マセラティ グレカーレ▲グレカーレはレヴァンテに続くマセラティ2モデル目のラグジュアリーSUVとして2022年に発表された。マイルドハイブリッドのGTとモデナ、MC20と同じV6ネットゥーノエンジンを搭載するトロフェオをラインナップ。まずはベーシックグレードのGTが国内に導入された

SUV嫌いに、品質が劇的に向上したマセラティのミドルクラスSUVを処方!

ミッドシップスーパーカーのMC20登場以降、マセラティのプロダクト品質が変わった。デザイン性においては昔からこのブランドの得意とするところだったけれども、実際の見栄えや質感が大きく向上したのだ。新型グラントゥーリズモ然り、ミッドサイズSUVのグレカーレ然り。否、時系列的に正確に言えばグレカーレ以降のクオリティが上がったというべきか。これはマセラティ首脳陣も大いに認めるところだった。

グレカーレはステランティスグループのFRプラットフォーム“ジョルジョ”をベースに開発されている。つまり、マニアの好むFRベースのSUVというわけだ。アルファ ロメオがジュリアやステルヴィオで先に使ったとはいうものの、開発自体はマセラティの本拠地があるモーターバレー・モデナで極秘裏に行われたものだ。
 

マセラティ グレカーレ▲テールライトはジウジアーロがデザインした往年の名車3200GTがモチーフ

まずは4気筒エンジンを積んだベーシックグレードのGTが日本市場へ導入されている。実物のグレカーレには写真で見るよりずっと精悍な印象を抱いた。特にノーズとオシリの形状がいい。全体的にふくよかな面で構成されており、とてもクリーンな存在感を放っている。嫌味がないとでも言おうか。いばり散らすSUVでないところがいい。奥ゆかしい。

外装以上にインテリアが良くなった。劇的だ。正直、直近のセダン系やレヴァンテの内装は、デザイン的にもそして肝心のマテリアルの質感でも個人的にはさほど好感を持つことはなかった。グレカーレのそれはモダンでラグジュアリー、レヴァンテより高級にさえ筆者の目には映る。マテリアル選びからフィニッシュまで、デザイナーの神経が行き届いているからだと思う。
 

マセラティ グレカーレ▲液晶のメーターパネルと2つのディスプレイをセンターコンソールに用いることでクラスターまわりのボタンをなくし、モダンなデザインに仕立てている

走り出してみれば、なるほど乗り心地も悪くない。というか、このクラスのスポーツ性の高いSUVの中では上々の部類だ。4気筒エンジンは必要十分な動力パフォーマンスを提供する。もっとも、以前のマルチシリンダーエンジンのごとく官能的なフィールがあるかと問われれば、さほどでもないと答えるほかない。エンジン好きの筆者としては、新世代のV6ネットゥーノを積んだトロフェオを待ちたい。

速度を上げていくにつれて乗り心地には滑らかさが増し、背の高さを感じさせないようになっていく。要するにマセラティの本分はGT=グラントゥーリズモなわけで、その名もずばりGTというグレード名をもつからには、そんなふうに走って当然というわけだろう。これでもう少し燃費性能に優れてくれれば……、ラインナップにディーゼルがないのは惜しいと、気に入ったモデルであるがゆえに個人的なマイナス点がかえって加算されてしまう。

よくできたGTだが、スポーツ性も忘れていなかった。ワインディングロードに入れば、背が高いだけのスポーツカーで、中でもフロントアクスルを自在に好みのラインへと置きにいける感覚はよくできたスポーツカーのそれだ。優れたトレース性にも思わずニヤリ。

実はイタリアでかなりのラフロードを走ったことがある。なんの不都合もなく荒れ果てたがれきの斜面を駆け上がった。シャシーの制御が細かく利いてコントローラブル。頼もしい走りをみせた。

カッコよくていいサイズ、よくできたGTでスポーツカー流でありラフロードもこなす。そんなSUVを逃せばもう他に買うべきモデルなどないのではないか。いよいよ追い詰められそうになったけれども、やっぱりマセラティといえばエンジンだ。4気筒ではかなり物足りない。トロフェオを待ってみたい。
 

マセラティ グレカーレ▲GTは2L直4ターボエンジンとモーター、そしてeブースター(電気式スーパーチャージャー)を組み合わせるマイルドハイブリッドを搭載
マセラティ グレカーレ▲モデナとトロフェオはブラック、GTはチョコレート色が標準となる。それ以外のカラーはオプションで選択可能
マセラティ グレカーレ▲後席空間はマセラティがクラス最大級という広さを確保する
マセラティ グレカーレ▲ラゲージ容量はマイルドハイブリッドのGTとモデナが535L、トロフェオは570Lとなる

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マセラティ グレカーレ× 全国
文/西川淳 写真/郡大二郎

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。