フォルクスワーゲン T-Roc▲全長と全幅は当時の7代目ゴルフとほぼ同じという扱いやすいサイズのT-Roc

T-Rocの新車が値上げ! その陰で中古はお安くなっている

2023年に輸入SUV新車登録台数No.1となった人気モデルのフォルクスワーゲン T-Roc。(※フォルクスワーゲン調べ)

一方で、その2023年だけでも2回新車の車両本体価格が値上げされ、2024年3月にも改訂が入り、さらに12万7000~22万1000円の値上がりとなった。

理由は、緊迫する世界情勢などを背景に原材料が高騰しているからで、フォルクスワーゲンはこれまでもT-Rocを含めて度々料金改定を行っている。2020年7月のデビュー時から現在もラインナップしている2Lディーゼルターボ車のTDIスタイルで見ると、実に95万円も上がっているのだ。

これだけ値上がりしても「最も売れた輸入車」になるほどT-Rocの魅力はたくさんあるのだが、それは後ほど紹介するとして、先にお伝えしておきたいのは「中古車なら1年間で26万円もダウンしてますよ」ってこと。さらに、個別で見ていけば、新車の値上がり分を上回るほど値落ちしている中古車も狙えるのだ。

まずは、下記の中古車平均価格の推移をご覧いただきたい。
 

T-Rocの中古車平均価格推移

2022年の1年間はほぼ右肩上がり(価格が上昇)していたのだが、2023年に入ると一転して右肩下がりに。8月から11月の間はしばらく停滞していたが、12月に300万円を切ると再び下落トレンドに入ってきた。

2024年3月時点では平均価格が295.7万円まで下がり、昨年同月と比べて26万円も値落ちしたことになる。
  その背景には、中古車流通量の増加がある。中古車の価格は需要(ニーズ)と供給(流通量)のバランスによって決まることがほとんどだが、T-Rocの場合は流通量がニーズ以上に増えたため価格が下落したと考えられそうだ。

何しろ2023年3月時点の流通量が499台なのに対し、2024年3月は999台。ほぼ2倍にまで台数が増えているのだ。

T-Rocの中古車平均流通台数推移

そのため新車が値上がりしても、中古車の平均価格は下落しお得に狙えるようになっただけでなく、価格やグレード、ボディカラーなど好みに合わせて選びやすくなっている。

では、今中古で狙うならどんな物件がオススメなのか。まずはモデル概要をおさらいして、考えてみよう。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代・現行型)×全国
 

スタイル重視のコンパクトSUVは、装備が充実した人気モデル

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲LEDヘッドライトやフォグライト、ルーフレールはTDIスタイルを除く全車に標準装備。写真はTDIスポーツ

フォルクスワーゲンには現在コンパクトSUVが2車種ある。まず2019年11月に登場したのがT-Cross。同社で最もコンパクトなSUVとしてうたわれているモデルで、小さいながら広々とした車内空間や、クラストップレベルのラゲージスペースを誇る。

そのT-Crossのクーペルック版とも言えるのが、今回紹介する「T-Roc」だ。デビューはT-Crossの約半年後となる2020年7月。本国では2ドアのオープンカーモデルもあるほど、スタイルを重視したコンパクトSUVだ。

デザインを優先したため全長はT-Crossより約100mm長く、全幅も1800mmを少し超える。また、同社のSUVとして初めて2トーンカラーが採用されたのも、スタイル重視の表れと言えるだろう。
 

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲全車アルミホイールが標準だが、サイズはグレードによって16~19インチと異なる。写真のTDIスタイル デザインパッケージは17インチを装着

2Lディーゼルターボ(TDI系)を搭載してデビューし、さらに2021年5月には1.5Lターボ(TSI系)車が追加され、2022年7月のマイナーチェンジで2Lターボ(R系)も加わった。

いずれのエンジンもトランスミッションは7速DSG(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされ、駆動方式は前輪駆動が基本だが、4WDで2Lターボのスポーツモデル「R」系も設定されている。

そしてこのクラスの車としては装備も充実。アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、純正カーナビ&オーディオシステムの「ディスカバープロ」などが全車に標準装備されている。
 

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲純正カーナビ&オーディオシステムの「デイスカバープロ」だけでなく、ナビ画面も映し出せるデジタルメータークラスターも全車標準装備
フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲標準のシート地はファブリック。レザーシートとシートヒーターのパッケージオプションはTDIスポーツのみに用意された
フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲電動で開閉できるパワーテールゲートはTDIスタイルを除く全車に標準装備

マイナーチェンジは2022年7月に一度行われている。この時に2Lターボのスポーツモデル「R」が追加された。

また、全車に標準装備されている先進運転支援機能が進化し、同一車線内の走行のステアリング操作を支援する「トラベルアシスト」機能が加えられた。これにより高速道路でのアクセル/ブレーキ/ステアリングを車がアシストする、半自動運転が可能になった。

さらに、縦列駐車・車庫入れの後退駐車時に駐車可能スペースの検出とステアリング操作を自動で行い、駐車をサポートしてくれる「パークアシスト」機能も標準で備えられている。
 

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲マイナーチェンジでフロントグリルにエンブレムを挟んでLEDストリップが設置された。写真はTSI/TDIスタイル
フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲インテリアデザインは大幅に変更され、質感の向上も図られた。写真はTSI/TDIスタイル

一方で、中古車を選ぶ際に注意したいのは、カーナビやインフォテインメントシステムの変更だ。まず、2020年12月には「ディスカバープロ」の進化版と思われた「ディスカバーメディア」が最廉価グレードのTDIスタイルを除き、採用された(TDIスタイルはディスカバープロのまま)。

そしてマイナーチェンジでは、カーナビ機能のない新世代インフォテインメントシステムの「レディ2ディスカバー」が、最上級グレードの「R」を除く全車に標準装備となり、「R」にはカーナビ機能のある新世代ディスカバープロが採用された。

レディ2ディスカバーはApple CarPlayやGoogle Autoが利用できるので、「カーナビ機能はそちらでどうぞ」ということだろう。この辺はトヨタが進めているディスプレイオーディオと考え方は同じと言えそうだ。

以上を踏まえて、どんなT-Rocを選べば良いか見ていこう。
 

 

お手頃価格で狙いたいなら「前期型・TDIスタイル デザインパッケージ」がオススメ

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲前期型のTSI/TDIスタイルに用意されていた「デザインパッケージ」。ボディカラーがイエローまたはブルーの場合、インテリアも写真のように同色でコーディネートされる

なるべく手頃な価格で手に入れたいのであれば、デビュー時から設定されている2Lディーゼルターボを搭載した「TDIスタイル デザインパッケージ」、中でも登場初期の前期型(2022年7月~2022年6月生産)がオススメだ。

推しの理由は、まず流通量が多くて選びやすいこと。原稿執筆時点でのカーセンサー掲載台数を見ると、全体の1/6ほどにあたる100台以上ある。

もう一つの理由は、やはり中古車価格が手頃なこと。デビュー時点からラインナップされていたこともあり、やや走行距離が多いものも出始めているが、中には総額180万円以内で狙えるものも出てきている。ディーラー保証が付いた走行距離3万km以下のものでも総額約240万円といった感じだ。

なお、新車時価格はエントリーグレードの「TDIスタイル」の方が21万円安かったのだが、そもそも前期型に絞ると台数が少なく、同じような条件で見ても価格差がほとんどない。

しかも、ハロゲンヘッドライトのTDIスタイルに対して、LEDヘッドライトを採用しているなど、TDI スタイル デザインパッケージは装備が充実している。

以上より、最安値帯のオススメは「前期型・TDIスタイル デザインパッケージ」ということになる。
 

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フォルクスワーゲンT-Roc(初代・現行型)×2022年7月~2022年6月生産×TDIスタイル デザインパッケージ×全国
 

新車検討中なら、「登録済未使用車」も併せてチェック!

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲マイナーチェンジ後のTSI/TDIスタイルは、対向車や先行車などへの照射を自動で避けながら最適な配光をしてくれるLEDマトリックスヘッドライトを標準装備。つまりハイ/ロービームの切り替えが不要

「この年式・走行距離で、この価格なの!?」というような、お買い得感を重視するなら、登録済未使用車もぜひチェックしてみてほしい。

登録済未使用車とは、新車ディーラーが展示用や試乗車ように自社で登録したものの、走行距離が100kmに満たない、ほとんど走られていない車のこと。いわゆる“新古車”と呼ばれる車だが、一度ディーラーで登録されているため、扱いとしては中古車になる。

原稿執筆時点でのT-Rocの登録済未使用車は全体の約4%と、かなり少ない。それでも、例えば2Lディーゼルターボの「TDIスタイル」なら、支払総額約380万円から見つけられる。年式はいずれも2023年式と1年落ちだ。TDIスタイルは2024年3月の改定価格で新車時車両本体価格が479万9000円となったから、それと比べたら約100万円は安いことになる。

それにマイナーチェンジ後のモデルなので、先進運転支援機能や最新エンターテインメントシステムを標準で備えるなど、前期型よりも装備は充実している。また、走行距離が2ケタの1年落ちだから、ドアを開けたら新車の香りが残っていてもおかしくない状態だ。

TDIスタイルといえば、冒頭で述べたようにデビュー時から現時点まで95万円も値上がりしたモデル。それが、走行距離が2ケタの1年落ちで現時点の新車より約100万円安くディーラーで買えるのであれば、検討する余地は十分あるのではないか。

新車検討中の人にもぜひチェックしてみてほしい。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代・現行型)×登録済未使用車×全国
 

“最強ロック”の「R」系もしっかり値落ちしている

フォルクスワーゲンT-Roc(初代)▲300馬力を発生する2Lターボ&4WDを搭載。「二輪より四輪で路面をつかんだ方が速い」ということを示すかのように、停止状態から100km/hに達するまでわずか4.9秒とスポーツカー並みの俊足モデルだ

スポーティなT-Rocが欲しいなら、同社のハイパフォーマンスモデルである「R」が気になるところだが、中古車状況はどうなっているのだろう。

まず掲載状況を見てみると、原稿執筆時点で36台の「R」がヒットした。「R」系グレードには素の「R」の他に内外装各所を黒でコーディネートした「R ブラックスタイル」もラインナップされているが、掲載があったのは「R」のみであった。

続けて中古車価格を見てみよう。最も安い物件を見ると総額約460万円からヒット。しかも走行距離は1万km台と、まだまだコンディション的には期待できそうな物件も多い。

2021年デビュー時のRの車両本体価格は626.6万円だったことを考えると、年式相応、いやそれ以上に値落ちが進んでいることがうかがえ、お買い得感が高いと言えそうだ。

上記のとおり、掲載台数は少なめなので細かくチェックする必要はあるが、同社最小のRを冠したSUVがこの価格で買えるのは嬉しい。ぜひT-Rocの“最強ロック”仕様をチェックしてみてほしい。
 

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代・現行型)×「R」×全国

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フォルクスワーゲン T-Roc(初代・現行型)×全国
文/ぴえいる、写真/フォルクスワーゲン、柳田由人

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。先日、中古車のホンダeも加わった。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。