メルセデス・ベンツ CLA ▲新車や高年式中古車を買うとなるとかなり高額な現行型メルセデス・ベンツ CLAクラスですが、「前期型の中古車でも良し」とすれば、実はそこそこ現実的な予算で入手することができます。とはいえ、「前期型の中古車」って本当にお買い得なのでしょうか? 様々な角度から考えてみます

後期型より100万円以上安い「前期型」CLAだが、本当にお買い得なのか?

メルセデス・ベンツ CLAは、「Aクラス」や「Bクラス」と同じFFプラットフォームを採用するCセグメントの4ドアモデル。2019年8月に登場した2代目CLAも、4ドアクーペである「CLAクーペ」と、そのステーションワゴン版である「CLAシューティングブレーク」がラインナップされています。

コンパクトでありながらきわめて端正なフォルムであり、なおかつ現行世代のメルセデスならではのハイレベルな走行性能と装備内容を有している2代目CLAクーペおよびCLAシューティングブレークは、「とにかく欲しい!」と思わせる1台ではあるものの、そのお値段は決して安くはありません。

新車を買うとなると、最も安価なグレードでも車両本体価格だけで550万円を超え、2023年9月に行われたマイナーチェンジ後の後期型中古車を狙うにも、総額500万円以上の予算が必要です。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲新車を買うとなるとさすがにけっこうお高いメルセデス・ベンツ CLAクラス。写真は本国仕様の「CLA200」

しかし、マイナーチェンジ前の前期型であれば、CLAクーペもCLAシューティングブレークも総額300万円台で狙うことができます。

この価格は新車や後期型中古車を買う場合と比べて150万~250万円ほど安いということですから、かなりお買い得に思えるわけですが、マイナーチェンジ前のCLAクーペおよびシューティングブレークは本当に「買い」なのでしょうか? もしかすると総額500万円以上出してでも後期型を買う方が、最終的には賢いのでしょうか?

そのあたりを次章以降、詳細に検討してみることにしましょう。
 

▼検索条件

メルセデス・ベンツ CLAクーペ(2代目・現行型) ×2019年8月~2023年8月生産モデル ×全国

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メルセデス・ベンツ CLAクーペ(2代目・現行型) ×2019年8月~2023年8月生産モデル ×全国
 

モデル概要:FFのコンパクトな車台を使った4ドアクーペ/ステーションワゴン

現行型(2代目)メルセデス・ベンツ CLAクーペおよびCLAシューティングブレークは、2019年8月に上陸したFFプラットフォームの4ドアクーペまたはステーションワゴン。

ボディサイズはCLAクーペの場合で全長4690mm×全幅1830mm×全高1430mm。シューティングブレークは全高のみ1435mmと、少しだけ寸法が異なります。

エクステリアデザインはメルセデスの最新デザイン思想「センシュアルピュアリティ(官能的純粋)」に基づいたもので、シンプルな面構成の中に薄い形状のヘッドランプを配置。長く・低く構えたボンネットや高いウエストライン、なだらかなルーフラインなどによるエレガントでスポーティなクーペ的スタイルが表現されています。

メルセデス・ベンツ CLA▲こちらが4ドアクーペである「CLAクーペ」。写真は前期型
メルセデス・ベンツ CLA▲ファストバック的フォルムゆえ後席はやや狭めだが、その分だけ、とにかくスタイリッシュではある
メルセデス・ベンツ CLA▲CLAクラスのステーションワゴン版である「CLAシューティングブレーク」
メルセデス・ベンツ CLA▲こちらのボディ後端にもクーペ的な傾斜が適用されている

そしてインテリアデザインは現行型Aクラスの基本デザインを踏襲したもので、タービン形状のエアアウトレットや、メーターカウルを廃したダッシュボードなどが特徴です。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲クーペ/シューティングブレークで共通のデザインとなるインパネまわり。タービンを模した形状のエアコンアウトレットなど、全体的にスポーティなイメージでまとめられている

当初のパワーユニットは、最高出力150ps/最大トルク320N・mの2L直4ディーゼルターボと、同224ps/同350psとなる2L直4ガソリンターボの2種類。発売翌年には最高出力136ps/最大トルク200N・mの1.3L直4ガソリンターボを追加し、その他にも超強力な2L直4ガソリンターボエンジンを搭載するAMGモデルが追加されました。

装備面では、対話型インフォテインメントシステム「MBUX」とスマホのワイヤレスチャージ機能は全車標準装備。先進運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」は当初オプションでしたが、2020年9月以降は全車標準装備に変わっています。

2023年9月にはマイナーチェンジを実施して、いわゆる「後期型」へと進化。そして現在も、後期型となったクーペとシューティングブレークが新車として販売されている――というのが、2代目CLAクラスの大まかなモデル概要です。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲後期型ではヘッドランプの形状はよりシャープになり、「スターパターンフロントグリル」も採用された
 

前期型と後期型の差異:いろいろ異なるのは確かだが、決定的な違いはない

ここからは、メルセデス・ベンツ CLAクーペおよびCLAシューティングブレークの「前期型」と「後期型」はどこがどう異なっているのか、まとめてみましょう。

●ボディサイズ
全長と全幅に関しては前期型と後期型で違いはなく、どちらも全長4690mm×全幅1830mmです。しかし全高は、前期型がCLAクーペ=1430mm/CLAシューティングブレーク1435mmであるのに対し、後期型は1445mm/1450mmと、それぞれ15mmずつ高くなりました。しかしここに関しては「大きな違いはない」と言ってしまっていいでしょう。

●エクステリアデザイン
2023年9月のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインに以下の変更が加えられました。

・マットクローム仕上げの小さなスリーポインテッドスターが無数にちりばめられたシングルルーバータイプの「スターパターンフロントグリル」を採用
・「AMGラインパッケージ」ては、フロントバンパーのデザインをよりアグレッシブなイメージのものに変更
・よりシャープな印象を与えるヘッドランプを採用
・新デザインのリアディフューザーを装備
・LEDリアコンビネーションランプのデザインを変更
・ホイールのデザインを刷新
・外装色に新色を追加設定
 

メルセデス・ベンツ CLA▲こちらが2023年9月以降の後期型
 

前期型と後期型を並べて見てみると、当然ながら後期型の方がシュッとしていますし、特に後期型のヘッドランプにおけるキラキラ感は印象的です。

とはいえ現行型CLAクラスのデザインは、前期型の時点ですでに「かなりシュッとしていた」と言えます(もちろん、感じ方に個人差はあるでしょうが)。そのためここについても「前期型と後期型の間に“決定的な差”はない」と言ってしまって構わないでしょう。

●インテリアデザインおよび先進安全装備
後期型は、カーナビや運転支援システムなどの設定を手元で完結できる新世代のステアリングホイールを採用。そしてステアリングのハンズオフ判定は、リムの静電容量式センサーを介して行われるようになりました。

また対話型インフォテインメントシステム「MBUX」は最新世代のものに変更され、ナビゲーションシステムも最新世代にアップデート。そして交通状況に応じてハイビームとロービームを自動的に切り替える「アダプティブハイビームアシスト」は全車標準装備になっています。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲後期型の運転席まわり。ディストロニックプラス(悪天候下でも影響を受けにくいミリ波レーダーを使用して前方の車両を監視し、自車の速度に応じて先行車との車間を一定に保持するシステム)の作動中、ステアリングホイールに触れているだけでOKになったのは嬉しいポイント

こうしてあらためて変更点を書き出してみると、当然ながら「後期型の方が何かとイイな」とは思いますが、同時に「それほど大掛かりな変更でもないな」とも感じます。2023年9月のマイナーチェンジは、「インテリアの何もかもを完全に刷新した」というものではなかったため、「そりゃ後期型の方がイイに決まってるけど、前期型も決して悪くはない」というのが、ここまでの結論となるでしょう。

●パワートレイン
後期型では「CLA180」および「CLA180シューティングブレーク」に搭載される1.3L直4ターボエンジンが、BSGモーターと48Vシステム付きに変更されました。つまり回生ブレーキなどにより発電された電気がリチウムイオン電池に蓄電され、振動の少ないエンジン始動が可能になると同時に、必要に応じて最大160N・mの動力補助が行われるようになったということです。

こちらも当然ながら後期型の方が何かと優れてはいますが、「圧倒的な差がある」というほどの違いではありません。また中古車流通のメインである「200d」が搭載するOM654q型2L直4ディーゼルターボエンジンは、前期型も後期型も同じです。

以上の変更点から総合的に考えると、「後期型の方が各部は当たり前に進化しているが、決定的と言えるほどの違いはない」という判断で良いかと思います。つまり「2代目CLAクーペおよびCLAシューティングブレークの前期型は後期型より100万円以上安く狙えることを踏まえると“買い”である」ということです。

ならば次章、オススメの年式やグレードを具体的に考えてみることにしましょう。

 

前期型CLAクーペのオススメ|総額300万円台のCLA200d

超強力な2Lガソリンターボエンジンを搭載する「CLA45 S 4マチック」と「CLA35 4マチック」を除いて考えると、現行型CLAクーペの中古車は以下の3カテゴリーが検討対象になります。

●CLA180:最高出力136psの1.3L直4ガソリンターボを搭載するFF車(※後期型はBSG+48Vシステム付き)
●CLA250 4マチック:最高出力224psの2L直4ガソリンターボを搭載する4WD車
●CLA200d:最高出力150ps/最大トルク320N・mの2L直4ディーゼルターボを搭載するFF車

これらのうち、CLA180はお手頃予算で気軽に狙えそうなイメージもあるのですが、実際には流通量少なめで、流通している中古車も、総額430万円以上のやや高額な物件がほとんどです。そのため、あえて積極的に狙いに行く意味はさほどありません。

そしてやや高出力な2Lガソリンターボを搭載するCLA250 4マチックも流通量は少なめで、価格も総額500万円以上が中心。「どうしてもフルタイム4WDのCLAが欲しい」という場合は別ですが、こちらも基本的には「あえて積極的に狙いたいグレード」ではありません。

となると狙い目は必然的に、流通量豊富で、なおかつ総額300万円台前半から狙うこともできる「CLA200d」ということになります。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲トルクフルな2L直4ディーゼルターボエンジンに8速DCTを組み合わせる「CLA200d」

中古車価格は総額340万~700万円と上下に幅広いのですが、中古車として何かと好バランスなのは総額360万~400万円付近の2019~2020年式です。2020年9月以前の世代はレーダーセーフティパッケージが標準装備ではありませんでしたが、ほとんどの2019~2020年式車はオプション装備としてレーダーセーフティパッケージ装着していますので、特に問題はありません。

また総額300万円台後半でも、「AMGライン」や「レザーエクスクルーシブパッケージ」「アドバンスドパッケージ」などの人気パッケージオプションが装着されている中古車が多数流通しています。

内外装コンディションや整備点検履歴が悪くないことを確認したうえで、こういったパッケージオプションが装着されている物件を選ぶようにすれば、総額300万円台の予算であっても、かなり満足のいく結果となるはずです。

▼検索条件

メルセデス・ベンツ CLAクーペ(2代目・現行型) ×総額300万~400万円未満 ×2019年8月~2023年8月生産モデル ×CLA200d ×全国

▼検索条件

メルセデス・ベンツ CLAクーペ(2代目・現行型) ×2019年8月~2023年8月生産モデル×全国
 

前期型CLAシューティングブレークのオススメ|こちらも総額300万円台の200d

ステーションワゴン版であるCLAシューティングブレークの方も、「流通の中心はディーゼルターボで、ガソリンターボは希少」という傾向はCLAクーペと同様です。しかしCLAシューティングブレークでは総額300万円台の前半から後半でも、CLA180とCLA250 4マチックがそれなりに流通しています。

そのため、どうしてもガソリンターボ車にこだわりたい人は、総額300万円台半ばから後半のゾーンでCLA180とCLA250 4マチックを狙ってみるのも悪くないでしょう。


とはいえ数が豊富で選びやすいのは、やはり2L直4ディーゼルターボエンジンを搭載する「CLA200d シューティングブレーク」です。こちらも総額340万~390万円付近のゾーンで、AMGラインやアドバンスドパッケージなどのパッケージオプションが付いた中古車が豊富に流通しています。
 

メルセデス・ベンツ CLA▲こちらがCLA200dシューティングブレーク。5人乗車時の荷室容量は505Lと、広大ではないが、まずまずではある

それらの中から、CLAクーペの場合と同様に内外装コンディションや整備点検履歴が好ましい1台を探し出せば、かなり満足できる“メルセデス生活”が送れることでしょう。

メルセデス・ベンツとしてはやや小ぶりなサイズである点が問題とならないのであれば、きわめてスタイリッシュな実力派であるCLAクーペおよびCLAシューティングブレークの前期型中古車は、かなりオススメの選択肢です。
 

▼検索条件

メルセデス・ベンツ CLAシューティングブレーク(2代目・現行型) ×総額300万~400万円未満 ×2019年8月~2023年8月生産モデル ×CLA200d ×全国

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メルセデス・ベンツ CLAシューティングブレーク(2代目・現行型) ×2019年8月~2023年8月生産モデル×全国
文/伊達軍曹、写真/メルセデス・ベンツ、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。