現行アバルト 595「前期型」は新車よりも250万円安いが、“買い”なのか? 予算160万円からコンペティツィオーネも狙える
2022/09/30
お安く買えるアバルト 595の前期型は“買い”なのか?
いわゆるホットハッチ好きにはたまらないイタリア車、アバルト 595。そのデザインもたたずまいも、そして諸性能も「今どきMTが選べる!」という点も、もうすべてが素晴らしいわけですが、素晴らしいだけあって、新車のアバルトは決して安い車ではありません。
具体的には、いちばん安い「F595」というやつでも車両本体価格422万円ですし、中古車を買うにしても、2017年2月以降のいわゆる後期型は総額200万円以上で、ハイスペグレードである595 コンペティツィオーネの後期型は、安めの物件であっても総額250万円は下りません。
しかし、同じアバルト 595であっても「前期型の中古車」でならば、コンペティツィオーネの比較的低走行な物件であっても総額160万円ぐらいから狙えるのです。
「安っ! お買い得!」と思うわけですが、とはいえ“安物買いの銭失い”になってしまっては元も子もありません。
ということで、比較的お安く買えるアバルト 595の前期型は果たして“買い”なのかどうか、じっくり考えてみたいと思います。
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アバルト 595(現行・前期型) × 全国ボディサイズ・見た目:前期型と後期型の違いはさほど大きくはない
アバルト 595は、フィアット 500をベースとするアバルトブランドのホットハッチアバルト 500の上位モデルとして2012月に誕生。グレード構成は快適性と上質感を重視した「ツーリズモ」と、スポーツ性重視の「コンペティツィオーネ」に大別されます。
エクステリアデザインは大元のベース車両であるフィアット 500によく似てはいるものの、インタークーラー冷却用エアインテーク付きのフロントバンパーや、ディフューザー一体型リアバンパーなどのエアロパーツにより、アバルト 595のアピアランスは「別物」と言える雰囲気に仕上がっています。
ボディサイズも、フィアット 500とアバルト 595では異なります。
・フィアット 500
全長:3545mm × 全幅:1625mm × 全高:1515mm
・アバルト 595(初期年式)
全長:3655mm × 全幅:1625mm × 全高:1515mm
なんとなくの先入観でアバルト 595の方が車幅が広いようにも思えますが、実は全幅はフィアット 500と同じで、大ぶりな前後バンパーの分だけ全長が11cm長い――というディメンションになっています。
2017年2月のマイナーチェンジで前後バンパーのデザインがよりアグレッシブになり、フロントバンパーのエアインテーク部に「ABARTH」の浮き文字があしらわれたり、アルミホイールのデザインが変更されたりはしました。
また、インテリアでも「Gメーター」のグラフィックが刷新されたり、5インチタッチパネルの新型ラジオを採用することで、USBやBluetoothなどの外部入力に対応できるようにもなりました。
しかし、逆に言えば「変更点はその程度」ということであり、「後期型からは顔つきなどが劇的に変わった」みたいなことはありません。
そのため――もちろん考え方は人それぞれでしょうが――前期型を選んだとしても「見た目がちょっと弱い」という事態にはならないはずです。
エンジンタイプ・走行性能:出力がアップしたのは前期型の途中から
アバルト 595の搭載エンジンは、デビュー当初はツーリズモもコンペティツィオーネも最高出力160psの1.4L 直4DOHCターボ。トランスミッションも両車5速セミATでした。
2014年3月にはコンペティツィオーネに5速MTを追加し、2016年3月にはコンペティツィオーネのエンジン最高出力を従来の160psから180psに強化。それと同時に、このタイミングでコンペティツィオーネにはブレンボ製4ピストンフロントブレーキキャリパーと17インチのアロイホイールが採用されています。
そして2017年2月には前述したマイナーチェンジが行われ、ツーリズモとツーリズモCのエンジン最高出力160psから165psに変更。ベースグレードも同135ps(MT)/140ps(AT)から145psに変更されましたが、コンペティツィオーネのエンジンには特に変更は加えられませんでした。
アバルト 595シリーズの走りは――特に、トップモデルであるコンペティツィオーネの走りは、まさに「痛快!」の一語に尽きます。
車両重量わずか1120kgという小さくて軽いボディに(2016年2月までの前期型の場合)160psのターボエンジンを合わせているわけですから、加速感はほとんど何かが弾けるかのごとき感触。そしてハンドリング性能は「ほぼレーシングカート」といった趣きで、すべてがとにかくクイック。
その分だけ乗り心地は現代の車としてはかなりハードで、自分で運転する分には特に問題は感じませんが、同乗者からは苦情が出るかもしれません。しかし、そういった問題を押しのけてでも「運転好き」の人がこの車を買ったならば、まぁ病みつきになってしまうことは間違いないでしょう。
後期型はさらに速いですが、160psの前期型でもおなかいっぱいになるぐらいの速さとクイックさを堪能できます。
逆に言うと、ここまでの“ホットさ”を求めない人にはまったく向いていないのが595 コンペティツィオーネという車。普段使いにおける乗り心地などを重視したい人は、コンペティツィオーネではなくツーリズモを狙うか、もしくはまったく別の車を探した方がいいでしょう。
先進機能・安全装備:いわゆる先進安全装備はほぼゼロ……
いわゆる先進安全装備の類は、アバルト 595にはまったくと言っていいほど付いていません。
さすがにABS(アンチロック・ブレーキシステム)やエアバッグ、ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)などは標準装備ですし、リアパーキングセンサーも付いていますが、「自動でブレーキをかけてくれる装置」や「車線を逸脱しそうなときに警報を鳴らし、ついでに自分の車線に勝手に戻してくれる装置」みたいなものは皆無なのです。
まぁアバルト 595はある意味レーシングカートのようなものですので、そういった装備を求めるのはそもそもお門違いなのかもしれません。ちなみに2017年2月のマイナーチェンジの際も先進安全装備は追加されなかったため、ここについては前期型も後期型も差はありません。
中古車のオススメ:安価に選ぶなら総額100万円後半のコンペティツィオーネ。ただしMT車は200万円台前半
そんなこんなのアバルト 595の前期型の中古車を狙う場合、もしも「できるだけ手頃な予算で入手したい」と考えるのであれば、まずひとつの狙い目は総額160万~190万円付近のコンペティツィオーネということになります。
この価格レンジにて、走行距離3万km台から5万km台までの修復歴がない1台を見つけることができます。
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アバルト 595(現行・前期型) × 総額200万円未満 × コンペティツィオーネただし、これはAT車(5速シーケンシャルトランスミッション車)に限った話。「やはり自分は5速MTがいい!」となった場合には、総額200万~250万円ぐらいの予算が必要となります。やはり車のキャラクターがかなりスパルタンですので、どうしてもMT車の人気の方が高く、結果として高くなってしまうようです。
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アバルト 595(現行・前期型) × コンペティツィオーネ × MTMTのコンペティツィオーネだとどうしても高くなってしまうため、ここはいっそのこと「総額150万~190万円あたりのゾーンで595 ツーリズモを狙う」という行動に出てもいいのかもしれません。
コンペティツィオーネよりはまったりしていますが、そのまったり感は「普段づかい」には向いています。MTであることへのこだわりがさほどないのであれば、総額100万円台でイケるツーリズモは悪くない選択になるはずです。
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アバルト 595(現行・前期型) × 総額200万円未満 × ツーリズモ逆に「ずっぽりとアバルト 595ならではの魅力=速さとスパルタンさに浸りたい!」というのであれば、狙うべきは2016年3月以降の前期型コンペティツィオーネ。
すなわち1.4Lターボエンジンの最高出力が160psから180psに強化された世代です。
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アバルト 595(現行・前期型) × 2016年3月以降 × コンペティツィオーネこちらを狙う場合の予算目安は、MT車を狙うなら総額250万~300万円、5速シーケンシャルで良しとするなら総額200万~250万円といったイメージです。
どちらを選んだとしても、「パワーウェイトレシオ6.2kg」の驚異的な世界を体験できるでしょう。
以上のとおりのモデルであるアバルト 595は――特にそのコンペティツィオーネは――一般的な「お買い物にも便利に使える1台」を探している人にはまったくもって不向きですが、純粋に「強烈な走りとどう猛な鼓動」みたいなものを堪能したい人にとっては、今やワン・アンド・オンリーといえる貴重な選択肢です。
そんなレアな存在を「現実的な予算」にて手に入れることができるアバルト 595の前期型中古車は、なんだかんだでやはり素敵な存在であるといえます。
万人向けではありませんが、「好きな人」にはたまらない1台。ご興味のある方は……ぜひ!
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アバルト 595(現行・前期型) × 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。