【試乗】 新型 ランボルギーニ ウルスS|V8ツインターボは最高出力666psへ! 変わらぬオールマイティさを備えたスーパーSUV
カテゴリー: ランボルギーニの試乗レポート
2023/06/20
人気モデルゆえの小変更
好調なランボルギーニの業績を支えているスーパーSUVのウルス。ランボルギーニ社の2022年の販売実績はついに9000台を超えたが、そのうち実に6割以上をウルスが占めていた。さすが専用のアッセンブリー工場をサンタガータ本社の敷地内に持つだけあって、今や立派な大黒柱である。
そんなウルスに2022年秋、ペルフォルマンテという高性能仕様が追加され話題となった。デビュー前にパイクスピークスで市販SUV最速のタイムをマークするなど、その高性能ぶりをアピール。激化する一方のスーパーSUV市場においてその存在感を見せつけた。
多数のカーボンファイバー製空力パーツをまとったペルフォルマンテの姿があまりに印象的なせいか、実は同時にマイナーチェンジし、ベースモデルがウルスSへと進化していたことは忘れられがちだ。ペルフォルマンテほどの派手さはないけれど、内外装はグレードアップし、パワートレインもペルフォルマンテ同様に性能アップが図られている。
Sでも注目すべきはやはりエンジン性能だ。ペルフォルマンテとまったく同じスペックで、最高出力666ps、最大トルク850N・mを誇っている。これにより0→100km/h加速はペルフォルマンテからコンマ2秒遅いだけの3.5秒、最高速度は1km/h遅いだけの305km/hと発表された。要するに、そのダイナミック性能だけを捉えたならば、Sとペルフォルマンテはほぼ同等というわけだ。おそらく重量差(約50kgほどSの方が重い)がそのわずかな違いを生み出した。
見栄え以外での両グレード最大の違いは足回りだ。ペルフォルマンテはよりスポーツカーらしく金属スプリングを採用して車高も落としてきたのに対し、Sは従来どおりのエアサスペンション仕様で、ドライブモード選択(ANIMA)もこれまでと同様に6種類(ペルフォルマンテはストラーダ/スポーツ/コルサと、新たなオフロードモードであるラリーの4種類)を用意している。
実際に乗ってみるとどうか。正直に言って、ウルスSは以前のウルスとさほど違わないと思った。それはそうだろう。最大トルクは以前も同じ850N・mだったし、最高出力が上がったと言っても650psからわずかに16psアップしたのみ。車重2トンを超えるスーパーSUVにとってそれは誤差のようなものだ。
そう思ってもう一度スタイリングを眺めてみても、従来モデルからの大きな違いを一見して指摘できる人は少ないと思った。最も変更されたマスクデザインにしてもよりシンプルになったのだから当然だ。要するにこれは人気モデルのマイナーチェンジ、直前まで人気を保っていたがゆえの小変更であったと考えていいだろう。
ペルフォルマンテは確かにより硬派でスポーティな乗り味だった。一方、Sはというとこれまでどおり、バカッ速ながらモード次第では扱いやすいラグジュアリーGTで、街中から長距離ドライブまでオールマイティにこなす。
もちろんデビュー当初に比べたならば、隅々まで完成度が上がっている。特に街乗りでのライドフィールは質感が上がって何もかもよりスムーズな反応をみせた。ストラーダモードで走らせたならボディの大きさを感じさせつつゆったりとした気分でドライブさせてくれるし、スポーツに変えるとペルフォルマンテほどニンブルではないけれども十分“その気”にさせてくれる。前輪が実によく動いたペルフォルマンテより日常利用にはSの方がお似合いだ。
特に良かったのが高速クルージングで、これはもう無敵のグラントゥーリズモ(GT)だろう。姉妹車のポルシェ カイエン ターボGTやベントレー ベンテイガのV8がそうであったように、ウルスSもまたドライバーをしっかりと包み込んだダンガンのような塊感をもって実に安定した高速走行をみせた。疲れ知らずとはこのことで、京都から東京まで一気に走りきった。
踏めばその加速はもちろんスーパーカー級でとてもスリリングだけれど、そんなことは一度か二度試せば十分気が済む。それよりも心地よくクルージングしてくれるという性能の方が、ことウルスに関してはうれしい。
良いスーパーSUVの大切な条件は、スーパーなGTであることだと思う。
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
マイナーチェンジ前のランボルギーニ ウルスの中古車市場は?
2017年12月に登場。ランボルギーニが「世界初のスーパーSUV」と呼ぶのがウルスだ。ランボルギーニの市販モデルでは初のターボエンジン、4L V8ツインターボを搭載する。車体の3分の2をボディ、残りの3分の1をウインドウとする同社スーパースポーツと共通のバランスやY字型モチーフなど、一目で“ランボルギーニ”と分かるスタイルを備えている。
2023年6月前半時点の中古車市場には70台以上が流通しており、平均価格は3790万円。人気モデルだけに相場は安定しており、今のところ3000万円を切る物件は見当たらない。選ぶときのポイントとしては、好みのボディカラーやオプション装備の有無で比較してみると見つけやすいだろう。