“いつかは乗りたいアレ”が来年生産終了……。アルピーヌ A110(2代目)、走りを極めた軽量ミッドシップスポーツの中古車状況は?
2025/12/18
▲2026年3月31日をもって国内受注を終了することが決定したガソリンエンジン搭載のアルピーヌ A110(2代目)今後、中古車の流通量が増えることはなさそう
「唯一無二」「世界最高レベル」と呼んでもまったく大げさではない軽量ミッドシップスポーツ、2代目・現行型アルピーヌ A110。
車と、車の運転を愛する者であれば、誰もが「いつかは……」と思うはずの1台ですが、ガソリンエンジンを搭載する同車は残念ながら、2026年3月31日をもって国内受注が終了となります。
そして限定モデルについては販売台数に達した時点で受注終了となり、グローバルで見た場合のアルピーヌ A110のエンジン車全体も、2026年6月をもって生産終了となることが決定しています。
▲こちらは限定70台の最終限定車「A110 ブルーアルピーヌエディション」もちろん中古車としてはまだまだ購入することは可能なわけですが、今後その中古車流通量が増えることは、基本的にはなくなってしまいました。
これを機に、「希代の名作」といえるアルピーヌ A110(2代目)の直近の中古車状況と、その狙い方をチェックしてみることにしましょう。
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アルピーヌ A110(2代目)モデル概要:程よいパワーのエンジンをミッドに搭載する軽量スーパースポーツ
アルピーヌ A110(2代目)は、日本では2018年6月にまずは先行モデルが50台限定で発売された軽量ミッドシップスポーツ。ご承知のとおり、1970年代に活躍した同名のRRスポーツカーを現代の技術でよみがえらせたリバイバルモデルです。
アルミニウム製のボディとプラットフォームを接着剤で組み合わせた乾燥重量1080kgほどの小ぶりなボディ(全長4205mm×全幅1800mm×全高1250mm)のミッドに、最高出力252psの1.8L直4ターボエンジンを搭載して登場しました。
▲こちらがアルピーヌ A110(2代目)
▲グレードにより車両重量は微妙に異なるが、基本的には1100kg前後。とにかく現代のスポーツカーとしてはきわめて軽量だこのエンジンはアルピーヌのエンジニアとルノー・スポールの手によりエアインテークやターボチャージャー、エグゾーストシステム、エンジン制御などが専用仕様になっているもので、トランスミッションはゲトラグ製の7速デュアルクラッチ式AT。
走行モードは「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の3種類となり、モードに応じてスロットルレスポンスやステアリンググアシスト、シフトスピードなどの制御が変化します。
▲スポーティでありながら、いかにもフランス車らしい洒脱も感じさせるインテリアまずは先行限定モデルである「プルミエール エディション」のみでスタートしたA110でしたが、2018年9月には、カタログモデルである「ピュア」(モノコックバケットシートや鍛造18インチホイールなどを採用した軽量スポーティグレード)と、「リネージ」(高さ調整やリクライニング機能の付いたスポーツシートや軽量サブウーファーなどが装備された、快適性も重視したグレード)を発売。
続いて翌2019年10月には、1.8L直4ターボエンジン最高出力を292psに増強した高性能版「S」を導入しています。
2022年1月にはマイナーチェンジを実施し、ラインナップを「1.8」「GT」「S」の3グレードに刷新。GTとSには、これまで以上にパワフルな最高出力300psの1.8L直4ターボエンジンを搭載。またこのタイミングで、全車の車載インフォテインメントシステムが「Apple CarPlay」「Android Auto」に対応するようになりました。
▲2022年1月に登場した「GT」。前期型のリネージに相当するグレードだそして2022年11月には、300psのユニットに軽量・高剛性なカーボン製ルーフやボンネット、リアウィンドウ、大型リアウイングなどを採用し、A110用としては最軽量となるカーボン製の専用シートなども装着した史上最速グレード「R」を追加。
こちらの最高速度は285km/hで、ローンチコントロール使用時の0-100km/h加速タイムは3.9秒です。
▲A110史上最速の韋駄天ぶりを発揮する「R」この頃からアルピーヌ A110の新車価格は断続的に値上げされ、デビュー当初の「ピュア」は車両価格790万円でしたが、2023年4月には、初期のピュアに相当する「1.8」が875万円になり、その後も940万円→990万円と上昇。2024年9月にはついに1000万円の壁を突破し、最廉価グレードである「1.8」の車両価格が1040万円となりました。
2025年4月にはラインナップを刷新し、ブランド創立70周年を記念する「R 70」と、SおよびGTに代わる「GTS」、そして25台限定の「アニバーサリー」の3グレードに。アニバーサリーは、しなやかな「アルピーヌシャシー」を採用し、パワーユニットも、他の2モデルより控えめな最高出力252psのユニットを搭載しています。
▲写真はブランド創立70周年を記念して発売された「R 70」そしてその後、極限までパフォーマンスを高めた限定車「R ウルティム」や最終限定車「ブルーアルピーヌエディション」を発売しつつ、このたび生産終了がアナウンスされるに至った――というのが、アルピーヌ A110(2代目)の大まかなモデル概要です。
中古車状況:平均価格は上昇傾向が続いたが、直近は踊り場的な状況に
中古車の平均価格というのは歳月の経過とともにダウンしていくのが一般的です。しかしアルピーヌ A110(2代目)は、そもそも人気の高い希少スポーツモデルであることに加え、その新車価格が年々上がっていった関係で、中古車平均価格はダウンするどころか、むしろじりじりと上がっています。
2023年の途中まではなんとか700万円台で推移していましたが、同年11月には800万円台まで上昇してしまい、翌2024年から2025年の初夏にかけては上昇トレンドが継続。2025年6月の平均価格は970万円以上となってしまいました。
しかし、同年夏頃には若干の落ち着きを見せて900万円台半ばまでダウンし、直近では平均890万円付近で推移しているというのがA110(2代目)の価格状況です。

流通量(延べ掲載台数)に関しては、2023年から2024年にかけてはおおむね40台前後という状況が続いていましたが、2025年に入ると若干の増加傾向に転換。
結果として直近の2025年11月には71台という、まずまずの数が流通する結果となっています。

中古車のオススメ①:価格重視で選ぶなら総額600万円台までの「リネージ」
エントリーグレードであっても最終的には新車価格が1000万円以上になってしまったアルピーヌ A110(2代目)においては、「総額600万円台までの物件」であれば、まずまず手頃な価格であると評価していいでしょう。
そして現在、総額600万円台までの予算で狙えるA110(2代目)の数は約11台。内訳は総額500万円台が5台で、600万円台が6台といったところです。
そのうちの8台が「リネージ」、2台が「ピュア」、1台が「プルミエール エディション」であるため、選択肢の数的にオススメのグレードとしては「リネージ」となります。
▲モデル全体としての中古車平均価格は800万円以上だが、総額500万~600万円の物件もそれなりの数が流通している中古車平均価格に対して「この価格帯は買いなのか?」と不安になる方もいると思います。結論から申し上げるとこれらの格安(?)物件は、内外装や機関、足回りの状態などをしっかりチェックしたうえであるならば、購入しても何ら問題ない場合がほとんどです。
アルピーヌ A110(2代目)は途中から新車価格がべらぼうに値上がりしてしまったため、そのべらぼうな値上げの後に中古車となった高年式車は、そもそもの仕入れ価格が高めである場合が多いものです。
つまり「高年式でコンディションが良いゆえに中古車価格が高い」という理由ももちろんあるのですが、それと同時に「コンディションうんぬん以前に、仕入れ値が高かったから、売価も高くせざるを得ない」という理由もあるのです。
しかし、新車価格が大幅値上げされる前の2018~2020年式付近の物件は仕入れ価格が(比較的)安かったため、販売店としてはまずまず手頃な売価に設定しても、それなりに利益を出すことができます。
また、アルピーヌ A110を好むユーザーは走行数千kmや1万km台ぐらいの低走行物件を求めるケースが多いため、走行3万~4万km台ぐらいの物件=総額500万~600万円台の物件は、どうしても敬遠されがちになります。そして販売店は敬遠されがちな商品を消費者に売るために、それらの売価を若干低めに設定するものです。
これが格安(?)アルピーヌ A110発生のメカニズムであり、「どこかに機械的な問題があるから安い」みたいな話ではないのです。
▲しっかり吟味さえすれば、相対的に安価な前期型でも特に問題はない場合が多い。ちなみに向かって右の車両は1970年代の元祖(初代)アルピーヌ A110とはいえ、総額500万円台から600万円台のアルピーヌ A110は「5~7年落ちで、走行距離は3万~4万kmぐらい」というスペックになるのが一般的。つまり「普通なら特に問題はないが、使われ方次第ではコンディションが悪化している可能性もある」というお年頃です。
そのため検討時は、まずは内外装に荒れたニュアンスがないかどうかを確認し、そのうえでエンジンや足回りからの異音や違和感の有無、トランスミッション(7速DCT)の変速具合が正常か否か、そして「正規ディーラーで車検整備を受けてきたか」をしっかり確認したうえで購入することが、特に重要となるでしょう。
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アルピーヌ A110(2代目)×総額700万円未満中古車のオススメ②:300ps級のパワーが欲しいなら800万~900万円台の「S」または「GT」
総額500万~600万円台の格安(?)予算で狙えるアルピーヌ A110(2代目)は、最高出力252psの1.8L直4ターボユニットを搭載した「リネージ」が中心になります。
もちろんリネージであってもかなりステキなのですが、よりいっそうステキなA110を狙いたい場合は、最高出力300ps級のユニットを搭載した「S」または「GT」がオススメとなり、その場合の支払総額は約820万~1300万円が目安です。
▲こちらは後期型のA110 S。足回りなどはかなりスポーティな味付けとなる
▲こちらはスポーツ性と快適性とが両立しているA110 GT2019年10月から2025年3月まで販売された「S」は、2021年12月までの前期型が最高出力292psの1.8L直4ターボユニットを搭載しており、2022年1月以降の後期型は同300psのユニットを搭載。シャシーは、いずれもクローズドコースでのパフォーマンスを追求した「シャシー・スポール」です。
前期型で良しとする場合の価格目安は総額720万~820万円ですが、こちらは流通量がかなり少ないのが玉にキズ。2022年1月以降の後期型であれば流通量は比較的豊富ですが、こちらは総額850万~1300万円が目安。とはいえ総額800万円台で、十分なコンディションの1台が見つかるでしょう。
Sの後期型と同じ最高出力300psのユニットを搭載する「A110 GT」は2022年1月のマイナーチェンジ時に登場したグレードで、シャシーは快適なグランドツーリングを楽しむための「シャシー・アルピーヌ」。レザーシートや、フォーカル製軽量4スピーカー+軽量サブウーファーのサウンドシステムも装備しています。
▲A110 GTのインテリア。ハードすぎないレザースポーツシートや充実したサウンドシステムなどが特徴となるそんなGTの価格目安は総額930万~1100万円といったところ。もちろん決して安いとはいえないのですが総額900万円台の前半でも、好コンディションな1台が見つかるはずです。
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アルピーヌ A110(2代目)×S▼検索条件
アルピーヌ A110(2代目)×GT中古車のオススメ③:流通量は少ないが、各種限定車や超ハイパフォーマンスモデルを狙ってみるのも面白い
アルピーヌ A110では、レギュラーモデルに加えて多種多様な限定車も発売されましたが、それぞれの中古車流通量は希少。「2025年12月中旬現在、中古車は0台」という限定車も多いですし、流通しているものでも、その台数はせいぜい1~2台といったところです。
とはいえ、「どうせなら魅力的な限定車や、超ハイパフォーマンスグレードを狙いたい!」と考える人もいるかもしれません、念のため、現時点で1台以上の流通が確認できる特殊なグレードの主な特徴と、その中古車価格目安を記しておきましょう。
前期型の上位モデル「リネージ」に、ハイパフォーマンスモデル「S」用の1.8L直4ターボエンジン(最高出力292ps)とラグジュアリーな装備類を組み合わせた、世界で300台のみの限定車。2021年6月発売。
▲快適な前期型リネージに高出力エンジンを組み合わせた「リネージ GT 2021」
2022年2月に30台限定で発売された特別仕様車。Sにカーボン製のフロントスプリッター&リアスポイラー、エクステンデッドアンダーパネルで構成されるエアロキットを装着し、最大ダウンフォース量を増加させている。
▲強力なダウンフォースが持ち味となる「S アセンション」
2022年7月に発売された限定車。GTと共通のシャシー・アルピーヌと300psの高出力エンジンに、専用ツートンボディカラーや専用デカール、ブリリアントホワイトのグランプリホイールなどを組み合わせている。
▲まさに世界ラリー選手権のツール・ド・コルスを想起させる「ツール ド コルス 75」
こちらは限定車ではなく、2022年11月に追加された超ハイパフォーマンスグレード。Sから車高を10mm落としてロール剛性を高めたシャシーには、車高と減衰力が調整可能なダンパーを装備。エアロダイナミクス性能も追求し、シリーズ最速の285km/hをマーク。
▲どこで出せるかはさておき、最高速度285km/hをマークする「R」
2024年1月に24台のみが発売され、その後も何度か発売された、Rをベースとする超ハイパフォーマンスグレード。マットブラックカラーのアロイホイール「GT RACE」などが装着されている。
▲初回の販売台数は24台のみだった「R チュリニ」▼検索条件
アルピーヌ A110(2代目)
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2005年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。