扱いやすいサイズと走りの楽しさが両立したBMW 1シリーズ(2代目)は、予算100万円で狙えるクラス唯一の「FRレイアウト」モデルだ!
2022/08/17
普段使いも走りも◎なプレミアムハッチバック
「扱いやすいサイズのシャレた車」というのは世の中にたくさんあります。が、「それでいて運転がめっちゃ楽しい車」というのはレアですので、さらにそれを「手頃な価格で手に入れたい」と考えるのはけっこう無茶な話です。
しかし、そんな“無茶”を可能にするのが、2代目(先代)BMW 1シリーズという選択肢です。
1シリーズは、BMWのエントリーモデルに相当する5ドアハッチバック。日常の買い物や送迎などにちょうどいいサイズ感でありながら、輸入車ならではの高級感も備えている1台です。
2019年に発売された3代目(現行型)1シリーズは、FFレイアウト(前輪駆動)に変更されてしまったのですが、2代目まではFRレイアウト(後輪駆動)を採用していました。
このクラスではBMW 1シリーズだけに採用された“FR”というのが、「運転がめっちゃ楽しい」というこのモデルの美点の根源です。
FRレイアウトの美点あるいは利点についてマニアックなことを言い出せばキリがないのですが、ざっくり言いますと「車の前後重量配分を50:50にしやすい」ということと、「ステアフィール(操舵感)が甘美になる」ということです。
つまり重量バランスが良くて操舵感も良好であるため、「そのへんの道をごく普通の速度で走るだけで、なんだかとっても気持ちいい!」というニュアンスになりやすいのがFRレイアウトの車であり、それを採用している2代目BMW 1シリーズなわけです。
本稿では、そんな「実用的でありながら、かなり気持ちよく走れる車」である2代目BMW 1シリーズの選び方について、もろもろ検討してまいります。
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BMW 1シリーズ(2代目) × 全国ボディサイズ:トヨタ ヤリスなどよりは大きいが、その分だけ居住性良好
2011年9月に発売された1シリーズ(2代目)のボディサイズは、前期型の場合で全長:4335mm × 全幅:1765mm × 全高:1440mm。これは現行型トヨタ カローラスポーツという国産5ドアハッチバックとおおむね同寸です。
正確に言えば1シリーズ(2代目)の方がカローラスポーツより少し短く、幅も少し狭いのですが、まぁ「サイズは国産ハッチバックとだいだい同じ」と言っていいでしょう。
とはいえ、国産ハッチバックの売れ筋であるトヨタ ヤリスなどと比べると、2代目1シリーズは「ひと回り大きい」ということになります。しかし、ひと回り大きい分だけ、1シリーズ(2代目)の室内空間はヤリスなどよりもずいぶん余裕があり、また「存在感」のようなものも感じられます。
さらに、FRレイアウトの車には「最小回転半径を小さめにできる」という美点もあります。そのため、ヤリスよりもひと回り大きなボディサイズである1シリーズ(2代目)の最小回転半径は、ヤリスの上級グレードとまったく同じ「5.1m」です。
走行性能:FRならではの重量バランスと操舵感の良さが光る
1シリーズ(2代目)の基本となるエンジンは、1.6Lの直噴直4ガソリンターボ。初期モデルでは「116i」に最高出力136psの仕様が搭載され、「120i」には同170psの仕様が搭載されました。
デビューから約2年後の2013年8月には320psの強力な3L 直6ターボエンジンを積む「M135i」が追加され、2015年5月のマイナーチェンジ時には直4ターボと直6ターボエンジンが微妙に進化。
同年9月には「118i(旧名116i)」のエンジンが1.5Lの直3ターボに変更され、さらに2016年5月には2L直4ディーゼルターボの「118d」も追加しています。トランスミッションは、いずれも8速ATです。
そういった各種のエンジンを搭載した1シリーズ(2代目)のドライビングフィールは「きわめて素直であり、同時にスポーティでもある」といったニュアンスです。
国道や高速道路などを巡航する際は、低回転域から十分なトルクがあるターボエンジンと、このクラスでは初めて採用された8速ATのプログラムが適切であることから、きわめて快適で素直な、それでいて上質感たっぷりのクルージングを堪能できます。
そして山坂道にさしかかれば、FRレイアウトならではの重量バランスの良さと操舵感の良さが炸裂。ペースを上げても安定感と上質感はまったく損なわれませんし、仮にのんびり走っても、「運転の面白み」のような部分に違いは発生しません。
ちなみに山坂道では8速ATの非常に素早い変速ぶりも気持ちよく、パワートレインの制御システム「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」をコンフォート(デフォルト)からスポーツに変更してあげれば、1.6Lターボエンジンを搭載する1シリーズ(2代目)は相当スポーティに走ることができます。
先進機能・安全装備:プレミアムブランドだけあって普通に充実
前章でちらりと触れた「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」は、スイッチひとつでエンジンのレスポンスやシフトタイミングが変更できる機構。
活発に走りたい場合のオススメモードは「SPORT」ですが、「ECO PRO」モードを選択すると、エンジンやトランスミッションに対して燃費志向の制御が行われるとともに、燃費が向上するようアクセルワークのアドバイスや、その結果どれだけ航続距離が延びたかなどの情報がドライバーに提供されます。
2013年8月の一部改良では、コントローラーの上部にタッチパッドを備えた「iDriveナビゲーションシステム」を全車に標準装備。
それと同時に、通信モジュールを利用した「BMW SOSコール」「BMWテレサービス」を全車に標準採用した他、「前車接近警告機能」「衝突回避・被害軽減ブレーキ」「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」「クルーズ・コントロール」をセットにした安全運転支援システム「ドライビング・アシスト・パッケージ」をオプション設定しました。
このドライビング・アシストは2015年5月のマイナーチェンジ時に、「118i」を除く全車に標準装備となり、オプションの「アドバンスド・パーキング・サポート・パッケージ」は、縦列駐車だけでなく並列駐車にも対応するようになっています。さらにこのとき、「120i」系には新オプションとして「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)」が追加設定されています。
世代によって細かな違いはありますが、1シリーズ(2代目)は、BMWのエントリーモデルとはいえ「BMW」であることに変わりはありません。そのためこのあたりの機能や装備内容は、当然ですが普通に充実しています。
中古車相場:流通量は非常に豊富で、比較的低走行な物件も多い
それでは、具体的に「で、どの2代目1シリーズを狙うべきなのか?」という部分の検討に入りましょう。
まず中古車市場の概況から。
2022年8月上旬現在、1シリーズ(2代目)の流通台数は720台以上と非常に豊富で、そのうち500台以上の物件は走行距離5万km以下。中古車のコンディションは走行距離だけで測れるものではありませんが、「コンディションはおおむね良さそうである」との推測は成り立つでしょう。
モデル全体の価格レンジは総額50万~480万円と上下にかなり幅広いのですが、やや特殊な超スポーティモデルである「M135i」と「M140i」を除外し、さらに「走行5万km以下の物件」に限定すると、価格レンジは「総額70万~320万円」となります。
中古車のオススメ1:予算100万円以下で狙うなら前期型116i
以上を踏まえたうえで「総額100万円以下で1シリーズ(2代目)を探したい」と考える場合は、自動的に「前期型の116i」になります。
「116i」というのは、前期型の「120i」と同じ1.6Lの直4ガソリンターボエンジンですが、「120i」の最高出力が170psであるのに対し、コンピューターのセッティングにより136psに抑えているグレード。これの走行5万km以下の物件が、総額60万~100万円付近のゾーンで豊富に流通しているのです。
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BMW 1シリーズ(2代目) × 「116i」 × 総額100万円以下170psの「120i」に対して136psの「116i」は「加速等がショボいのでは?」と不安に思うかもしれませんが、そこはあまり変わりません。もちろんエンジンのトップエンド付近での伸びや力強さはずいぶん違うのですが、普通に市街地や高速道路などをマナー良く運転する限りにおいては、「違いはあるが、大差ではない」というのが「116i」と「120i」の関係です。
「116i」は何がなんでもぶっ飛ばしたい人には向きませんし、装備レベルも「120i」よりは若干劣りますが、極度に不足と思われる装備はありません。また動力性能も、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」をSPORTモードにすればまずまず速いとは言えます。
そんな前期型「116i」は、「標準」と「スタイル」「スポーツ」「Mスポーツ」の4種類に細分化されており、それぞれの主な特徴は下記のとおりです。
●標準:まさに標準的な仕様
●スタイル:キドニーグリルやアルミホイールに「ホワイト」を配色
●スポーツ:キドニーグリルやフロントのサイドエアインテークにハイグロスブラックのパーツをあしらい、ステアリングホイーやシートのステッチにレッドのアクセントを配置
●Mスポーツ:Mスポーツ・サスペンションの他、Mエアロダイナミクス・パッケージや17インチのMライトアロイホイール、クローム仕上げキドニーグリル、スポーツシート(運電動調節式サイドサポート付き)、マルチファンクションMスポーツ・レザーステアリングホイールなどなど……を装備
これらのうちどれを選ぶかは「お好み次第」といったところですが、この価格帯において流通量が豊富なのは標準とスタイル、スポーツで、スポーティな各種装備が純正装着されているMスポーツの流通量はやや少なめです。
- BMW 1シリーズ(2代目) × 「116i(標準モデル)」の中古車を見てみる
- BMW 1シリーズ(2代目) × 「116i スタイル」の中古車を見てみる
- BMW 1シリーズ(2代目) × 「116i スポーツ」の中古車を見てみる
- BMW 1シリーズ(2代目) × 「116i Mスポーツ」の中古車を見てみる
中古車のオススメ2:スタイリッシュな顔つきが好みなら後期型118iまたは118d
前期型「116i」はなかなかお値打ちなチョイスではあるのですが、なんとなく「おとぼけフェイス」と評したくなる前期型特有の顔つきが苦手な場合もあるかもしれません。
そんな場合には2015年5月のマイナーチェンジでシュッとした顔つきに変わった「後期型の118i」を、総額100万~150万円付近のレンジで探してみるのがオススメです。
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BMW 1シリーズ(2代目) × 「118i」マイナーチェンジで車名は「116i」から「118i」に変わりましたが、マイナーチェンジ直後のエンジンは前期型「116i」と同じ最高出力136psの1.6L直4ターボ。ただし2015年9月以降は同じく136psの1.5L直3ターボエンジンに変更されています。つまりこの価格帯の「118i」には直4ターボと直3ターボが混在しているということです。
3気筒エンジンというと「特有のバイブレーションがあるのではないか?」と不安に思うかもしれませんが、「118i」のそれは、不快な振動は特には感じらません。またエンジン自体が軽いこともあって、かなり気持ちいい軽快な走りを堪能できる1台です。
後期「118i」は総額100万円台前半でイケますが、「総額150万~200万円でも大丈夫」という場合は、きわめてトルクフルで、それでいて燃費性能に優れる2L 直4ディーゼルターボエンジンを搭載した「118d」を見つけることが可能です。
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BMW 1シリーズ(2代目) × 「118d」燃費の良い「ECO PRO」モードに入れていても十分に速く、低速トルクは鬼のように太い。そしてディーゼルエンジンであっても静粛性に優れる最高出力150ps/最大トルク32.6kg・mの2L直4ディーゼルターボを搭載する118dは、超強力な3L直6ガソリンターボを搭載する「M135i」、または「M140i」を除けば「最強」と言える2代目シリーズ。
それの走行距離5万km以下の物件が総額100万円台で狙えるというのはかなりうれしい話ですので、こちらにもぜひご注目ください。
この他、内装デザインが大幅に変更された2017年8月以降の世代を総額200万~250万円あたりのレンジで探してみるのも悪くないですし、「超絶速い車」がお好みであれば、最高出力320ps(2015年5月からは326ps)の3L直6ガソリンターボエンジンを搭載する「M135i」を総額200万~300万円付近で見つけてみるのもステキでしょう。
いずれにせよ2代目BMW 1シリーズは、クラス唯一の「FRレイアウト」がもたらす気持ちのいい走りを、比較的手頃な予算で堪能できる1台であることは間違いありません。
冒頭で申し上げたとおり「扱いやすいサイズのしゃれた車で、なおかつ運転がめっちゃ楽しい車」を探している人は、ぜひ一度真剣に注目してみることをオススメいたします。
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BMW 1シリーズ(現行型) × 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。