「マツダ RX-8はやめとけ・後悔する」は本当か? スポーツカーオーナーの専門家がお答えします!
2023/10/21
RX-8は本当にやめといた方が良い車なのか?
昨今は国産スポーツモデルの中古車価格高騰が進み、なかなか手に入れることが難しくなっています。
しかし、そんな状況でも、まだ比較的安価に狙うことができる貴重な1台が、マツダのRX-8ではないでしょうか。スポーツカーを探している人を中心に、気になっている人も多いのでは?
そこで早速ネットで「RX-8」について検索してみると、「やめとけ」や「維持できない」など、不安になる文言が予測変換として出てきてしまいます。
確かにロータリーエンジンを搭載するRX-8は、一般的なレシプロエンジンを搭載するモデルに比べてメンテナンスの重要性が高く、専門的な知識が必要となる場面もあるのは否定できません。
また燃費性能はあまり期待できず、一応4ドアセダンではあるものの、実用性は一般的なセダンよりは劣るなど、ネガな部分が複数存在するのもまた事実。
では、本当にRX-8の中古車購入はやめておいた方がいいのでしょうか? この記事では、現役スポーツカーオーナーの筆者が検討してみることにします。
RX-8のモデル概要と中古車状況
モデル概要
マツダ RX-8は2003年5月にデビューし、2012年6月まで生産が続けられた、意外にも息の長いモデルで、現在のところ最後に駆動用エンジンとしてロータリーを搭載した車両となっています。
マツダのロータリーといえばピュアスポーツモデルのRX-7を思い浮かべる人も多いのでは?
しかし、RX-8は観音開きのドアを備えた4ドアモデルでRX-7に比べると実用性が高められており、エンジンもターボではなく、NAロータリーとなるなど、異なるキャラクターとなっていたことは留意しておきたいところです。
ただ、スムーズに回り続けるロータリーエンジン特有のフィーリングや、50:50の前後重量配分をもつFR車ということでハンドリングの良さは高い水準にあり、実用性とスポーティさを兼ね備えたモデルであることは間違いありません。
搭載エンジンの種類は13B-MSP型と呼ばれる1種類となりますが、グレードによってチューニングが異なっており、6速MTと組み合わされるのがハイパワー版(前期250ps/後期235ps)で、5速MTおよびAT車に搭載されていたのが標準版(前期210ps&215ps/後期215ps)となります。
2008年3月にはマイナーチェンジが実施されて後期型となり、エクステリアのデザインが大きく変更された他、エンジンや駆動系、足回りにボディまわりまで大きく手が加えられて大幅に進化。ATモデルは4速から6速に多段化がなされるなど、かなり大掛かりな改良が施されています。
中古車状況
スポーツカーでありながら実用性も兼ね備えたモデルとして比較的人気を集めたRX-8だけに、執筆時点でカーセンサーには470台ほどの中古車が掲載されており、このテの車両としては多い部類となるでしょう。
価格帯は約20万~440万円と幅広いものの、平均価格は95.2万円と100万円を切っています。
300万円を超える高値となっているのは最終特別仕様車の「スピリットR」のMT車が大半で、それ以外のモデルであれば、後期型であっても200万円台で十分狙うことができます。
一方、安価なものは初期型に近いAT車が大半で、MT車も標準エンジンの5速MT車が中心となっている点は頭に入れておきたいところでしょう。
とはいえスポーツモデルということもあって、MT車は全体の7割弱に当たる320台ほどで、その中でもハイパワーエンジンを搭載する6速MT車は280台ほどと上級グレードの割合が高くなっているのもスポーツカーらしい特徴です。
「RX-8やめとけ」は本当?
それではここからは本題である「RX-8やめとけ」は本当か、検討してみることにしましょう。
RX-8をやめとけ、といわれる理由の大半はロータリーエンジンであることが原因と言って間違いないでしょう。といってもロータリーエンジン自体に問題があるのではなく、ロータリーエンジンは過去のメンテナンスや乗り方によってコンディションが大きく異なってきてしまうエンジンだからです。
非常に繊細なロータリーエンジンだけに、定期的かつ適切なオイルを用いたオイル交換はもちろんのこと、あまりにエンジンを回すことなく乗り続けていると、カーボンが溜まって最終的にエンジンへ悪影響を及ぼすことも珍しくありません。
そのため、中古車を購入するときはある程度車両の状態を自分で判断できるスキルがあった方が望ましく、購入後もキッチリとしたメンテナンスを続けられる人でなければ、好調を維持するのは難しいことから否定的な声も少なくないというのが事実です。
また、ロータリーエンジンを搭載したスポーツモデルといっても、RX-7のようなターボエンジンを搭載したピュアスポーツモデルではないため、パワフルな走りを求めて購入するとガッカリするというのも理由としてあげられそうです。
そして、4ドアの4座モデルとはいっても、RX-7に比べれば飛躍的に実用性はアップしているものの、一般的なセダンに比べるとリアシートは窮屈ですし、ドアもフロント側が開いていないとリアドアが開けられないので(小さな子供などには安全ですが)、利便性は一歩劣ることも覚悟しておかなければならないでしょう。
RX-8をオススメできる人、できない人
RX-8をオススメできる人は?
では、RX-8をオススメできる人はどんな人でしょうか?
ロータリーエンジンならではの気持ち良さや、FRらしくシャープなハンドリングを備えたスポーツカーを手頃に手に入れたい人にはオススメです。
また、家庭の事情などで先代のRX-7のような2シーターのスポーツカーを選ぶことができない、つまりスポーツカーでも4座がマストな人にもオススメできるモデルなのは間違いありません。
ただし、ある程度車両の状態を自分で判断できるスキルがあり、購入後も細かいメンテナンスが必須というのは前述のとおりです。
ちなみに、ご自身に知識があるのがベストではありますが、そこまで知識がないという人は、ロータリーを専門的に扱っているプロショップなどで状態の説明を受けながら購入すれば、そこまでひどい状態の車両を買ってしまうという悲劇は避けられるでしょう。
RX-8をオススメできない人は?
一方で、RX-8をオススメできないのはどんな人でしょうか。
燃費性能は正直言って悪く、すべてのグレードでハイオクガソリン仕様となっており、さらにはこまめなメンテナンスも必須なことから、ランニングコストを抑えたいという人にはオススメできないのが正直なところです。
また、搭載されるNAロータリーエンジンはとても気持ちの良いものであることは間違いないのですが、RX-7に搭載されるロータリーターボほどのパワフルさはありません。そのため、ハイパワースポーツカーを求める人にはオススメできません。
いま中古車を狙うなら? ニーズ別オススメな選び方・ポイント
前述したとおり、およそ9年という長いモデルライフとなったRX-8だけに、年式はもちろん中古車価格も約20万~440万円と幅広くなっています。
また、AT車が1/3程度を占め多いのも、RX-8の特徴でしょう。
以上を踏まえ、ニーズ別にどんな選び方をすればよいか考えてみます。
とにかく安く手に入れたいなら?
安いものでは支払総額でも30万円台から見つけることができますが、激安の部類に入るモデルを購入するのであれば、ある程度の知識と目利きは必須。
また、低価格帯では初期型のAT車の割合が高く、MTにこだわらない人ならチェックしてみるのも良いでしょう。支払総額50万円程度で走行距離6万km前後の物件もヒットします。
▼検索条件
マツダ RX-8(初代)×AT×全国 ※価格昇順
ちなみにMT車も全くないわけではありませんが、走行距離10万kmを超えた修復歴あり車なども多いため、かなり上級者向けと言って良いでしょう。
▼検索条件
マツダ RX-8(初代)×MT×全国 ※価格昇順
いずれにしろ、低価格帯のRX-8を狙うなら、予算をすべて車両購入につぎ込むのではなく、ある程度はメンテナンスや修理の費用としてキープしておくことも必要になります。
幸いにも現在もロータリーエンジンはメーカーから新品が供給されているため、修復歴のない多走行車を購入し、新品エンジンに載せ替える(費用目安は工賃込で100万円前後)というのも選択肢のひとつです。
程度重視で手に入れたいなら?
逆にそこまで知識がなく、なるべく程度の良さそうなものを選びたいということであれば、RX-8やロータリーエンジンに精通している専門店で購入するのがオススメ。ウイークポイントやメンテナンス方法などの知識も豊富なため、力強い味方になってくれるはずです。
できればエンジンの圧縮値を記載しているような専門店で買うのが安心ですが、そうでなければ実際にエンジンを始動させてみることで大まかな状態を把握することができます。もし、セルを回してもなかなかエンジンが始動しない場合はかなりエンジンがくたびれていると思われるので、そういった車両は避けた方が賢明でしょう。
そして、2008年3月に実施されたマイナーチェンジ後の後期モデルであれば、信頼性もかなり向上しているため、比較的安心して乗ることができるでしょう。
後期型になれば当然価格は高くなる傾向にありますが、走行距離10万km以下で修復歴なしのAT車なら総額150万円前後から見つけることができ、200万円近くまで予算をアップすることができれば6万km以下の車両も複数射程圏内となります。
▼検索条件
マツダ RX-8(初代)×全国
なお、最後の特別仕様車である「スピリットR」のMT車も、低走行でコンディションが期待できそうな物件が多くヒットしますが、そのような物件は軒並み300万円を超えるプレミア価格になっています。予算が許すのであれば、ぜひチェックしてみてください。
▼検索条件
マツダ RX-8(初代)×スピリットR×全国
このように、ロータリーエンジンというやや癖のあるパワートレインを搭載しているが故に、ネガティブな印象も持たれがちなRX-8ではありますが、その特性をしっかり理解して適切なメンテナンスをしていれば、これほど魅力的な4ドアモデルは他に存在しないと言って良いでしょう。
これはRX-8以外の趣味性の高いモデルにも共通することではありますが、「RX-8を(なんの知識もなくメンテナンスせずに乗るのは)やめとけ」ということなのです。
ちなみに、カーセンサー編集部にも社用車として中古で購入した前期型のRX-8が存在していますが、しっかりと定期メンテナンスを行っていることもあってか、現在まで大きなトラブルもなく好調を維持しています!
楽しい車であることは間違いないので、この記事を参考に購入を検討していただければ幸いです。
▼検索条件
マツダ RX-8(初代)×全国※記事内の情報は2023年10月18日時点のものです
自動車ライター
小鮒康一(フナタン)
スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車のリーフを買ってしまう暴挙に出る。現在はリーフを手放し3代目インサイトをメインに、NA、NB2台のロードスターや初代パルサー、S660に17系クラウンなど雑多な車種を所有中。