シルビア

ドリフト走行とは? 向いている車とは? 全10モデルをピックアップ!

ドリフト走行とは、モータースポーツのドライビングテクニックのひとつで、後輪タイヤを滑らせながらアクセルやステアリングのコントロールでコーナーを抜けていくもの。近年ではそのドリフト走行のテクニックのみを競う競技が生まれるほど、ポピュラーなものとなっています。

今回はそんなドリフト走行を楽しむうえで定番となった車種と、定番車種が高騰している今だからうれしい価格重視で狙いやすいズラシ車種を、それぞれ5モデルピックアップして紹介したいと思います!
 

 

ドリフト走行に向いている車の「条件」は?

後輪を滑らせるドリフト走行には、向いている車とそうでない車が存在します。まずはその条件を3つに整理してみましょう。

第1の条件は、後輪を滑らせるということで、駆動方式がFR(フロントエンジン、リアドライブ)であること

それ以外の車両でもドリフト走行が絶対にできないワケではありませんが、前輪駆動車では後輪が駆動しないためにドリフト走行をキープすることが難しくなりますし、四輪駆動車も同様にフロントが引っ張る挙動をするため、ドリフト状態を維持するのが難しいのです。

第2の条件は、ある程度のパワーがあること

後輪を滑らせるためには様々な方法がありますが、パワーに任せてリアを滑らせるパワースライドという方法は基本中の基本であり、ドリフト状態を維持するのにもパワーはあるに越したことはありません。

第3の条件は、アフターパーツが豊富に揃っていること

これは絶対条件ではありませんが、ドリフト走行をするにはLSDと呼ばれる駆動系のパーツや足回り、ブレーキなどに手を加えることでよりドリフトがしやすくなったり、ドリフト状態を維持しやすくなるため、こういったアイテムがリリースされている車種の方が有利となるのです。
 

 

ドリフト走行 定番モデル5選

ドリフト走行に向いている車の条件がわかったところで、まずは条件を満たしている「定番車種」を紹介していきましょう!
 

 

【定番モデル1】日産 シルビア(S13、S14、S15系)

シルビア
シルビア
シルビア
シルビア▲上からS13、S14(前期)、S14(後期)、S15となります

もともとはスペシャリティークーペとして誕生したシルビアではありますが、FRレイアウトでターボモデルも用意されるということからモータースポーツの世界でも活躍を見せ、ドリフトユーザーにも愛される車種となっています。

1988年に登場したS13型から、2002年に終売したS15型までは型式こそ異なるものの、基本的なプラットフォームを共有していることもあり、チューニングパーツやノウハウが横展開できるというのが最大の特徴。

搭載エンジンはS13型の初期型のみCA18型という1.8Lエンジンが搭載されていましたが、1991年1月のマイナーチェンジ以降はS15型までSR20型という2Lエンジンが搭載されており、このターボモデルであるSR20DET型を搭載するモデルがベースとなることがほとんどです。
 

シルビア▲こちらはSR20型エンジンです

また、NAモデルやAT車であってもターボエンジンとMTを換装する手法が確立されているのも、ドリフトユーザーに愛されたモデルならではと言えるでしょう。

そんなシルビアですが、中古車の掲載台数は3世代合わせて300台ほど。ターボのMT車に絞ると185台となっています。

フルノーマル低走行の物件が新車価格を超えているのは相変わらずですが、ターボMTでも安いものは総額200万円を切るものも存在しており、一時のバブルははじけた印象。総額250万円ほどの予算があれば即ドリ仕様のものも豊富に見つかりますが、メンテナンス費用は別途確保しておきたいところです。
 

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【定番モデル2】日産 180SX(初代)

180SX▲S13の兄弟車である180SX

S13型シルビアの兄弟車として生まれた180SXは、S13と共通のプラットフォームをもちながら、ハッチバックのボディとリトラクタブル式ヘッドライトをもち、全く異なる外観をもっていたことが特徴です。

車名からもわかるように、当初はS13シルビアと同じく1.8Lエンジンを搭載するモデルとして登場しましたが、シルビアと同じく1991年1月からは2Lエンジンに換装。ただし、車名は180SXのままとなっています。

シルビアは1993年にS14型にフルモデルチェンジを果たしますが、180SXはそのまま販売が継続され、1999年にS15型シルビアが登場するまで併売されていたのも特徴でした。

そんな180SXはシルビアよりもスポーティなキャラクターが与えられており、当初はターボモデルのみのラインナップで、NAモデルが追加されるのは1996年秋に実施されたマイナーチェンジ以降だったのです。
 

180SX▲ハッチバックスタイルで人気を博したモデル

180SXの中古車は執筆時点で103台。その中でターボのMT車は88台とシルビアよりも割合は多めとなっています。

こちらもフルノーマル低走行の車両はプレミア価格となっている一方で、ターボMT車でも総額200万円を切るものが存在するのはシルビアと同じ。こちらも総額250万円ほどの予算である程度仕上がったドリ車を狙うことができる価格帯となっていました。
 

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【定番モデル3】トヨタ マークII、チェイサー、クレスタ(100系)

マークⅡ
マークⅡ
マークⅡ▲上からマークⅡ、チェイサー、クレスタとなります

トヨタのミドルクラスのセダンとして長らく多くのユーザーに愛され続けてきたマークII 3兄弟。その最後の3兄弟体制となったのが、1996年9月に登場した100系と呼ばれるモデルでした。

3兄弟といわれるようにこちらも基本的なプラットフォームは共有していましたが、マークIIとチェイサーは4ドアハードトップ、クレスタは4ドアセダンとボディタイプが異なっています。

そんなマークII 3兄弟はワイドなバリエーションをもつことでも知られていますが、ドリフトユーザーに人気なのは280psを発生する直列6気筒2.5Lターボエンジンの1JZ-GTE型エンジンを搭載するグレード。

マークIIとチェイサーでは「ツアラーV」、クレスタでは「ルラーンG」と名付けられたグレードに搭載されたこのエンジンはチューニングのノウハウも豊富で、チューニング次第では500psオーバーも夢ではないもの。

ただ、ツアラーVには純正で5速MTが用意されていましたが、ルラーンGはATのみのラインナップとなっており、トランスミッションを換装された車両も多く存在しています。
 

マークⅡ▲タフな1JZエンジンはチューニング向けで人気が高いです

そんなマークII3兄弟の1JZ-GTE型エンジンを搭載した中古車は120台がヒット。その中でMT車(換装車も含む)は97台となっていました。

こちらもフルノーマル低走行のターボMT車はコレクター価格となっていた他、比較的状態の良い車両をベースに作られたドリフト仕様の車両は総額400万~500万円弱という価格帯で、安価なものでも総額250万円以上の予算は見ておきたいところ。

一方、AT車であれば総額200万円前後から狙うことができます。最近ではATのままドリフトを楽しむユーザーも増えてきているので、換装ベースでなくても狙い目と言えるかもしれません。
 

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【定番モデル4】日産 スカイライン(R34型)

スカイライン
スカイライン▲上が4ドアで下が2ドアモデルです

R34型のスカイラインというとGT-Rのイメージが強いモデルですが、ドリフトのベース車としては4WDのGT-RよりもFRの通常モデルがオススメと言えるでしょう。

スカイラインにもいくつかのエンジンラインナップが存在しますが、ドリフトに使うのであれば、やはりパワーに余裕のあるRB25DET型エンジンを搭載した「25GTターボ」系のグレードがオススメ。

ボディタイプは2ドアクーペと4ドアセダンが存在し、どちらにもターボモデルが設定されていますが、どちらもホイールベースの長さは共通となっており、車の動きはそこまで差はないようです。
 

スカイライン▲インテリアはおおむねこんな感じです

中古車としてはエンジンやミッションを換装した車両も含め、ターボのMT車はクーペが47台、セダンが55台とほぼ同数。

以前は、D1グランプリにレジェンドドライバーの野村謙選手がR34の4ドアで参戦していたこともあって、4ドアの方が高値となっていた時期もありましたが、現在は2ドアクーペの方が高値となっており、価格帯はセダンが210万~579.8万円、クーペが288万~698万円となっています。

クーペは総額300万円以下の物件は存在しない一方で、セダンは総額200万円台の物件もそれなりに存在しており、ドリフトユースでは交換用のタイヤを積みやすいこともメリットになりますので、価格の比較的安いセダンの方がオススメと言えるかもしれません。
 

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【定番モデル5】マツダ RX-7(FD3S型)

FD▲こちらは前期型のRX-7です

現在のところ、最後のロータリーターボエンジンを搭載するピュアスポーツモデルとして知られるFD型RX-7。1991年から2003年と比較的長いモデルライフを誇り、エンジンこそ13B-REW型1種類であるものの、グレードや年式によって255~280psまでのチューニングの違いがあるのも特徴です。

ただ、カスタムのベースとして考えるのであれば、グレードの違いよりも現状の状態を優先した方がいい年式に突入しており、信頼できる専門店を中心に探す方がいいかもしれません。また、AT車は一部グレードに設定されていただけとなるので、市場に存在している中古車の多くはMT車というのもRX-7ならではでしょう。

ちなみに、カーセンサー上では1991年12月~1997年10月までが「アンフィニRX-7」、それ以降のモデルが「RX-7」となっていますが、これはモデル途中で販売体系が変更されて取り扱いブランド名が変わったためであり、基本的には同一車種と考えて問題ありません。
 

FD▲こちらがフェイスリフトされた後期型です

そんなFD型RX-7の中古車は執筆時点で182台の掲載があり、AT車はわずか10台のみ。MT車に絞ってみると価格帯は278万~2200万円と幅広く、プレミア価格となっているのは最終限定車の「スピリットR」シリーズとなっていました。

総額で300万円以下の物件はほぼなく、最低でも350万円くらいの予算は見ておきたいというのが現状ですが、繊細なロータリーエンジンを搭載するモデルなだけに、エンジンの圧縮値を明記していたり、距離が進んでいてもオーバーホール済みとなっている物件の方が安心感は高いと言えるでしょう。
 

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ドリフト走行 ズラシモデル5選

ここまでは定番のドリ車ベースを紹介してきましたが、すでにどのモデルも高額になりつつあり、「ドリフトをするのに気が引ける……」という方もいらっしゃることでしょう。

そこで、定番車種以外でドリフト走行が楽しめる、比較的買いやすい価格帯のズラシモデルを、独断と偏見でピックアップしてみました!
 

 

【ズラシモデル1】日産 フェアレディZ(Z33型)

Z▲映画「ワイルドスピード」にも登場したZ33型

GT-Rと並んで日産を代表するスポーツカーであるフェアレディZ。先日ビッグマイナーチェンジを実施した新型が登場したことでも話題を集めましたが、その5代目モデルはターボモデルを廃し、大排気量NAモデルへと生まれ変わりました。

NAエンジンと言っても初期型のVQ35DE型で280ps、2005年9月には294ps、そして2007年1月にはVQ35HR型に進化して313psを発生するなど必要十分。組み合わされるトランスミッションも6速MTとなっています。

ただ、Z33型はドリフト走行をしていると水温、油温の上昇が厳しく、ステアリングの切れ角が小さいという弱点があるため、ドリフトを楽しむには何らかの対策が必要となるでしょう。

加えて、素材としては申し分ないのですが、定番モデルと比べ、アフターパーツが若干少ないという点もズラシモデルの理由となります。
 

Z▲こちらがVQ35DE型エンジンです

そんなZ33フェアレディZの中古車は339台が存在し、MT車はおよそ半数の156台。安いものでは総額100万円以下で狙えるものも多く、走行距離は多めながらしっかりメンテナンスがされてきた車両であれば比較的丈夫という特徴があります。
 

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【ズラシモデル2】マツダ ロードスター(NC型)

ロードスター▲3ナンバー化された3代目ロードスター

一貫して人馬一体の走りが楽しめることで世界中から愛されているロードスター。その中でも3代目モデルのNC型は全車2Lエンジンを搭載したことで、歴代モデルの中でも比較的パワーに余裕があるモデルとなっています。

もともとFRらしい走り味が楽しめるロードスターだけに、後輪を流して走るのも得意とする部分ではありますが、本格的なドリフト走行を楽しむにはやはりパワーがやや物足りない点と、ステアリングの切れ角が少なめな点、そしてホイールベースが短いという点が気になるところ。

とはいえ、競技ドリフトのような角度の付いたドリフトを求めないのであれば、リアを流してコントロールする楽しみは十分に味わうことができる1台と言えるでしょう。
 

ロードスター▲インテリアはこんな感じです

中古車としては260台の掲載があり、MT車はおよそ半数の142台。安いものでは総額70万円前後から見つけることができますが、初期型はすでに20年弱が経過したモデルということもあり、メンテナンスの費用もキープしておきたいところです。
 

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【ズラシモデル3】トヨタ 86/スバル BRZ(初代)

86
BRZ▲上が86で下がBRZです

トヨタとスバルの共同開発で生まれた、FRスポーツの86/BRZ。現在は2.4Lに排気量が拡大し、各部が進化した2代目が販売中ですが、2Lエンジンの初代モデルもFRスポーツとしてまだまだ人気の1台です。

もともとドリフトカルチャーを意識して生まれた車種ということもあり、アフターパーツも豊富に揃っている点も特徴ですが、ドリフトを楽しむには公称200ps(後期型は207ps)のエンジンパワーはやや物足りなさを感じるかもしれません。

ただ、ターボやスーパーチャージャーといった過給機チューンも出揃っているため、ステップアップしやすいという特徴も86/BRZならではと言えるでしょう。
 

86▲トヨタの直噴技術D-4Sとスバルの水平対向エンジンを組み合わせたパワーユニット

中古車は86が1175台(MTは587台)、BRZが331台(MTは213台)と選び放題な状態で、安いものでは総額100万円を切るものもようやく登場してきたといった状況。

150万円ほどの予算を見ておけば、ある程度社外パーツが付いて走行距離が10万km以下というものも射程圏内となります。
 

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【ズラシモデル4】トヨタ アルテッツァ(初代)

アルテッツァ▲AE86の再来といわれたスポーツセダン

登場前は「AE86の再来」ともいわれ、期待値の高かったアルテッツァですが、実際はFRというレイアウトこそ共通ながらセダンボディをもつ2Lクラスの車両ということで、AE86とは異なるモデルとなっていました。

とはいえ、ワンメイクレースも実施されるほどスポーティなセダンとなっており、D1グランプリにもアルテッツァをベースとしたマシンが参戦するなど、その秘めたポテンシャルは折り紙付き。ただ、実際はやはりパワー不足を感じるシーンもあるため、派手なドリフトを望むのであればチューニングが必須となりそうです。

搭載エンジンは直列6気筒の1G-FE型と直列4気筒の3S-GE型(ともに2L)が存在しますが、ドリフトを楽しむのであれば、210psを発生する3S-GE型を搭載する「RS200」系がメインとなるでしょう。
 

アルテッツァ▲こちらが4気筒の3S-GE型エンジンです

アルテッツァの中古車は全体で152台、RS200系のMT車に絞ると92台がヒットし、支払総額70万円台から見つけることができますが、低走行の物件では総額250万円前後のものも存在するなど、二極化が進んでいます。
 

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【ズラシモデル5】マツダ RX-8(初代)

RX-8▲現状マツダ最後のロータリースポーツ

RX-7の実質的な後継車種として2003年に登場したRX-8。2ドアクーペだったRX-7に対してRX-8は4ドアとなり、エンジンもロータリーターボからNAロータリーに変更されるなど、大きく方向転換がなされました。

とはいえ、FRレイアウトのスポーツモデルという部分は同一であり、後輪駆動らしい走りが楽しめるというのは不変です。

エンジンは通常モデルとハイパワーモデルが存在し、ハイパワーモデルは前期型で250ps、後期型で235psとなっており、組み合わされるマニュアルトランスミッションも通常モデルは5速なのに対し、ハイパワーモデルは6速となっていました。
 

RX-8▲観音開きのドアはファミリーユースにも支持されました

やはりドリフトを楽しむのであれば、パワーはあるに越したことはないので、狙うとなるとハイパワーモデルとなりますが、そうなると451台あるRX-8の中古車の中で244台となります。

その中で安いものでは総額50万円台から見つけることができ、100万円ほどの予算があれば走行6万km前後の修復歴なしの車両も射程圏内となり、比較的安価にロータリーのフィーリングを楽しむことができます。

一方、RX-7に比べるとターボでない分、パワー不足を感じることになる可能性があることも考慮しておきたいところです。
 

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今回は、ドリフトを楽しむのにピッタリな定番車種とハズシの車種を合わせて10台ご紹介しましたが、ドリフト走行は比較的車に負担がかかることもあり、どのモデルを狙うにしても購入後のメンテナンス費用やタイヤ代も確保しておきたいところ。

特に定番車種はすでに登場から20年以上が経過しているモデルであるため、場合によってはレストアに近い作業が必要になる可能性があることも覚悟しておかないといけないフェーズに入っている点も注意しましょう!

※記事内の情報は2023年5月10日時点のものです
 

文/小鮒康一 写真/カーセンサー、日産、トヨタ、マツダ、スバル
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車のリーフを買ってしまう暴挙に出る。現在はリーフを手放し3代目インサイトをメインに、NA、NB2台のロードスターや初代パルサー、S660に17系クラウンなど雑多な車種を所有中。