S210がスバルSTIから登場したが、歴代コンプリートカーの中古車価格や流通量は今どんな感じ? 10選まとめて紹介!
2025/02/12

STIが放つ珠玉のコンプリートカーシリーズを振り返る!
先日開催された東京オートサロン2025で発表となったSTI(スバルテクニカインターナショナル)が手がけるコンプリートカーである「S210プロトタイプ」。
このモデルはスバルWRX S4をベースにSTIが細部にわたってチューニングを施したものであり、エンジンやミッション、足回りにスペシャルなチューニングが施されただけでなく、内外装にも抜かりなく手が加えられたファン垂ぜんの1台となっています。
そんなSTIが手がけたコンプリートカーは多数存在していますが、今回はS210以前にリリースされた、インプレッサとその後継であるWRXをベースとするS201からS209までの歴代Sシリーズ(一部Rを含む)と22Bをまとめて振り返ってみたいと思います!
22B STIバージョン
【販売開始時期】1998年3月
【新車価格】500万円
【販売台数】400台
【中古車掲載台数】0台

初代インプレッサSTIをベースにした初のスペシャルモデルがこの22Bと呼ばれるもの。
当時WRCのWRカー・カテゴリー3連覇を達成したラリーカーのイメージをロードカーに落とし込んだもので、ベース車よりもさらに大きく張り出したブリスターフェンダーやWRカーに近いデザインのフロントバンパーや大型リアウイングが外観での大きな特徴となっていました。
エンジンはWRカーとは異なり、2.2Lに排気量を拡大したEJ22改を搭載し、トランスミッションはクロス化。足回りにはビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングを組み合わせ、ロードカーでありながらWRカーの走りを想起させるチューニングが施されていたのでした。
中古車としては執筆時点では掲載はありませんでしたが、市場に出てくれば4ケタ万円はほぼ確実というプレミア価格の1台となっています。
▼検索条件
スバル インプレッサクーペ(初代)×22B STIバージョン×全国S201
【販売開始時期】2000年4月
【新車価格】390万円
【販売台数】300台
【中古車掲載台数】3台

インプレッサSTIというとラリーのイメージが強いモデルですが、S201はオンロードでの走りを追求したチューニングカーです。
足回りには車高調整式強化サスペンション、リア・フルピローラテラルリンク、リア・フルピロートレーリングリンクなど、市販車としては異例のチューニングパーツを多く投入し、エクステリアには専用のエアロパーツを装着し、迫力のあるスタイルをまとっていました。
また、エンジンも専用スポーツECUと吸排気系の変更により、最高出力300psを実現。当時はまだ280psの自主規制値が存在していた時代でしたが、STIのコンプリートチューニングカーということで300を発生していたのでした。
中古車としては3台の掲載があり、価格が掲載されている物件で総額350万円弱といったところ。ただ、修復歴があるものや走行距離が10万kmを超えたものが中心となっているため、低走行の状態の良いものが出てくれば新車価格を超える金額になる可能性は高そうです。
▼検索条件
スバル インプレッサSTI(初代)×S201×全国S202
【販売開始時期】2002年6月
【新車価格】360万円
【販売台数】400台
【中古車掲載台数】3台

2代目となったインプレッサSTIをベースにモータースポーツベース車として装備の簡略化による軽量化やシャシー性能の向上を行った「WRX STi type RA spec C」をベースに、S201と同じくオンロード性能の向上を追求したのがS202です。
専用のスポーツECUと吸気系の見直し、そして5.4kgの軽量化も実現したチタン製マフラーの装着などによって、最高出力は320psを実現。リアサスペンションにピロボールブッシュのラテラルリンク、トレーリングリンクを組み込み、バネ下重量の軽量化にもこだわり、鍛造アルミホイールとアルマイト処理+スリット入りのブレーキディスクを採用しています。
さらに、リアルカーボン製の2段階角度調整式のウイングタイプリアスポイラーを装備するなど、走行性能を高めつつ、オンロードモデルということで、エアコンやパワーウインドウといった快適装備も標準装備化されていました。
中古車としては3台が掲載されており、最も高いもので走行4万km台、修復歴なしで総額425万円とそこまで大幅なプレミア化はなされていない印象です。
▼検索条件
スバル インプレッサSTI(2代目)×S202×全国S203
【販売開始時期】2005年1月
【新車価格】460.95万円
【販売台数】555台
【中古車掲載台数】4台

中期型となった2代目インプレッサSTIをベースにリリースされたS203は、欧州上級スポーツ車と競合できる「グローバル ピュアスポーツセダン」をコンセプトに開発されたもので、大人の感性を満たす高い質感・プレミアム感を実現するモデルとして登場しました。
エンジンは吸排気系の高効率化やタービンの大型化に加え、バランス取りを実施することで数値に表れない上質さを追求。足回りには専用チューンのダンパー+ローダウンスプリングを装着し、リンク類にはピロボールブッシュを多用するとともにスタビライザー径を拡大しています。
また、エクステリアにはSTI製の前後スポイラーを装着し、シートにはドライカーボン製シェルのレカロ製バケットシートをチョイスするなど、上質な素材を惜しみなく投入しているのも特徴でした。
中古車としては3台の掲載があり、価格帯は総額400万円弱から500万円台中盤といったところで、高騰が続く国産スポーツモデルの限定車として考えれば妥当な価格帯と言えるかもしれません。
▼検索条件
スバル インプレッサSTI(2代目)×S203×全国S204
【販売開始時期】2006年1月
【新車価格】480.9万円
【販売台数】600台
【中古車掲載台数】7台

2006年1月にリリースされたS204は、後期型となったインプレッサSTIがベース。
基本的なチューニングコンセプトはS203と同じく「グローバル ピュアスポーツセダン」となっており、バランス取りがなされたエンジンや、ピロボールブッシュを多用した足回り、スタビライザー系の拡大などの手法も踏襲しています。
その中でS203との大きな違いが、車体への入力を減衰するパフォーマンスダンパーが新たに採用された点で、より洗練された乗り味を実現していたことがトピックとなっていました。
中古車としては執筆時点で7台の掲載があり、価格帯は総額400万円弱から700万円台中盤までと幅広くなっていますが、高額な物件は極端な低走行車であったため、ある意味妥当な価格かもしれません。
▼検索条件
スバル インプレッサSTI(2代目)×S204×全国R205
【販売開始時期】2010年1月
【新車価格】473.55万円
【販売台数】400台
【中古車掲載台数】3台

これまでのSシリーズおよび22Bは独立したトランクを備えた2BOXタイプがベースとなっていましたが、初めて5ドアハッチバックモデルがベースとなったのが、このR205でした。
Rと聞くとレーシングやラリーの頭文字を思い浮かべるかもしれませんが、このR205のRはロードを意味しており、公道での走りにこだわり、最良のロードゴーイングカーを目指して開発されたもの。
エンジンは引き続き320psまで最高出力が高められていますが、しなやかで強靭な走りをさらに進化させるために、今ではSTIパーツの代表格となった「フレキシブルタワーバー」や「フレキシブルドロースティフナー」を採用しているのが大きな特徴となっていました。
中古車の掲載は3台となっており、価格は300万円台中盤から500万円台前半といったところ。やはり低走行車は新車価格を超えるプライスとなっています。
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スバル インプレッサハッチバックSTI(2代目)×R205×全国S206
【販売開始時期】2011年11月
【新車価格】540.75万~593.25万円
【販売台数】300台(うちNBR CHALLENGE PACKAGEが100台)
【中古車掲載台数】5台

従来の運動性能、走り味および内外装の質感を向上させたコンプリートカーであるSシリーズに、ニュルブルクリンク24時間レースでクラス優勝を果たしたレースマシンの「走りの思想」を織り込んだ究極のロードカーとしてリリースされたS206は、再びベースを4ドアセダンに戻して登場。
このモデルでは320psを発生するエンジンチューンやビルシュタイン製ダンバーとスプリング、フレキシブルタワーバーなどのシャシーパーツを継続採用し、足元には19インチのBBS製鍛造ホイールとミシュランタイヤを装着していました。
さらに、ニュル24時間レースのクラス優勝記念として、カーボンルーフやドライカーボン製リアウイングを装備したNBR CHALLENGE PACKAGEも150台で設定し、即日完売となる人気ぶりを見せました。
そんなS206は5台の中古車の掲載があり、通常のS206が400万円台前半から後半となっているのに対し、NBR CHALLENGE PACKAGEは600万~800万円台と大幅にプレミア化がなされています。
▼検索条件
スバル インプレッサSTI(2代目)×S206×全国S207
【販売開始時期】2015年10月
【新車価格】599.4万~637.2万円
【販売台数】400台(うちNBR CHALLENGE PACKAGEが200台、同イエローエディションがうち100台)
【中古車掲載台数】5台

S206からおよそ4年振りに登場したS207は、新たにベースをWRX STI(初代)としてリリースされ、ベース車でも308psを発生するEJ20ターボエンジンは、通気抵抗を大幅に低減させた排気システムや綿密な制御のECUによって歴代最高となる328psを発生。
フロントサスペンションには国内メーカー初採用となる専用開発のビルシュタイン製減衰力可変ダンパー「DampMatic II」を採用して操縦安定性や乗り心地をさらに高い次元へと引き上げていました。
またインテリアにはセミアニリンレザーのレカロ製バケットシートを採用し、エクステリアにはSTI製エアロパーツを纏うなど、内外装にも特別な装備が多数与えられています。
そして2015年のニュル24時間レースクラス優勝を記念し、専用オーナメントなどを装着したNBR CHALLENGE PACKAGEを限定200台で設定し、さらにサンライズイエローの専用色を採用したNBR CHALLENGE PACKAGEイエローエディションを限定100台で設定していました。
S207の中古車は5台の掲載があり、走行距離が14万km超の物件が300万円台中盤となっている以外は500万円台後半から600万円台前半で、NBR CHALLENGE PACKAGEは700万円台中盤のプライスが付けられています。
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スバル WRX(初代)×S207×全国S208
【販売開始時期】2017年10月
【新車価格】626.4万~710.64万円
【販売台数】450台(うちNBR CHALLENGE PACKAGEが350台)
【中古車掲載台数】13台

前身のS207にエンジン出力・加速性能の向上やカーボンルーフの採用による低重心化などの改良を施し、WRX STIのもつ走りの楽しさをさらに高めたS208は、329psの最高出力を実現。
さらに11:1のクイックなステアリングギア比や、フレキシブルタワーバーはじめSTI独自のパーツ類に加え、フロントには可変減衰力サスペンションDampMatic RIIとフロント+リアのアクティブ・トルク・ベクタリングの効果により強靭でしなやかな乗り味とシャープなコーナリングを実現していました。
さらに、NBR CHALLENGE PACKAGEではドライカーボンルーフやS208ロゴ入りのドライカーボンリアスポイラーを採用して、ニュル24時間レースに参戦している車両を想起させる仕様となっているのも特徴となっています。
中古車は13台と今回のシリーズの中では比較的多めとなりますが、修復歴ありの物件がギリギリ600万円を切っている以外は700万円台後半から800万円台が中心で、低走行車に至っては900万円を超えるものも存在しています。
▼検索条件
スバル WRX(初代)×S208×全国S209
【販売開始時期】2019年10月(北米市場のみ)
【新車価格】63,995ドル
【販売台数】209台
【中古車掲載台数】1台

STIが手がけるコンプリートカーのSシリーズに置いて、唯一北米市場向けにリリースされたのが、このS209で、残念ながら日本国内には正規販売がなされなかったモデルとなります。
ベースとなっているのは北米市場向けのWRX STIであるため、エンジンも2.5Lの排気量をもつEJ25ターボエンジンがベースとなり、吸排気システムの見直しや大径ターボチャージャーの採用、専用ECUなどによって最高出力は歴代最高となる341hp(約346ps)を達成。
足回りには専用開発のビルシュタイン製ダンパーとスプリング、強化ブッシュにSTI独自のフレキシブルパーツなどが組み込まれ、265/35R19サイズのダンロップ製タイヤとBBSの鍛造アルミホイールが備わります。
さらに、専用オーバーフェンダーでワイド化されたボディにドライカーボン製大型リアウイング、フロントバンパーカナード、フロントアンダースポイラーといったエアロパーツや、カーボンルーフの採用など歴代モデルに採用された多くの技術や装備が投入されていました。
S209は日本では正規販売がなされておらず、限定209台と希少車ではあるものの、少数が並行輸入業者によって日本へ輸入されており、中古車として掲載されています。ただ価格は応談となっており、新車時価格を現在のレートで計算しても1000万円近いものとなるため、輸入に関わる費用なども考えるとかなりの予算が必要となりそうです。
▼検索条件
スバル WRX(初代)×S209(キーワード検索)×全国今回はSTIのコンプリートカーであるSシリーズを中心としたモデルたちをご紹介してきましたが、どれも限定車ということもあり、新車価格以上のプレミア価格となっているものが多くなっていました。
今回発表されたS210は、Sシリーズとしては初となる2ペダルモデルである点で評価が分かれているようですが、実際にリリースされた後の評価がどうなるのかも含めて気になるところですね。
※記事内の情報は2025年2月5日時点のものです

自動車ライター
小鮒康一(フナタン)
スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車のリーフを買ってしまう暴挙に出る。現在はリーフを手放し3代目インサイトをメインに、NA、NB2台のロードスターや初代パルサー、S660に17系クラウンなど雑多な車種を所有中。