ロードスター ▲東京オートサロン2025でマツダが発表した「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」。レース参戦で得た技術やノウハウを注入した、なんとも魅力的な1台だが、予定価格は「700万円台」とのこと。さすがにその金額だとちょっと無理! ということで、おおむね半額で狙える代わりのモデルを探してみることにする

700万円台×限定200台=手に入れるのはかなり難しい

マツダは今年1月10日の「東京オートサロン2025」にて、同社のモータースポーツサブブランド「MAZDA SPIRIT RACING」が手がけた限定200台のスペシャルモデル「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」を発表した。

12Rは、MAZDA SPIRIT RACINGがレース参戦で得た技術やノウハウを市販車向けにアウトプットしたスペシャルモデル。

パワーユニットは「現在の市販ロードスター用の直4エンジンで絞り出せるMAX値」だという最高出力200psのSKYACTIV-G 2.0で、専用のカムシャフトとシリンダーヘッド、ピストン、エキゾーストマニホールドを装備。そして足回りにもレースで鍛えた技術を投入するとともに、1台1台が人の手によって丁寧に組み上げられるのだという。

これはもうどう考えても「素晴らしい1台!」になることは目に見えているわけだが、素晴らしいだけあって、車両価格は700万円台を予定しているらしい。

……そのため、誠に残念ではあるが「700万円台×限定200台=入手はかなり難しい」という計算式が成り立ってしまいそうだ。泣けてくる。

しかし泣いていても仕方ないので、その半額ぐらいで、つまり「総額350万円ぐらい」の予算感にて、マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rとおおむね似たような満足感が覚えられそうなモデルを探してみることにしよう!
 

 

12Rの代わり①|大幅改良後のマツダ ロードスター(ND型)上級グレード
→予算目安:総額280万~350万円

マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rはかなり強烈なパフォーマンスを見せてくれるはずの1台だが、スーパー耐久参戦マシンに近いセッティングの足回りを採用することなどから、「どちらかといえばサーキットで本領を発揮するタイプ」であると思われる。

それはそれでもちろん素晴らしい話だが、「自分はサーキットではなく“普段の道”を気持ち良く走りたいのだ!」というタイプのユーザーであれば、わざわざ12Rを買わずとも、2023年10月に行われた大幅改良を経た世代のマツダ ロードスター(ND 型)を選べば、十分以上に満足できてしまう可能性は高い。
 

ロードスター▲こちらが大幅改良後の現行型マツダ ロードスター。写真のグレードは「S レザーパッケージ Vセレクション」

この大幅改良では、最廉価グレードである「S」を除いたMT車に「アシンメトリックLSD」を採用し、減速旋回時の車両安定性を向上させ、リニアな旋回特性を追求。街中では軽やかな、そして山坂道では従来型以上の安定した走りが実現されている。

そしてステアリング機構も改良され、「SKYACTIV-G 1.5」エンジンも国内ハイオクガソリンに合わせた専用セッティングを施すことで燃焼効率を改善。また、駆動力制御に最新のロジックを導入することで、加減速時の応答性も向上している。

つまり「めちゃめちゃ良くなった!」というのが2024年1月からデリバリーが始まった大幅改良世代であり、さらにはクラシカルな趣きが素敵な上級グレード「S レザーパッケージ Vセレクション」も、このタイミングで追加された。
 

ロードスター▲「S レザーパッケージ Vセレクション」のインテリア。タンカラーの内装とナッパレザーのシート、そしてベージュのソフトトップなどにより、クラシカルで上質なイメージに仕上がっている

そんな大幅改良後の「S レザーパッケージ Vセレクション」は走行距離数千kmレベルの物件でも総額300万円台前半から狙うことができ、もう少し一般的な「S スペシャルパッケージ」であれば、同じく数千kmレベル物件が総額280万円から見つけることができる。

現行型マツダ ロードスターという名車の素晴らしい部分を「日常的に味わいたい」と考えるのであれば、むしろこれらの方が12Rより好都合といえるかもしれない。
 

▼検索条件

マツダ ロードスター(ND型) × 2024年1月~ × 「S レザーパッケージ」系× 全国
 

12Rの代わり②|ホンダ S2000(初代)
→予算目安:総額290万~370万円

理屈の上では「普段づかい中心なら、大幅改良後のND型ロードスターで十分」ということになるわけだが、物事というのは理屈だけで割り切れるものでもない。理屈ではなくエモーションの部分で「自分は12Rのような“特別な1台”が欲しいのだ!」と熱望するのであれば、そのアツい想いも尊重されるべきであろう。

であるならば、例えばホンダ S2000でどうだろうか?
 

ロードスター▲本田技研工業の創立50周年を記念して開発されたホンダ S2000

ご承知のとおりホンダ S2000は、本田技研工業の創立50周年を記念して1999年に発売されたFRレイアウトの2シーターオープンスポーツ。

2シーターの量産オープンスポーツカーを作るには、一般論としては「生産台数が多いファミリーカーなどのパーツを上手に流用しながら作る」というのがセオリーだが、S2000はそんなセオリーを完膚なきまでに無視し、多くの部品を「専用パーツ」として新たに設計した。

縦置きされるエンジンはリッターあたり125psというレーシングエンジン並みの出力をマークする専用の2L 直4 DOHC VTEC「F20C」で、こちらは市販量産車用エンジンであるにもかかわらず、レブリミットが9000rpmという鬼のような超高回転型。

そしてエンジンを構成する各部品にも、小型軽量化をしながらも強度を保つため、ほぼワンオフと言える様々な新技術が投入された。ちなみに当時は希少だった6速MTも、S2000のために自社開発された専用品だ。
 

ロードスター▲ホンダ S2000のインテリア。写真は2003年10月のマイナーチェンジモデル

そのように「何から何までが特別な1台」と言えるS2000の中古車は、特級レベルのコンディションにこだわりたい場合は総額500万円を超えてしまうが、総額290万~370万円という現実的な価格帯でも、まずまず悪くないフルノーマル車を狙うことはできる。

これであればマツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rのおおむね半額にて、おおむね似た方向性の「満足」を感じることができるだろう。
 

▼検索条件

ホンダ S2000(初代) × 全国
 

12Rの代わり③|ミニ コンバーチブル ジョン・クーパー・ワークス(3代目)
→予算目安:総額280万~380万円

ホンダ S2000は「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rの代わり」としてかなり有効な選択肢であると思うが、「年式的に古い」という部分が気になる人もいるだろう。

ならば、2016年から2024年まで販売された3代目のミニコンバーチブル ジョン・クーパー・ワークスでどうだろうか?
 

ロードスター▲最高出力231psの2L 直4ターボを搭載する3代目ミニ コンバーチブル ジョン・クーパー・ワークス

ミニコンバーチブル自体については特に説明不要かと思うが、その「ジョン・クーパー・ワークス」とは、初代ミニの時代の2003年に発売された「ジョン・クーパー・ワークス チューニングキット」に端を発し、その後はミニのハイパフォーマンスとしてカタログモデルになったシリーズ。

その3代目は、最高出力231ps/最大トルク320N・mをマークするハイチューンな2L 直4ターボを搭載し、ジョン・クーパーの名に恥じない引き締まった足回りと専用デザインのエアロ・ダイナミック・キットを標準装備するオープンスポーツだ。
 

ロードスター▲トランスミッションは2018年途中までの前期型が6速ATで、マイナーチェンジ後の中期型は8速AT

2021年5月以降の最終世代はまださすがに総額400万円以上となるケースがほとんどだが、前期型および最初のマイナーチェンジを経た中期型(2018年5月~)であれば、まずまず好条件な1台を総額280万~380万円付近で見つけることができる。

マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rと違ってトランスミッションが6速ATまたは8速ATとなるのは大きな違いだが、そこが気にならないのであれば、12Rに勝るとも劣らないパフォーマンスを比較的安価にて堪能できるだろう。
 

▼検索条件

ミニ ミニコンバーチブル(3代目) × ジョン・クーパー・ワークス × 全国
 

12Rの代わり④|アバルト 595C(初代) ピスタ
→予算目安:総額300万~370万円

輸入オープンスポーツでも良しとするのであれば、アバルト 595Cの特別仕様車595C ピスタにも注目したいところだ。
 

ロードスター▲2020年に限定発売されたアバルト 595C ピスタ。写真のとおり純粋なオープンモデルではないが

アバルト 595Cは、フィアット 500のセミオープンモデルであるフィアット 500Cをベースに作られたハイパフォーマンス版。そして595C ピスタは、2020年4月に94台限定でリリースされた特別仕様車である。

パワーユニットは、ベース車比で20psアップとなる最高出力165psの1.4L 直4ターボで、ハイパフォーマンスエキゾーストシステム「レコードモンツァ」も組み合わされている。トランスミッション別では、ATモード付き5速シーケンシャルトランスミッション仕様が33台、5速MT仕様が61台輸入された。

足回りはリアにKONI製のFSDショックアブソーバー(路面状況によってショックアブソーバー内の「FSDバルブ」が瞬時に油圧調整を行い、最適な減衰力を発揮する仕組みのショックアブソーバー)を装着。そしてセンターキャップに差し色としてイエローを配したマットブラック仕上げの専用17インチ10本スポークアルミホイールや、同じくイエローのブレーキキャリパーによって見た目も引き締められている。
 

ロードスター▲武闘派ムードの中に上質感も感じられる運転席まわり。写真のトランスミッションは5速MT

とはいえ中古車の流通台数がきわめて少ないのがネックではあるのだが、5速MT車が5台、ATモード付き5速シーケンシャル車が2台、総額300万~370万円付近を中心にいちおう流通中だ。
 

▼検索条件

アバルト 595C(初代) × ピスタ × 全国
 

12Rの代わり⑤|トヨタ GRヤリス(初代)
→予算目安:総額330万~390万円

ここまでは「オープンスポーツ」に絞ったうえで「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rの代わり」を考えてきた。

だが冷静に考えてみれば、ロードスター12Rの本質的な魅力とは「オープンカーであること」ではなく、「モータースポーツ由来の1台であること」なのかもしれない。大事なのは固定屋根があるかどうかではなく、「エンジンや各部品のつくりが本気のモータースポーツに由来しているか否か?」なのだろう。

もしもそう考えるのであれば、固定屋根をもつ車ではあるが、トヨタのGRヤリスも十分“代わり”になり得るはずだ。
 

GRヤリス▲WRC(FIA世界ラリー選手権)の公認取得のために誕生したトヨタ GRヤリス

ご承知のとおりトヨタ GRヤリスは、2020年9月に販売スタートとなった超高性能ハッチバック。WRC(FIA世界ラリー選手権)のホモロゲーション取得を目的に、TMR(トミ・マキネン レーシング)の協力を得て開発された。

全長3995mm×全幅1805mm×全高1460mmとなるボディにはアルミニウムのエンジンフードやドアパネル、トランクリッドの他、軽量・高剛性なCFRP(炭素繊維複合材料)素材のルーフパネルを採用。そして前後駆動力可変システム採用の新開発スポーツ4WDシステム「GR-FOUR」により、圧倒的な動的性能の向上も図られている。

パワートレインは最高出力120psの1.5L 直3自然吸気エンジンにCVTを組み合わせたものもあったが、もちろんここで推奨するのは、同272psの1.6L 直3ターボエンジンに6速MTという組み合わせだ。

こちらであれば――駆動方式や固定屋根の有無については異なるが、マツダ スピリット レーシング・ロードスター12Rと同等または同等以上のパフォーマンスと「モータースポーツ由来ならではの感動」を味わうことができるはず。
 

ロードスター▲GRヤリスの運転席まわり。2024年3月には8速ATも追加されたが、総額300万円台で狙えるのは、それ以前の6速MT車となる

それでいて中古車価格は、上級グレードである「RZ」または「RZハイパフォーマンス」であっても総額300万円台。

「オープンカーであること」や「FRレイアウト」にこだわる場合は難しいが、そうでないのであれば、最強レベルの代替品になり得るだろう。
 

▼検索条件

トヨタ GRヤリス(初代) × 全国
文/伊達軍曹 写真/マツダ、ホンダ、ミニ、ステランティス、トヨタ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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