ポルシェ マカン▲スポーティな走りで人気のSUV「マカン」の2代目は、BEV専用モデルに進化。ポルシェ電動化戦略の中心となる新型、まずは「マカン4」とハイパフォーマンスバージョンの「マカン ターボ」から登場

人気SUVがBEV専用モデルへとスイッチ

2024年1月末、2代目となるポルシェ マカンがワールドプレミアされた。これはタイカンに続くポルシェのBEV(電気自動車)第2弾となるモデルだ。

初代マカンが日本で発売されたのは2014年のこと。それから約10年のあいだに2度のマイナーチェンジを加えながらつくり続けられてきており、前期、中期、後期(マカン1、2、3と呼ぶこともある)に分類することができる。

2023年のポルシェのグローバルにおける新車販売台数を見ると、史上最高のセールスを記録しており、モデル別に見ればトップがカイエンの8万7553台、2位がマカンの8万7355台と、ほぼ同率1位。モデル末期とは思えないほどに売れているマカンをBEV専用車にスイッチするという。ポルシェはいま2030年までに新車販売の80%以上をBEVにするという戦略を掲げており、この新型マカンが重責を担うというわけだ。

4月下旬、新型マカンの国際試乗会がフランス・ニースから少し南下したリゾート地アンティーブで行われた。実はフランスの新車販売におけるBEVの割合は15%超、PHEVを足し合わせるとおよそ21%にまで伸びている。実際に街を走る車に目をやると、フィアット 500eやルノー ゾエ、テスラ モデル3などコンパクトBEVを多く見かける。一方で日本のBEVの割合は約2%、PHEVを足しても約3%と状況は大きく異なる。
 

ポルシェ マカン▲ICEモデルよりホイールベースが86mm長くなっているものの、前後オーバーハングを短くすることで全長は58mm増に抑えられている。写真はマカン ターボ

今回の試乗車は、日本でもすでに発表済みのベーシックな「マカン4」とハイパフォーマンスモデルの「マカン ターボ」の2種類。原稿執筆時点ではまだ未発表だが、今後は今までの例にならってSやGTSなどといったモデルが登場するはずだ。

新型マカンの新しい骨格は、アウディとの共同開発によるBEV専用の「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」と呼ばれるもの。アウディはこれを用いてQ6 e-tronを発表済み(国内未発表)で、今後はフォルクスワーゲングループの他ブランドにも展開されていくはずだ。

PPEは高効率な800Vアーキテクチャーを備え、フロアには総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを敷きつめている。前後アクスルに電気モーター(永久励磁型PSM)を配置した2モーター式で四輪を駆動する。これはあくまで想像だが、実はアウディはQ6 e-tronに1モーターの2WD(後輪駆動)のモデルを設定しており、タイカンのラインナップなどとも照らし合わせてみれば、ベースグレードの「マカン」は後輪駆動になるのかもしれない。

ボディサイズは全長4784mm、全幅1938mm、全高1622mmで、ホイールベースは2979mmと先代モデルより86mm延伸。そのため、Cd値0.25というクーペのようなスタイリングにもかかわらず、想像していたよりも室内空間にはゆとりがある。前後シートともに先代モデルより着座位置が低くなっており、後席は身長180cmの大人が座ってもしっかりとヘッドクリアランスが確保されていた。

インテリアは、タイカンに始まった最新のデザインの流れをくんだもの。メーターパネルは12.6インチの自立型メーターで、10.9インチのセンターディスプレイ、そしてオプションの10.9インチ助手席用ディスプレイが一体化したブラックパネルのようだ。BEVだからとすべてをデジタル化するのではなく、スタート/ストップボタンをはじめ、エアコンのスイッチ類、オーディオのボリュームなど、アナログのコントロールエレメントを残しているのもポルシェらしいところ。

そしてラゲージスペースも先代モデルよりも広くなっている。リアスペースは通常540Lで、背もたれを倒すと最大1348Lに拡大。そしてボンネットの下には“フランク”と呼ばれる容量84Lのセカンドラゲージコンパートメントがある。
 

ポルシェ マカン▲空力を向上させる、フロントエアインテークのフラップやアダプティブリアスポイラーなどを備えるPAA(ポルシェアクティブエアロダイナミクス)を採用。写真はマカン4

まず、マカン4に乗った。最高出力285kW(387ps)で、オーバーブースト時には300kW(408ps)のパワーを発生。最大トルクは650N・m。0→100km/h加速は5.1秒、最高速度は220km/h。一充電走行可能距離は613km。

スタートはもちろんスムーズで加速も申し分ない。足回りにオプションの22インチタイヤを装着していたこともあり、市街地では少し硬さを感じる場面もあったが、速度域が高まると次第にフラットな乗り心地へと変わっていく。まるでモンテカルロ・ラリーのような山岳路を走行したのだが、大きさや重さを感じさせず軽快なハンドリングを見せる。BEVになってもポルシェはポルシェだと感じる。
 

ポルシェ マカン▲ターボ(写真)にはPASM(アクティブサスペンションマネジメント)と電子制御ダンピングコントロールを備えたエアサスペンションを装備

翌日、ターボに乗った。最高出力430kW(584ps)で、オーバーブースト時には470kW(639ps)を発揮、最大トルクは1130N・mと“4桁”に到達している。0→100km/h加速は3.3秒、最高速度は260km/h。一充電走行可能距離は591kmとなっている。

昨日まではマカン4で十分と思っていたけれど、その思いが吹き飛んだ。アクセルペダルの操作に対して瞬時に反応する。まさに意のままといったところ。足回りは22インチタイヤ+エアサスの組み合わせだったが、乗り心地も洗練されており、より車との一体感が味わえた。聞けば、ターボはリアアクスルまわりの作りがマカン4とは別物なのだという。やはりターボは別格のようだ。

実はマカンは当初、現行型のICE(内燃エンジン)モデルとBEVモデルを併売する計画だった。しかし、欧州域内でサイバーセキュリティ法が施行されることになり、それに対応できないICEは、欧州のほとんどの国で販売終了になる。ちなみに、日本においても2022年から同様の規制が始まっているが、猶予期間が与えられており、しばらくは現行型ICEモデルと新型のBEVが併売されるかたちになりそうだ。ICEかBEVか、今のうちに悩む楽しさをどうぞ。
 

ポルシェ マカン▲4つのデイタイムライトを備えたアッパーライトユニットを採用、ヘッドライトはその下に配置されている
ポルシェ マカン▲操作系はデジタルユーザーインターフェイスとエアコンなどの物理スイッチ類を組み合わせている
ポルシェ マカン▲シフトは曲面デザインのメーターディスプレイ横に配置されている
ポルシェ マカン▲ボンネット内にはフランクと呼ばれる容量84Lのセカンドラゲージコンパートメントを用意
ポルシェ マカン▲ターボには専用エンブレムが備わっている
文/藤野太一 写真/ポルシェジャパン

内燃エンジンを搭載したポルシェ マカンの中古車市場は?

ポルシェ マカン

ポルシェが「同セグメントで唯一のスポーツカー」をうたい、2014年に日本に導入したコンパクトSUV。2018年と2021年には大幅な改良が行われている。トップパフォーマンスモデルのターボやスポーティなGTSなど、ポルシェの他モデルと共通したコンセプトのラインナップを用意する。

2024年6月上旬時点で、中古車市場には440台ほどが流通。販売期間が長いため、価格帯は190万~1550万円と幅広い。ハイパフォーマンスモデルは、ターボが60台ほど、GTSが140台ほど流通している。2022年に追加設定された、軽快な走りが魅力のTも10台程度が流通する。
 

▼検索条件

ポルシェ マカン× 全国
文/編集部、写真/ポルシェジャパン