BMW i3 ▲全世界で約25万台を販売してきたBMW初のEV「i3」が今年6月末をもって生産終了となりました。新車としてはもう二度と買えないこのコンパクトEVを中古車として狙いたい場合は、何年式のどれを、いくらぐらいの予算で探すのが正解なのでしょうか?

生産終了となったBMWの小型EV

今年6月に軽EVの日産 サクラと三菱 ekクロスEVが登場し、近場利用のための小型EVに注目が集まっています。

実は軽規格ではないものの、軽と同等サイズくらいのEVは他にも発売されていたのをご存じでしょうか?

その1台が、奇しくもサクラやekクロスEVが登場したタイミングと同じ今年6月に生産を終えた、BMW初のEV「i3」です。

2013年9月にi8と同時に発表され、日本では2014年5月からデリバリー開始となったBMW i3を約8年半にわたって製造してきたドイツのライプツィヒ工場では今後、完全電動駆動となる次期型MINI カントリーマン(日本名クロスオーバー)を作るそうです。

しかしそれはそれとして、車というのはいざ生産終了になると「その中古車」が、どうにも気になってくるものです。

今後二度と新車では買うことのできないBMW i3の中古車事情は今、どんな感じになっているのでしょうか? もろもろ調査してみることにしましょう。

BMW i3▲メインカーとして乗るか、セカンドカーとして使うかはさておき、そろそろ「EV」が気になってきた人も多いのでは?

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BMW i3(初代)×全国
 

生産終了に伴って中古車価格の“プチ高騰”はあるかも?

まず、BMW i3の中古車平均価格と流通量の推移と現状を把握してみましょう。下のグラフをご覧ください。

BMW i3の中古車相場グラフ▲メインカーとして乗るか、セカンドカーとして使うかはさておき、そろそろ「EV」が気になってきた人も多いのでは?

ここ2年半の中古車平均価格は、中古車ですので当然ながら基本的にはダウントレンドですが、それでも「おおむね横ばい」と言うべき動きになっています。

2020年中は330万~350万円あたりのラインでほぼヨコヨコに推移したのち、2021年の前半には30万円ほどの下落を記録しました。しかし、その後は再びヨコヨコモードに復帰し、おおむね290万~300万円のラインでしぶとく粘っているというのが現状なのです。

これは「大人気というほどでもないが、一部で地味に人気があるモデル」の典型的な動きであり、BMW i3も、まさにそのような車であったように思います。

そのため、今後も「i3の中古車価格がいきなり高騰する!」ということはたぶんないかと思いますが、「一部での根強い人気=中古車価格の堅持」は続きそうな気配があります。そして上グラフのとおり流通量は若干ながら減少傾向が続いていますので、今回の生産終了をきっかけとするプチ高騰はあるかもしれません。

つまり「欲しいなら急げ!」というほどの状況ではありませんが、「もしもi3が気になっているならば、早めのアクションが吉でしょう」というのが本章の結論となります。

BMW i3▲中古車の流通量は減少傾向、というかそもそもかなり少なめであるため、需要が少し高まるだけで平均価格がポンと上がってしまう可能性を秘めている
 

モデルライフの途中で順次バッテリーを大容量化していった

では、そんなBMW i3の中古車をこれから買うとしたら「何年式のどれ」を買うのが正解なのでしょうか?

その結論を探るために、まずはi3日本仕様の歴史をざっとおさらいしておきましょう。

BMW i3は、次世代モビリティを提案するBMWの新しいサブブランド「BMW i」から2013年にリリースされたコンパクトEV。

車体構造は、総アルミニウム製のシャシーと炭素繊維強化プラスチック製のキャビンを組み合わせたもので、けっこう重い駆動用バッテリーを搭載しながらも、初期型は1260kgというまずまず軽量な車両重量を実現しました。

乗車定員は4名で、日本仕様のボディサイズは全長4010mm×全幅1775mm×全高1550mm。多くの機械式駐車場に入れることが可能で、ドアには左右とも「観音開き」方式を採用しています。

BMW i3▲こちらがBMW i3のエクステリアデザイン。全長は4010mmとかなり短めだが、全幅は1775mmというまあまあなサイズになっている
BMW i3▲ドアは左右とも観音開き。後部ドアを開ける際は、必ず前席ドアも一度開けなければならないのはやや微妙だが、コンパクトなボディであるにもかかわらず「後席へのアクセス性に優れる」という美点があるのは確か
BMW i3▲リアビューはこのようなイメージ。ブラックアウトされたリアパネルが印象的だ

2014年5月にデリバリー開始となった初期型のパワーユニットは最高出力170psのモーター+22kWhのリチウムイオン電池で、1充電走行距離は約130~160km。ただし「ECO PROモード」を選択すれば約180km、「ECO PRO+モード」を選べば約200kmまで航続距離を延ばすことが可能でした。

また、発電専用の0.65L 2気筒ガソリンエンジンを搭載した「i3レンジエクステンダー装備車」の航続距離は約300kmです(※数字はいずれもBMW社内基準)。

2016年9月には一部改良を実施。リチウムイオン電池の密度を高めて33kWhの容量を実現し、1充電走行距離はレンジエクステンダー装備車で511km、非装備車の場合でも390kmまで延びています(※数字はいずれもJC08モード)。

また、このときにインテリアの仕様も変更され、シンプルな「アトリエ」と、モダンでナチュラルな「ロッジ」、そして従来のレザー仕様に相当する「スイート」の3種類に分かれました。
 

BMW i3▲パッケージによりインテリアの色や使われている素材に違いはあるが、運転席まわりはおおむねこのような雰囲気。写真は左ハンドルの本国仕様

さらにこのタイミングで、自動緊急ブレーキや前走車追従機能付きクルーズコントロールなどからなる「ドライビングアシスト・プラス」と、リアビューカメラや縦列駐車の操作を補助するパーキングアシスト機能などからなる「パーキングサポート・パッケージ」およびLEDヘッドランプを、ロッジとスイートに標準搭載しています(※アトリエではオプション扱い)。

そして2018年1月に行われたデザインを中心とするマイナーチェンジを経て、2019年2月にはバッテリーを刷新。新型のリチウムイオン電池は従来モデル比で約30%拡大した120Ahの大容量となり、総電力量も33kWhから42kWhに増加。満充電1回あたりの走行可能距離はWLTCモードで360kmとなり、レンジ・エクステンダー装備車では466kmになりました

BMW i3▲2018年1月のマイナーチェンジで外観デザインを少々変更。横長のターンインジケーターを装備した他、ワイドな印象を強調する新デザインのバンパーを採用。LEDヘッドライトも全車標準装備になった

以上がBMW i3日本仕様の大まかな歴史で、シンプルにまとめると、

・2014年5月~2016年8月:22kWhの初期型
・2016年9月~2019年1月:33kWhの中期型(※途中2018年1月にエクステリアを変更)
・2019年2月~:120Ah/42kWhの後期型


ということになります。

それでは次章以降、「具体的にはどれがオススメなの?」という点について、各種のニーズ別に考えてみましょう。

 

ぶっちゃけなるべく安価に入手したいなら……
「初期型レンジエクステンダー装備車」を

現在、BMW i3の中古車価格は総額170万~470万円と、かなり上下に幅広い状況。

しかし、22kWhのモーターを搭載していた初期型(2014~2016年途中まで)であれば、総額170万~260万円あたりのお手頃ゾーンで、走行3万km台から4万km台程度の物件を普通に探すことが可能です。

比較的安価でi3を購入したいのであれば、狙うべきはこのグループしかありません。

BMW i3▲安価で、かつ軽量で軽快な点も魅力となる初期型BMW i3

ただ、22kWhのバッテリーを搭載する初期型はカタログ上の1充電走行距離が130~160kmでしかなく、「ECO PRO+モード」を使っても約200kmです。

そしてこれは新車カタログ上の数字ですので、実際の航続距離はそれ以下である可能性が高く、さらにバッテリーが新品時よりも劣化していれば、航続距離はさらにやや短くなっているでしょう。

とはいえ、このあたりのことは考え方次第というか、使い方次第です。

例えば、実際の1充電走行距離が100km程度でしかなかった場合のEVは、「キャンプに行きたい」「旅に出たい」みたいなことを考えている人には明らかに不向きです。しかし、「車は、日々の買い物や子供の送迎ぐらいにしか使わない」という人であれば、後続距離なんてものは100kmもあれば御の字でしょう。

そういう使い方を想定している人であれば、航続距離が短い初期型のBMW i3も十分にオススメできます。

しかし、その場合でも「万一の電欠」は避けたいですし、たまにはやや遠くまで行く用事だってあるでしょうから、ここはやはり発電用の小さなエンジンを搭載している「レンジエクステンダー装備車」こそがオススメとなります。

レンジエクステンダー装備車は、新車時は非装着車よりも50万円近く高額だったのですが、今となっては両者の中古車価格に大きな違いはありません。

その意味でも、安価な初期型を狙う場合は「レンジエクステンダー装備車」が狙い目となるのです。

BMW i3▲発電用の0.65L2気筒エンジンを搭載する初期型「レンジエクステンダー装備車」の1充電走行距離は約300km。新車時は非装備車より47万円高額だったが、現在の中古車価格は非装備車とそう大きくは変わらない

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BMW i3(初代)×「初期型レンジエクステンダー装備車」×全国
 

好バランスなものを入手したいなら……
「中期型レンジエクステンダー装備車」を

あくまでも自宅近くだけで使う「近距離スペシャル」としては初期型も悪くないのですが、車というのはそもそも「遠くまで走っていくこと」をその本分としていますので、航続距離が短いEVに抵抗を覚える人も多いでしょう。

そうなるとオススメは2019年2月以降の後期型、すなわち120Ah/42kWhの新型大容量バッテリーに変わった世代なのですが、こちらの中古車価格は軽く400万円は超えてしまいます。

400万円超はさすがに……と思う場合のオススメは、ズバリ「中期型のレンジエクステンダー装備車」です。

BMW i3▲「中古車としてのバランス」に優れるのは、比較的安価で、なおかつ比較的航続距離が長い「中古型のレンジエクステンダー装備車」であるはず。写真はエクステリアデザインが小変更される前の世代

33kWhのバッテリーに変わったこの世代(2016年9月~2019年1月)のレンジエクステンダー付きであれば、カタログ上の1充電走行距離はJC08モードで511km。

実際の走行シーンにおける航続距離はそれよりも短く、なおかつ中古車ならではのバッテリーの劣化が仮にあったとしても、かなり少なめに見積もっても1回の充電で300kmは走れるはず。普通に考えて、ぜんぜん十分でしょう。

そして中古車価格も、さすがに初期型のように「総額100万円台からイケる」ということはなくて「総額300万円台」が相場になってしまうのですが、まぁ現実的なプライスであるとは言えます。

以上のとおり、BMW i3の中古車を買う場合には中期型のレンジエクステンダー装備車こそが好バランスな選択肢なのですが、大きな問題がひとつあります。

それは「中古車の数がめちゃ少ない」ということです。

2022年7月下旬現在、ここで言う中期型i3の流通台数は全国で「数台」といったレベルでしかありません。

そのため「内装はロッジがいいかな? それともレザーのスイートにしようかな?」といった感じで“選ぶ”ことができないのがこの世代の難点なのですが、まぁオススメであることは間違いありませんので、ぜひ早い者勝ちの勢いで(?)探してみていただきたいと思います。


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BMW i3(初代)×「中期型レンジエクステンダー装備車」×全国

この他、もしも予算に余裕があれば当然「後期型=新型大容量バッテリーに変わった2019年2月以降の世代」もオススメとなるわけですが、こちらは前述したとおり総額400万円を軽く超える買い物になりますし、車両重量もけっこうあるため、初期型の軽快感は失われてしまった感もあります。

そういった意味では「レンジエクステンダーなしの初期型」こそが軽快で楽しいイチ推しのBMW i3とも言えるのですが、こちらには、前述した「航続距離が短いゆえに万人向けではない」という問題もあります。

このようになかなか難しい部分もあるi3選びではあるのですが、自身のライフスタイルにピタリとハマる世代ないしは1台が見つかったならば、これほど楽しく走れるコンパクトEVはそうそうあるものではありません。

ぜひともご自身の使用環境や予算感、あるいは人生観などから総合的に判断し、「これぞ!」と思えるBMW i3を、もしかしたらプチ高騰してしまう前にピックアップしていただけましたら幸いです。

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BMW i3(初代)×全国
文/伊達軍曹、写真/BMW
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。