誰にでもわかるドイツ車の味

  • フォルクスワーゲン ティグアン 走り|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ティグアン リアスタイル|ニューモデル試乗
↑40km/hまでは少々突き上げがあるが、その上のスピード域だと背の高さを感じさせない安定した走りを披露する(左)リアからの眺めは兄貴分のトゥアレグとの近似性をもっとも感じさせる部分。ボディカラーは全6色の設定(右)
2年ちょっと前、ジュネーブモーターショーに行く途中にパリに立ち寄った。手配が遅れてジュネーブまでの航空券が手に入らず、パリからレンタカーで行く羽目に陥ったのだ。せっかくなのでフランスの中古車事情を取材しようかという話になった。

カフェで出会った現地在住の日本人に、カフェオレ一杯と引き換えに「アナタノクルマハシンシャデスカ、チュウコシャデスカ?」「ツギニホシイクルマハナンデスカ?」などのフランス語訳を紙に書いてもらい、それを見せての突撃取材を敢行することにしたのだ。印象的だったのはそのときの次期愛車候補として圧倒的に多かった答えが「RAV4」だったこと。本当はX3が欲しいんだけど高いからね、とつけ加える人もかなりいたが。パリでも途中で立ち寄ったリヨンでも、確かにコンパクトカーであふれる街中に、確実にRAV4は増殖していたし、RAV4に乗るオーナーの顔はどこか誇らしげだった。

もちろんメーカー側は百も承知だったようで、ここにきて日産からはキャッシュカイ(デュアリス)、プジョー・シトロエンは三菱から供給を受けたアウトランダーのOEM車、そしてアウディやメルセデスの新型など、各社がC〜Dセグメントベースの少し小さめSUVを欧州で次々とリリースしている。その中でも2007年末の欧州デビュー直後から3週間で4万台を受注するなど、人気を集めているのが今回ようやく日本デビューを果たしたVW ティグアンだ。

一番のトピックは360万円という価格

  • フォルクスワーゲン ティグアン インパネ|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ティグアン ラゲージ|ニューモデル試乗
↑ゴルフプラスがベースのインパネだが、シルバーのアクセントが利いているせいか、より機能的な印象だ。リアビューカメラも標準で搭載される(左)座面の高さが特徴的なリアシートと助手席を倒すと2.5m長尺物が積める(右)
ティグアンのサイズは全長4460×全幅1810mm。RAV4と幅はほぼ同じだが、長さが130mmほど長い。デュアリスと比べると半クラスほど大きい。見た目は兄貴分のトゥアレグより威圧感が少なく、これなら近所へ買い物のアシとして使う気にもなれる。

乗ってみると、これが見事にゴルフっぽい。非常に硬質な乗り味で、40km/hくらいまでは少々突き上げがある。しかしその上のスピード域だと背の高さを感じさせない安定した走りを披露する。デュアリスも欧州車風味が強いと思っていたが、ティグアンはさすが本家本元、誰でもわかるドイツ車味だ。

170psを発揮する新開発の2L直噴ターボは6段のトルコンATと組み合わされ、必要十分な走りをティグアンに与えている。DSGによって陰に追いやられつつあるが、VWのこの6段トルコンATは以前から出来がいいし、少々重たいティグアンに似合っていると思う。

しかし日本においてこのクルマの一番のトピックは360万円という価格かもしれない。いかにもドイツ車らしい走り味や、高い内装のクオリティ、充実した装備を考えると、実に魅力的なプライスではないだろうか。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード トラック&フィールド
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4460×1810×1690
ホイールベース(mm) 2605
車両重量(kg) 1640
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1984
最高出力[ps/rpm] 170ps/4300〜6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 28.6kg-m/1700〜4200rpm
10・15モード燃費(km/L) 9.7
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/63
車両本体価格 360.0万円
(Tester/馬弓良輔(インポートカーセンサー副編集長) Photo/尾形和美)