンヌには、この9年間で3度試乗している。
これは、ジャーナリストが同一車種へ試乗する回数としては意外と多い方になるかもしれない。
いずれの機会においても、その“凛とした真性な高級車”という存在を大いに感じるのである。
佇まいは決して流行にとらわれることない、長い年月を費やして作り上げた上質さを感じさせる。
これがミュルザンヌだ、と。
ドライブフィーリングは高級サルーンらしく優雅そのもの
ドアマンがミュルザンヌのドアをやさしく開けてくれたところから、この弩級の高級サルーンの都内での試乗は始まった。
とてもしなやかでストロークのあるシートに腰を埋めて、シートを調整する。
ドアを閉めた瞬間に一気に静寂な空間となる。
スターターボタンに手を伸ばして軽く押すと、淀みのないスターターモーターが回り、シリンダーに火が入る。
最新のエンジンではめったに見られないOHV(オーバーヘッドバルブ)のV型8気筒エンジンだ。
OHVの特徴はバルブを開閉させるカムシャフトがエンジン下部に取り付けられているため、静粛性に優れている。
バルブレイアウトの制限やエミッション対策、高回転化が望めないなどの理由から、絶滅危惧種のエンジンともいえる。
しかし、この伝統あるOHVを最新のテクノロジーで刷新して搭載しているのがミュルザンヌである。
排気量の表記は6と3/4リットル、すなわち6752㏄となる。
さらにターボチャージャーを装着しており、わずか4000回転で537馬力を発生する。
110kg・mを超える弩級のトルクも1750回転で発生し、最高速は305km/hまで達する。

これほどのポテンシャルを都内で全て確かめることはできないが、街中のストップ・アンド・ゴーが繰り返されるドライブを優雅に装うことは容易である。
コールドタッチのマテリアルでこしらえた節度あるフトレバーをDレンジに入れると、多少のエンジン音は聞こえてくるものの室内の静粛性に変わりはない。
ブレーキをリリースして、クリープを生かしながらアクセルをゆっくりと開ける。
2600kgは優に超える車体を優雅に発進させる。
ステアリングは、軽やかに操作することが可能だ。
幅2メートル近いボディを見た目よりも大きくは感じさせず、むしろ運転がしやすいのである。
加速してみると、加速感はさほど感じないが速い。
5秒内で100km/hに達するという俊足だ。
少し狭いカーブに差しかかると、曲がり始めのみロールして後は安定した姿勢を保つ。
次のさらに大きなカーブでは速度が上がり、大型高級サルーンらしく緩やかにロールしてボディを沈みこめながら加速した。
悠々と走るとはまさにこのような情景である。

交差点右折時にブレーキでコントロールしながら速度を落とす。
ヘビー級のウエィトにも関わらず、ノーズダイブなしに制動する乗り心地のよいセッティングが感じ取れる。
方向指示器の音も静寂の中で聞くメトロノームのような音だ。
いずれの操作においても、コンピューター解析だけでは得られない人間味のある要素がちりばめられた心地のよい走りと言える。
最高級車らしい伝統工芸品ともいえるインテリア
ハンドメイドでなければ成り立たたないインテリアは、まさに伝統工芸品のようである。
例えば縫製は、レザーのしなやかさに合わせてひとつひとつがソーイングされている。
これほどまで丁寧な作り込みがされているのは、このクラスの最高級車のみといえる。
触れるものが豊かならば、心も豊かになるというものだ。
ドライブして初めて知るその一握りの人たちの経験が積み重なり、ベントレーの新たなエスタブリッシュメントが創り上げられていく。
価格が高くても、1台のモデルにこれほどまで高級だと感じることはそうそうない。
走り、居心地、すべてが独自の高級思想を語ってくれるのがベントレー ミュルザンヌである。

【試乗車 諸元・スペック表】
●スピード
型式 | ABA-BBCZM | 最小回転半径 | -m |
---|---|---|---|
駆動方式 | FR | 全長×全幅×全高 | 5.58m×1.93m×1.53m |
ドア数 | 4 | ホイールベース | 3.27m |
ミッション | 8AT | 前トレッド/後トレッド | 1.62m/1.65m |
AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
4WS | - | 車両重量 | 2770kg |
シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 5名 | 車両総重量 | -kg |
ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | -m |
マニュアルモード | ◯ | ||
標準色 |
- |
||
オプション色 |
- |
||
掲載コメント |
※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております |
型式 | ABA-BBCZM |
---|---|
駆動方式 | FR |
ドア数 | 4 |
ミッション | 8AT |
AI-SHIFT | - |
4WS | - |
標準色 | - |
オプション色 | - |
シート列数 | 2 |
乗車定員 | 5名 |
ミッション 位置 |
フロア |
マニュアル モード |
◯ |
最小回転半径 | -m |
全長×全幅× 全高 |
5.58m×1.93m×1.53m |
ホイール ベース |
3.27m |
前トレッド/ 後トレッド |
1.62m/1.65m |
室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
車両重量 | 2770kg |
最大積載量 | -kg |
車両総重量 | -kg |
最低地上高 | -m |
掲載用コメント | ※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております |
エンジン型式 | CZM | 環境対策エンジン | - |
---|---|---|---|
種類 | V型8気筒OHV | 使用燃料 | ハイオク |
過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 96リットル |
可変気筒装置 | ◯ | 燃費(10.15モード) | -km/L |
総排気量 | 6747cc | 燃費(WLTCモード) | - |
燃費基準達成 | - | ||
最高出力 | 537ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
1100(112)/3250 |
エンジン型式 | CZM |
---|---|
種類 | V型8気筒OHV |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | ◯ |
総排気量 | 6747cc |
最高出力 | 537ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
1100(112)/3250 |
環境対策エンジン | - |
使用燃料 | ハイオク |
燃料タンク容量 | 96リットル |
燃費(10.15モード) | -km/L |
燃費(WLTCモード) | -km/L |
燃費基準達成 | - |

自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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