ルノー トゥインゴの新車は今、長期の納車待ち……。 でも大丈夫、我々には100万円台&低走行な「前期型中古車」があるじゃないか!
2022/09/18
新車を注文できたとしても、納車は半年以上先とのこと……
「小粋な内外装デザインと超絶扱いやすいサイズ感、そしてRRレイアウトならではの味のある走りで、一部で大人気のフレンチコンパクト現行型ルノー トゥインゴ。
しかし相次ぐ価格変更により、新車価格は一番安いグレードでも今や225万円に達し、そもそも2022年9月上旬時点では「一時注文停止」なっています。
注文できたとしても、手元に届くまでに半年以上はかかる見通しとのことですので、「新車の現行型トゥインゴ」を手に入れるのは今や至難のワザとなっています。
しかし、同じ現行型のトゥインゴであっても「前期型の中古車」であれば、市場にはけっこうな数が出回っていますし、お値段的にも総額100万円ちょいから探すことができます。
そんな「現行型ルノー トゥインゴの前期型」とは果たしてどんな車で、今から買うとしたら“どれ”を選ぶのが正解なのでしょうか?
次章以降、もろもろ考えてみたいと思います。
▼検索条件
ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × 全国モデル概要:0.9Lのターボエンジンをリアに搭載するフレンチコンパクト
まずはルノー トゥインゴという車の概要をさくっとおさらいいたします。
フランスのルノーが1993年(※日本では2015年)から製造販売しているトゥインゴは、代々個性的なパッケージを採用している人気のコンパクトカー。
2016年7月に発売された通算3代目となる現行型は、スマート フォーフォーと主要なコンポーネントを共用し、エンジンもスマート フォーフォーと同じ0.9Lの直列3気筒ガソリンターボをリアに搭載し、後輪を駆動します。
現在、世界中のほとんどのコンパクトカーはエンジンをフロントに積んで前輪を駆動させるFF(フロントエンジン・前輪駆動)レイアウトを採用していますが、現行型トゥインゴはコンパクトカーとしてほぼ唯一といえるRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用することで、「小回りが利く」「操縦感覚が独特である(味がある)」などの特筆すべき個性を獲得しました。
日本仕様のボディサイズは全長:3620mm × 全幅:1650mm × 全高:1545mmで、乗車定員は4名。搭載されるエンジンは前述のとおり排気量0.9Lの直列3気筒 DOHC ターボで、最高出力90psと135N・mを発生。
トランスミッションはEDC(エフィシェントデュアルクラッチ)と呼ばれる6速DCTが基本ですが、グレードによっては5速MTを選択することもできます。
2016年7月に上陸した際のグレードは「インテンス」と「インテンス キャンバストップ」のみでしたが、その後は装備類を比較的簡素にしたエントリーグレード「ゼン」や、最高出力109psまでチューンした0.9L直3ターボを積む「GT」を追加。
その他、各種の限定車も多数上陸しています。
そして2019年8月には初のマイナーチェンジが行われ、内外装デザインを少々変更するとともに装備を充実させ、またグレードも6速DCTの「トゥインゴ EDC」のみに整理しました。このマイナーチェンジ以前の世代を、本稿では「前期型」とします。
その後は5速MTグレードや「インテンス」を復活させたり、73psのノンターボエンジンを搭載するベーシックグレード「S」を追加するなどしましたが、直近では「インテンス」「インテンス キャンバストップ」「インテンスMT」のみにグレードが再び整理され、それらも世界情勢の影響で「一時注文停止中」になっている――というのが、トゥインゴ(現行型)の大まかなヒストリーです。
居住性:RRレイアウトの恩恵で意外と悪くない
トゥインゴ(現行型)は「コンパクトカーの中でもとりわけ小さめな車」であるため、購入検討時は“居住性の悪さ”がどうしたって気になるかもしれません。
しかし結論から申し上げると、トゥインゴ(現行型)の居住性はまずまず良好です。
もちろん小さな車ですから「超広々! 荷物もたくさん載せられる!」なってことはありませんが、3ドアだった先代までと違って「5ドアになった」ということに加え、「先代比でホイールベースが12cm延びた」「RR化によりノーズ部分を短くできたため、インパネの位置が前寄りになった」等々により、前席は(当然ながら)普通に座れますし、全長約3.6mの車としては、後席も「まずまず広い」と感じるでしょう。
当然ながら大柄な成人が長時間座るのには不向きですが、小学生ぐらいのお子さんが座る分には十分な広さが確保されています。
また、荷室容量も4名乗車時は174Lと、ボディサイズなりに控えめですが、後席を倒せば最大980Lまで拡大可能で、助手席も倒せば2200mmまでの長尺物を載せることもできます。
走行性能:0.9Lターボエンジンに不足なし。そして小回り性能がすごい!
「排気量はたったの0.9Lで、最高出力も90psでしかない」という部分も不安のタネかもしれませんが、心配は御無用です。
0.9Lのターボエンジンはまずまず強力に加給されるため、1tちょいの軽量なボディをスイスイと加速させてくれます。自分ひとりで運転しているときはもちろんのこと、合計3名ぐらいの成人が乗車していたとしても、発進時や追い越し加速を行う際などにストレスを感じることはほぼありません。
また、リアエンジンゆえの「鼻先の軽さ」もトゥインゴ(現行型)の特徴ですので、山坂道などでは痛快にして軽快なハンドリングを楽しむこともできるでしょう。
そして、前述しましたが「小回り性能の高さ」も、この車の素晴らしい“走行性能”のひとつ。最小回転半径は4.3mでしかないため、Uターンをする際に「……ギリギリかな?」と思うような狭い場所でも、実際には「あれっ?」というぐらい余裕たっぷりにUターンを行うことができるのです。
なお、マイナーチェンジ後の後期型は0.9L直3ターボエンジンの最高出力が90psから92psに変更されましたが、この程度の出力差は、F1とかのレーサー以外は体感でわかるものではありません。
また、エンジン以外の「走りに関するメカニズム」も、実際はマイナーチェンジ時にいろいろ細かく変えているのでしょうが、公式な発表はされていませんので、総体としては「前期型も後期型も走りはだいたい同じである」と考えていいでしょう。
先進機能・安全装備:国産コンパクトと比べると正直ずいぶん劣る
先進安全装備は、トゥインゴ(現行型)という素晴らしい実用コンパクトカーの「数少ない弱点」と言っていいでしょう。
前期型の場合、いわゆる先進安全装備の類はまったく付いておらず、一部の限定車にLDW(車線逸脱警報)が付いているのみなのです。
国産車では、今や軽自動車であっても自動ブレーキは当然のように標準装備されるケースが多いですし、車種によってはアダプティブクルーズコントロールも標準またはオプションで装着できます。このあたりの装備を最重要視したいのであれば、正直トゥインゴではなく国産コンパクトカーまたは軽自動車を選んだ方がいいかもしれません。
とはいえこれは前期型に限った話ではなく、後期型でも、先進安全装備はマイナーチェンジ時に車線逸脱警報のみが標準装備となり、2020年5月の一部仕様変更でリアカメラとバックソナーが標準となった程度です。
中古車のオススメ:総額140万~160万円のインテンスまたはゼンで基本的には十分
さて、そんなこんなの前期型トゥインゴの中古車を買うならば、「何年式のどれ」に狙いを付けるのが正解なのでしょうか?
もしも「なるべく手頃な予算で入手したい」と考えるのであれば、狙い目は2017年式の「インテンス」または「ゼン」ということになるでしょう。
これらの走行距離2万km台から4万km台までの物件を、総額140万~160万円あたりのレンジで探してみるのが得策です。
▼検索条件
ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × インテンス & ゼン登場初年度である2016年式はさらにお安く狙えそうな気もするのですが、実際には2016年式の流通量はきわめて少なく、また中古車価格もなぜかちょっとお高めだったりします。
そのためここは最も流通量豊富で、それに伴って価格もこなれている場合が多い2017年式の、その中でも特に数が多いインテンスまたはゼン狙いでいきましょう。
インテンスとゼンの違いは、基本的には「上級仕様のインテンス、ベーシックなゼン」ということですが、より具体的には下記のとおりです。
・ゼンは「5速MT」を選択可能(前期型インテンスは6速DCTのみ)
・ゼンのエアコンはマニュアル式
・ゼンの足元はアルミホイールではなくスチールホイール+キャップ
・ゼンは「オートライト」機能なし
・ゼンは雨滴感応式オートワイパーではない
・その他……
上記の装備内容であることが「素のフランス車っぽくて逆にイイ!」と思えるのであれば、ゼンはオススメできるグレードです。そもそも「5速MTが選べる」というのが、ある種の人にとっては大きな魅力となるでしょう。
▼検索条件
ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × インテンス▼検索条件
ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × ゼン正直、総額140万~160万円のレンジでも十分悪くない感じの前期型のインテンスとゼンが狙えるわけですが、「自分はもっとお金を出す用意がある!」とおっしゃるのであれば、考え方は次の2つの方向性になるでしょう。
■方向性1:総額200万~250万円でGTを狙う
GTは、様々なチューンによって直列3気筒ターボエンジンの最高出力を109psまで引き上げ、専用のダンパーやアンチロールバー、17インチのアルミホイールなどを装着したホットハッチ。2017年9月にまずは200台の限定車として発売され、翌2018年2月からカタログモデルになりました。
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ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × GTGTの足回りはけっこう硬めで、エンジンの“回転落ち”も鋭くなるようにセッティングされていますので、「楽ちんな買い物グルマとしてトゥインゴを使いたい」という人にはあまり向きませんが、「ホットなハッチバックでガンガン走りたい!」と考えている人にはベストな選択肢です。
ただ、支払総額は200万円を超えることになってしまいます。
●方向性2:総額160万~190万円で“相当いい感じ”のインテンスまたはゼンを狙う
前述したとおり前期型のインテンスおよびゼンは、総額140万~160万円付近でもけっこういい感じの物件を普通に見つけることができます。
しかし価格レンジを1つ上げて「総額160万~190万円ぐらい」で探してみれば、ほとんど“素晴らしい”と言いたくなるような中古車も見つけることができます。具体的には内外装がよりキレイで、機関部分のコンディションもより良好で、さらにボディカラーがちょっとしゃれていたりする――ということです。
このあたりの判断をどうすべきかというのは人それぞれ異なるでしょうが、「良いものを長く使いたい」と考えるのであれば、総額100万円台後半の走行距離3万km以下くらいのインテンスまたはゼンは大いにオススメとなります。
▼検索条件
ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × 走行距離3万km以下 × インテンス & ゼンいずれにしましても、新車は値上がりしてしまった(というか注文停止中の)トゥインゴですが、「前期型の中古車」に目を向けてみれば、そこはパラダイス……というのはやや大げさかもしれませんが、「程良いお値段でいいやつが買える」という状況になっていることだけは確かです。
しゃれたコンパクトカーをお探しの方は、ぜひこの機会に「中古の現行・前期型トゥインゴ」に注目してみることをオススメいたします。
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ルノー トゥインゴ(現行・前期型) × 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。