3シリーズ ▲大人気のドイツ製プレミアムセダン「現行型BMW 3シリーズ」の中古車平均価格がここ1年でけっこう大きく下がっています。なぜ下がったのか? 買うとしたら、何年式のどんなグレードが狙い目なのか? 徹底的にチェックしてみることにしましょう!

登場から約5年が経過したことでついにダウントレンドに

ドイツのBMW社が作っている現行型BMW 3シリーズは、きわめて万能な車であるような気がします。ジェントルに走ることも、スポーティに走ることもできて、先進安全装備は大いに充実している。そしてデザインもイカしており、いわゆるステイタス性みたいなものもある――と、ほぼ欠点がないわけです。

しかし、そんな現行型BMW 3シリーズの中古車平均価格が今、けっこう大きく下がっています。

下のグラフをご覧ください。

3シリーズ

2021年から2022年まではおおむね横ばい傾向だった現行型BMW 3シリーズの中古車平均価格ですが、2023年春頃から下落傾向に転換。直近である2023年10月の平均価格を前年11月と比べると、実に36.4万円もダウンしていることになります。

今回の平均価格下落は何らかのネガティブな要因によるものではなく、単に「登場から5年近くが経過したため」という、どんな車種においてもほぼ必ず見られる現象であると考えられます。つまり「購入をためらう理由は特にない」ということです。

だからこそ今、現行型BMW 3シリーズという大人気万能車の中古車事情について、集中的に考えてみたいと思います。
 

3シリーズ▲こちらが現行型BMW 3シリーズの後期型

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 全国
 

モデル概要:先進安全装備も充実したスポーツセダン

BMW 3シリーズは、ドイツのBMW社のラインナップ上の中核を成すFRレイアウトのコンパクトセダン。コンパクトといっても、それは1975年に発売された初代モデルや、せいぜい1990年代のモデルまでの話で、現在の3シリーズは「ミドルサイズ」との形容がふさわしいサイズ感になっています。

通算7代目にあたる現行型BMW 3シリーズが日本で発売されたのは2019年3月のこと。ボディサイズは従来型より全長が70mm、全幅は25mmそれぞれサイズアップした全長4715mm×全幅1825mm×全高1440mm。そこに当初搭載されたエンジンはチューニングの異なる2種類の2L直4ガソリンターボで、「320i」には最高出力184ps/最大トルク300N・mのものが、「330i」には同258ps/400N・mのタイプが搭載されました。トランスミッションはいずれも8速ATです。

先進装備は、3眼タイプのカメラと高性能プロセッサーやレーダーを加えた高度な運転支援システムが、受注生産グレードだった「320i SE」を除く全車に標準装着されました。
 

3シリーズ▲現行型BMW 3シリーズの前期型。写真は「Mスポーツ」
3シリーズ▲「ホフマイスターキンク」と呼ばれるサイドウインドウ後端部のデザイン処理が変わったことで、従来型以上に伸びやかさを感じさせるフォルムとなった
3シリーズ▲前期型Mスポーツの運転席まわり。タッチ操作に対応した10.25インチのコントロールディスプレイと、12.3インチのデジタルメーターパネルは全車標準装備
 

2019年5月にはラインナップが拡充され、最高出力190psの直4ディーゼルターボを搭載する「320d xドライブ」と、同387psの3L直6ガソリンターボを搭載する「M340i xドライブ」、そしてシステム合計出力292psを発生するプラグインハイブリッドモデル「330e」を追加。ちなみに同年の夏以降に販売された車両には、高速道路での渋滞時において手放し運転が可能になる「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」が搭載されています。

翌2020年8月には、それまでのエントリーグレードだった320SEに代わって、最高出力と最大トルクを156ps/250N・mに抑えた2L直4ターボエンジンを搭載する「318i」が誕生。これは新たなエントリーグレードですが、装備レベルがいまひとつだった320SEと違い、装備内容は普通に充実しています。

そして2022年9月には、内外装デザインの変更を中心とするマイナーチェンジを実施。よりシャープな印象をもたらすデイタイムランニングライト機能を備えた最新のヘッドランプを採用した他、キドニーグリルはダブルバーデザインとなり、フロントエプロンもワイド化。リアコンビランプは細く水平なラインに変更され、テールパイプの径もやや太くすることで、よりパワフルな印象になりました。

インテリアでは、12.3インチのメーターパネルと14.9インチのコントロールディスプレイを統合した「BMWカーブドディスプレイ」を採用。シフトセレクターはレバー式から背丈の短いトグルスイッチ式に変更され、レバーでのマニュアル変速ができなくなったことから、シフトパドルが全車に標準装備されるようになりました。
 

3シリーズ▲よりシャープなイメージとなった2022年9月以降の後期型
3シリーズ▲リアコンビランプは近年のトレンドである細く水平なラインに変更され、テールパイプの径も90mmまたは100mmに拡大されている
3シリーズ▲後期型の運転席まわり。写真は「Mスポーツ」
 

それでは次章以降、以上のような成り立ちを持つ現行型BMW 3シリーズの中から「どんな1台」を選ぶべきなのか、ニーズ別に考えてみることにしましょう。
 

 

中古車のオススメ1|コスパ重視で選ぶなら?

いわゆるコスパ重視で現行型BMW 3シリーズを選ぶなら、最初期にあたる2019年式と2020年式の320i系すなわち「2L直4ガソリンターボエンジン搭載車」で決まりでしょう。これであれば、走行3万km台までの物件を総額280万~330万円付近のゾーンで選びたい放題です。320i系の2L直4ガソリンターボエンジンはパワーもトルクも十分ですので、力感の面で不満に思うことはまずないでしょう。
 

3シリーズ▲こちらが前期型の2L直4ガソリンターボ搭載モデル。写真は320i Mスポーツ
 

問題は、同じ初期型320iの中でも「SE」「スタンダード」「Mスポーツ」という3種類の中からどれを選ぶべきか――ということです。

受注生産だった最安グレード「320i SE」は先進安全装備「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」が付いていない時点で論外ですし、そもそも中古車の流通量もきわめて少ないため、その意味でも論外です。

となるとスタンダードとMスポーツの二択になるわけですが、これはもう結論から申し上げると「どちらでもいい」ということになります。ご自身の好みと予算、そして“ご縁”に応じて、内外装のコンディションが良いモノを選択すれば、それだけでおおむねOKです。スポーティな雰囲気と乗り味がお好みの方にはMスポーツが、落ち着いた雰囲気と乗り味がお好みの方にはスタンダードがハマるでしょう。
 

3シリーズ▲スポーティな「Mエアロダイナミクス・パッケージ」や「Mスポーツ・サスペンション」などを装備するMスポーツ
3シリーズ▲落ち着いた印象で、全高もMスポーツより10mm高くなっているスタンダード
 

そのうえでいくつかの豆知識を挙げるならば、以下のとおりとなります。

・Mスポーツはオプションの「BMWヘッドアップ・ディスプレイ」が付いていたらラッキー(スタンダードは装着不可)。
・Mスポーツはオプションの「アダプティブMサスペンション」が付いていたらラッキー(スタンダードは装着不可)。
・どちらも8速ATだが、Mスポーツは「8速スポーツAT」で、パドルシフト付き。
・スタンダード、Mスポーツともに「ハイライン・パッケージ」「サウンド・パッケージ」が付いていたらラッキー。

 

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 2019~2020年式 × 320i × 全国

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 2019~2020年式 × 320i Mスポーツ × 全国
 

中古車のオススメ2|燃費性能重視で選ぶなら?

燃費性能重視で現行型BMW 3シリーズを選びたい場合は、2L直4ディーゼルターボエンジンを搭載している「320d xドライブ」がいいでしょう。
 

3シリーズ▲前期型20d xドライブ Mスポーツ(写真は英国仕様)
 

WLTCモード燃費は2Lガソリンターボの320iが13.1km/Lであるのに対し、320d xドライブは15.1km/Lということで約2km/Lしか違わないのですが、320d xドライブは「さほどエコドライブを意識せずとも実燃費はけっこう伸びる」という美点があります。また、ディーゼルターボエンジンならではの力強さも、言わずもがなの美点ではあります。

ディーゼルターボエンジンを搭載する320d xドライブにも「スタンダード」と「Mスポーツ」があるのですが、ディーゼルモデルの場合はMスポーツの流通量が約9割を占めていますので、おおむね必然的に「Mスポーツの一択」ということになるでしょう。

比較的手頃な予算でいきたい場合は、2019~2020年式の320d xドライブ Mスポーツを総額320万~360万円付近のゾーンで狙うのが定石です。走行3万km台までの、かなり悪くない1台が見つかるはずです。
 

3シリーズ▲前期型20d xドライブ Mスポーツ(英国仕様)の運転席まわり
 

「もう少し予算を上げてもいい」と考えるのであれば、総額380万~430万円付近のゾーンにて「2021~2022年式で走行1万km台」という320d xドライブ Mスポーツを見つけることができます。安い買い物ではないですし、マイナーチェンジ前の前期型にはなりますが、700万円以上だった新車価格から考えれば、十分にお買い得であると考えていいでしょう。
 

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 320d xドライブ × 全国
 

中古車のオススメ3|マイチェン後の後期型を狙うなら?

2022年9月に内外装デザインを比較的大きく変えた後期型は、狙い目を絞るのが少々難しくなります。いずれのグレードの中古車もそれなり以上に魅力的であるため、どれかひとつに限定するのが難しいのです。
 

3シリーズ▲330eとM340i以外はどれも中古車としての魅力は十分にある後期型3シリーズ
 

流通量がかなり少ない330e Mスポーツと、中古車価格がきわめて高額なM340i xドライブを除いて考えると、「ガソリンターボの318iか320iか? それともディーゼルターボの320dにするか?」というのが大まかな選択肢になります。

そのうち、やや出力を抑えた318i Mスポーツの中古車価格は総額480万~550万円といったところ。318i Mスポーツの新車価格が634万円ですので、総額550万円の中古車はやや微妙な感じもしますが、「総額480万円ぐらいで走行数千km程度」という中古車はたくさんありますので、こちらはかなり魅力的に思えます。

高出力な2Lガソリンターボを積む320i Mスポーツの中古車価格は総額480万~620万円といったところで、こちらは総額530万円付近に注目したい物件が多数あります。678万円という新車価格を考えると、「走行数千km程度の後期型320i Mスポーツが総額530万円ぐらい」というのはきわめて魅力的です。

しかし、新車価格720万円の320d xドライブ Mスポーツの中古車も、総額530万円付近に注目したい物件が多数ありますので、お買い得度でいえば320i以上であるようにも思えます。
 

3シリーズ▲お好み次第ゆえ断言はしにくいが、「割安感」と「車としての満足感」が一番高いのは、総額530万円付近の320d xドライブ Mスポーツかも?

以上のとおり、「お買い得度」という軸で考えるとなかなか甲乙つけがたいのが後期型の318i/320i/320dですので、ここはもう下記のようにざっくり考えるほかないのかもしれません。

●なるべくお安く後期型3シリーズを入手したいなら?
→総額480万円ぐらいの318i Mスポーツ

●力強い走りと燃費性能を求めたいなら?
→総額530万円ぐらいの320d xドライブ Mスポーツ

●ガソリンエンジンの方が好きだが、「318iだとやや力不足かも」という不安を覚えるなら?
→総額530万円ぐらいの320i Mスポーツ

上記が唯一の正解であるとは筆者自身も思っていません。しかし、後期型BMW 3シリーズを探すにあたっての「おおむねの方向性」は、上記のようなニュアンスとなるはずです。ご参考にしていただけましたら幸いです。
 

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 後期型 × 318i Mスポーツ × 全国

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 後期型 × 320d xドライブ Mスポーツ × 全国

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 後期型 × 320i Mスポーツ × 全国

▼検索条件

BMW 3シリーズ(現行型) × 全国
文/伊達軍曹 写真/BMW、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。