シトロエン C5 X▲セダンのエレガンスさと、ステーションワゴンの実用性、SUVの力強さを融合させたという個性的クロスオーバースタイルで登場した、シトロエンの新たなフラッグシップ。ハイドロの流れをくむ足回りを標準装備する。ガソリンエンジンモデルのシャイン(484万~530万円)とプラグインハイブリッド(536万円)をラインナップ

現代の“ハイドロ”を備えた個性的クロスオーバー

シトロエンがC6以来となるフラッグシップモデルをリリース。そう聞いて、大いに盛り上がった変態車好きは少なくなかったに違いない。何を隠そう筆者もまたそのひとり。なんせC6のド格好いい変態ぶりに一発でノックアウトされ、当時、クライスラー 300Cというこれまたちょいと変態チックなサルーンを買ったばかりだったというのに、C6までオーダーしてしまい、しばらくでっかいセダン2台体制という、なんとも無駄で贅沢な状態になったほどだからだ。

けれども、シトロエンはC6を最後に筆者の好む変態なキレ味を失ってしまった。妙なパッチワークデザインでお気軽に目立ったり、はたまたDSなんていうそれこそC6そのもののようなブランドを立ち上げてみたりと、どうも思いの筋が定まらないというか、戦略が右往左往するというか……。プジョーと新DSとの位置関係もあって、なんだかちょっと中途半端なブランドになってしまったように思っていたのだった。

だから、久方ぶりのフラッグシップ(と言ってもDセグメント相当なのでちょっぴり物足りないのも確か。C6は立派にEセグだったから)として、グランドワゴンスタイルのユニークなクロスオーバーモデル=C5 Xがメディアに初披露された際、以前ほど強烈とは言えないにせよ、個性を一途に出そうとするシトロエンが帰ってきたと喜んだものだった。

もはや伝家の宝刀“ハイドロ”はない。だから、いくら望んでもあのドライブテイストそのものは無理。けれどもそこをなんとか工夫して、ハイドロなしで独特なライドフィールを実現した、と聞いていたから、首を長くして試乗の機会を待っていたのだが……。
 

シトロエン C5 X▲シトロエンとして久しぶりとなるDセグメントモデル、ボディサイズは全長4805×全幅1865×全高1490mm
シトロエン C5 X▲ブラックのバイトーンルーフや、室内の開放感を高めるリアクオータウインドウが採用された

結論から言うと、イメージとしてのシトロエン好きにはともかく、ハイドロ時代のあの滑空するようなドライブフィール(柔らかかったわけでは決してない! )を覚えているファンにとってはまったくもって納得できない乗り心地のように思えた。

試乗車は純内燃機関のガソリンエンジングレードの「シャインパック」で、フル加速時の物足りなさはともかく、十分日常使いに耐えうるパワートレインで、そこは及第点をあげていい。このパワートレインを使い慣れた感もある。
 

シトロエン C5 X▲シャインパックには最高出力180ps/最大トルク250N・mを発生する1.6Lターボエンジンを搭載

問題は“柔らかい乗り心地”だ。

シトロエンというとソフトな乗り味というイメージが先に立つ。それはいい。けれども昔のソフトとは、運転フィールを損なわない程度に節度のある柔らかさであって、甘ったるいだけのフワトロテイストとは一線を画するものだった。

ところが、C5 Xの街中常用域における乗り心地はというと、ただ単に柔らかいだけで、これがセダンやステーションワゴンの車高ならまだしも、クロスオーバーSUVっぽく上げてしまったから余計始末が悪い。減速時には車体がぶよんぶよんに揺れてなかなかな収まらないし、だからと言ってざらついた路面をうまくいなせるかというとそうでもなかった。

ただ、低中速域を無視してアクセルをガバッと開け、いきなりハイペースで走り出せば、そこからはなかなか快適。そんじょそこらの値段だけ高級なサルーンとは比べものにならない。高速域におけるフラットライドだけは特筆できる。だから評論家ウケがいいのかもしれない。みんないきなり踏んじゃうから。

あえて普段使いを想定してトボトボ走ったときの足回りの節度ない動きとボディのだらしない反応は、コンビニデザートの安っぽいフワトロ感覚そのもので、後味が妙に悪かった。これをシトロエンらしいなんて言ったなら、昔ながらのシトロエン好きから叱られるのではないだろうか。

もっとも、もう1グレード、プラグインハイブリッドを搭載したグレードも日本にやってくる。妙に脚がつんのめったりさえしなければ、サスペンションにアクティブ制御の付いたそちらのグレードの方が期待できそうだ。
 

シトロエン C5 X12インチタッチスクリーンを採用する、新世代インフォテインメントシステム(マイシトロエンドライブプラス)を搭載
シトロエン C5 X▲ベースの素材に低反発効果のある高密度ウレタンを用い、表層部には15mm厚の柔らかなスポンジを挟むという、独自構造のアドバンストコンフォートシートを装着する
シトロエン C5 X▲シートの素材やディテールにも上質さを追求、ステッチにシェブロン文様を取り入れる
シトロエン C5 X▲ラゲージ容量は通常で545L、後席を倒せば最大1640Lまで拡大
シトロエン C5 X最新ブランドデザインのV字型ライティングシグニチャーが取り入れられた
シトロエン C5 Xハイドロの流れをくむ、ショックアブソーバー内にセカンダリーダンパーを組み込んだプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)を標準装備
文/西川淳 写真/郡大二郎、尾形和美

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

シトロエン C6の中古車市場は?

シトロエン C6

2006年に登場した、3L V6エンジンに6ATを組み合わせたフラッグシップサルーン。油圧とエアの双方を用いたハイドラクティブ・アクティブサスペンションを備え、シトロエンらしい独自の乗り心地を実現している。“ビックシトロエン”の伝統ともいうべき直進安定性も魅力だ。ちなみに、先行生産モデルが当時の大統領公用車として使用されていた。

販売終了から10年が経っているモデルのため、物件状態にはバラツキが見られる。中古車相場は平均価格が約180万円ながら、約70万円から400万円台までと幅広い。また、並行輸入されたディーゼルエンジン搭載モデルもごくわずかだが存在する。

現在、流通量は約20台! シトロエン最後のハイドロを備えたフラッグシップに乗っておくなら、今が絶好かつラストチャンスとなるかもしれない!!
 

▼検索条件

シトロエン C6× 全国
文/編集部、写真/ステランティス ジャパン

【試乗車 諸元・スペック表】
●シャイン パック

型式 7BA-E435G06 最小回転半径 5.6m
駆動方式 FF 全長×全幅×全高 4.81m×1.87m×1.49m
ドア数 5 ホイールベース 2.79m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.6m/1.61m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1520kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.17m
マニュアルモード
標準色

ブルーマグネティック

オプション色

グリ アマゾニトゥ、ブランナクレ、ノアールペルラネラ

掲載コメント

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型式 7BA-E435G06
駆動方式 FF
ドア数 5
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ブルーマグネティック
オプション色 グリ アマゾニトゥ、ブランナクレ、ノアールペルラネラ
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.6m
全長×全幅×
全高
4.81m×1.87m×1.49m
ホイール
ベース
2.79m
前トレッド/
後トレッド
1.6m/1.61m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1520kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.17m
掲載用コメント -
エンジン型式 - 環境対策エンジン -
種類 直列4気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 52リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 1598cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 180ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
250(25.5)/1650
エンジン型式 -
種類 直列4気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 1598cc
最高出力 180ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
250(25.5)/1650
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 52リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -