タイプR▲レクサス製スポーツカーの代表的な心臓部として現在採用されている5L V8エンジン、2UR-GSE型。今どき大排気量の8気筒というのも貴重だが、ライバルたちが次々とターボを備える中、自然吸気というのも魅力的だ

V8を堪能できる時間はあまり残されていない!?

昨年末、トヨタが今後投入予定のBEV(電気自動車)を一気に16台紹介したことは記憶に新しい。

もはや大排気量エンジンは風前のともしびで、V型12気筒や10気筒はおろか、一時は国産高級車の代名詞であったV型8気筒エンジンですら、この先に明るい未来はなさそうだ。

振動が少なく静粛性高いため乗り心地がよいだけではなく、あふれるパワーやトルクを味わうことができるV8エンジン搭載モデル。

そんな贅沢なモデルだが、とりわけ国産車に関しては手に入れられるチャンスが少なくなってくるだろう。

ということで今回は、現時点では中古車平均価格に大きな変動がない、または値下がりしているV8エンジン搭載の国産車を調べてみた。すると、レクサスの3モデルがヒットしたので紹介しよう。

いずれその希少価値が再評価されれば、値上がりするかもしれない!? 今のうちに要チェックだ!

 

レクサス IS F(初代)
初めての「F」の称号を与えられたモデル

IS F(初代)▲車両本体価格は、折しも同時期登場した日産 GT-R(777万円~)とほぼ同じ、766万円。そのため何かと比較されがちだったが、日常乗りもできるレースカーみたいなGT-Rとは違い、あくまでもBMWのMモデルのような、国産久々の大人のスポーツセダンだった

BMWの3シリーズをターゲットにしたスポーツセダンが、初代レクサス IS。

2007年10月に登場したそのハイパフォーマンスモデルとなるIS Fは、当然M3を目標に開発されたモデルとなる。ちなみに、「F」は「Fuji」や「富士スピードウェイ」を意味する。

搭載される2UR-GSE型エンジンは、423ps/505N・mを発揮。これは同時期のM3の400ps/400N・mを上回る。

実はこのエンジン、もともとLSに使われていたV8をベースに、ヤマハと共同で開発したヘッド部分をはじめ、サーキット走行を視野に入れ開発されたものだ。

組み合わされるトランスミッションもまた、LSの8速ATをベースに新開発されたもの。Mポジションに入れると1速こそトルクコンバーターを介するが、2速から8速はエンジンとトランスミッションが直結され、ダイレクト感のあるアクセルレスポンスを生む。

当然足回りもサーキット走行で求められる走行性能をかなえるために専用チューニングが施され、ブレンボ社と共同開発した高性能ブレーキが与えられた。

同社の車両制御システム「VDIM」も、その介入を少し遅らせる、つまりドリフトなどドライバーの操作に委ねる部分を広げるスポーツモードが設定されている。

IS F(初代)▲ISと比較して大きく張り出したフロントフェンダーや、4本出しテールパイプ、専用リアスポイラーなどが備わる。また、加速とともに3段階に変化するエンジンサウンドが採用された
IS F(初代)▲メーターには切削加工された金属リングが備わる。指針は青色LEDが採用され、300km/hまで刻まれている。乗車定員は4名で、サーキット走行にも応えられるホールド性の高い専用4座スポーツシートが装備された

登場以降も改良が度々施されている。 まず、2009年8月にはトルセンLSDが標準装備となった。さらに、2010年8月にはサスペンションのセッティングが変更され、ナビゲーションのGPSによる位置確認機能により、利用可能エリアに入るとサーキット走行が楽しめる「サーキットモード」が新たに設定されている。

2011年8月には新ショックアブソーバーが採用され、それに伴う足回りの再セッティングが行われた。

2013年9月にはカーボン製リアスポイラーの採用や、ヘッドレストに「F」ロゴがエンボス加工されたりするなど仕様の向上が図られた。

同時に、特別仕様車「ダイナミックスポーツチューニング」が用意された。エンジンのピストンなどのフリクションの低減が図られ、組み付け工程の改良も行われたことで、ベース車よりも7psアップとなる最高出力430psを実現しているモデルだ。

IS F(初代)▲特別仕様車のダイナミックスポーツチューニング。ピストンやポンプ類など摺動部品のフリクションが低減され、クランクシャフトにコンロッドやピストンを組み付けている状態で、一基ずつ回転させながらダイナミックバランスが取られた。販売時の車両本体価格は1050万円

■長期で見ると微妙に上昇傾向、早めに手に入れるのが正解か!?

2007年10月デビュー時の車両本体価格は766万円。デビューから約15年が経ち、中古車の価格はかなりこなれてきた。

ここ2年ほどはほぼ横ばい基調だが、比べれば2年前より1年前、1年前より現在と微妙に値が上がっている。例えば、2021年5月の平均価格は247.8万円だったが、2022年5月時点では287.0万円と、約40万円上がっている。

レクサス IS Fの中古車平均価格推移

これは中古車の流通台数が徐々に減ってきていることに原因があると思われる。

2020年5月時点では81台だったが、2021年5月は73台、2022年5月には64台になっている。この微妙な台数の減り具合が、中古車の価格に反映されているようだ。

レクサス IS Fの延べ掲載台数推移グラフ

それでも同時期にほぼ同じ価格でデビューした日産 GT-Rの初期型平均価格が、原稿執筆時点で約950万円というプレミア価格になっているのと比べたら、十二分に狙い目。また、同時期のE90型BMW M3(セダン)の平均価格は約430万円だから、それよりも手頃だ。

原稿執筆時点での平均走行距離は約7万7000kmだが、走行距離7万km未満でも、2008年や2009年式なら支払総額250万円以下で狙える。

▼検索条件

IS F(初代)×全国
 

レクサス GS F(初代)
サーキット走行を楽しむモデルと位置づけられたセダン

GS F(初代)▲サーキットを存分に楽しめるよう、レーザースクリューウェルディングなど先進技術で強化されたボディ。床下の風をコントロールするため、専用のエンジンアンダーカバーやリアフロアアンダーカバーが備わる。乗車定員は5名

IS FがクーペのRC Fの登場とほぼ同時期に役目を終えたのに伴い、Fモデルのセダン第2弾として登場したのがGS F(初代)。2015年11月、GSのマイナーチェンジと同じ日に発表された。

「サーキット走行を楽しむモデル」と明確に打ち出され、レーザー溶接やスポット打点の打ち増しに加え、高剛性ガラス接着材などレクサスの最新技術が導入された。

搭載されたエンジンは5L自然吸気V8エンジン。IS Fと同じ2UR-GSE型だが、最高出力477ps/最大トルク530N・mとさらにハイパワーになっている。

組み合わさる8速ATも進化し、Mポジションを選択すると最短0.1秒で変速する。さらに、スポーツ S+モードを選ぶと、Dレンジのままでニュルブルクリンクを楽しく走行できるようなシフトスケジュールが設定されている。

また、標準装備された駆動力制御システム「TVD」により、走行状況に応じて後輪の左右の駆動輪を制御してくれるのもこの車の魅力のひとつ。

TVDの制御モードは3種類あり、スタンダードと、ステアリングレスポンスを優先する「スラローム」、高速サーキットでの安定性を重視した「サーキット」から選べる。

GS F(初代)▲車両姿勢制御システムのVDIMはスポーツモード付きで、サーキット走行を楽しむ際に、基本的にオフ状態としながら、万一の際には車両挙動の乱れを緩和する制御が働くEXPERTモードが設定されている
GS F(初代)▲ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツS/スポーツS+の4種類から選べる。専用の本革巻きステアリングは、サーキット走行を繰り返し行ったテストドライバー全員の意見をもとに、太さやグリップ感が決められた

2016年9月には、GS F用に開発されたカーナビゲーションが標準装備された。旋回性能を高めるために、ナビのコーナー情報からあらかじめ足回りの制御が行われる。これに伴い、足回りやステアリング、VSCの再チューニングが実施されている。

2017年8月の一部改良では、デビュー時から備わる予防安全パッケージ「レクサスセーフティシステム+」の機能が拡充された。具体的にはレーダークルーズコントロールに全車速追従機能が追加され、レーンキープアシスト機能が加えられた。さらに、2018年5月の一部改良でも、新たにブラインドスポットモニターが追加されている。

2019年10月の一部改良では、ドライバーの意図がよりリニアに伝わるよう、サスペンションの改良が図られた。加えて、リアトーコントロールアームブラケットのアルミダイキャスト化により、軽量化と高剛性化が行われている。

■基本的に下落傾向、平均走行距離もまだ約3万7000kmと絶好のタイミング

2015年11月デビュー時の車両本体価格は1100万円。中古車の平均価格は大きなうねりがあるが、それでもここ1年は600万円台後半、直近5月は680.1万円となっている。

上記IS Fと違い、こちらは長い目で見ると、価格は下落基調がうかがえる。

レクサス GS Fの中古車平均価格推移

一方で、中古車の流通台数は2020年4月~5月こそ30台を切ったが、同年6月以降は30台以上をキープ。また、多くても45台とほぼ横ばいといえる。つまり価格の下落基調は経年によるものと考えられる。

レクサス GS Fの延べ掲載台数推移グラフ

中古車の平均走行距離は約3万7000km。デビューして7年ほど経つが年式の割には少なく、まだまだこれからといった中古車が多い印象だ。

原稿執筆時点で見ると、2015年や2016年式で走行距離5万km未満の修復歴なしの物件が、支払総額600万円あたりで狙える。

新車時価格よりもだいぶ安くなっており、今後貴重になるであろうV8エンジン車ということを考慮すれば、絶好のモデルと言えるのではないだろうか。

▼検索条件

GS F(初代)×全国
 

レクサス LC(現行型)ガソリンモデル
新開発の10速ATと組み合わされ、戦闘力もバツグン

LC(現行型)▲2012年のデトロイトモーターショーで発表されたコンセプトカーのデザインをモチーフに開発されたLC(現行型)。エンジンレイアウトの工夫や、CFRPの採用など、低重心化とフロントミッドシップレイアウトにこだわられている。乗車定員は2+2の4人乗り

2017年3月に登場したラグジュアリークーペのLC(現行型)。

BMW 6シリーズ(当時)やメルセデス・ベンツ SLクラスあたりがライバルになるが、レクサスがラグジュアリーブランドを掲げるうえで不可欠なモデルだと言えよう。

そのパワートレインに選ばれたのが3.5L V6+モーターのマルチステージハイブリッドシステムと、上記2台と同じ2UR-GSE型の5L自然吸気V8エンジン。前者のグレード名はLC500h、後者はLC500となる。

5L V8の最高出力477psは上記GS F同様だが、最大トルクは540N・mと+10N・m高められている。

組み合わされたトランスミッションは、新開発された10速AT。シフトチェンジはDレンジで約0.2秒、Mレンジで約0.1秒とクラス最速レベルだ。

アクセルやブレーキ、車両のG(重力加速度)からドライバーの意図を読み取り、最適なギアを選択するという新制御も備えられている。

また、レクサスを象徴するモデルという位置付けということもあり、エンジンサウンドにもこだわられた。具体的には、LFA(2010年12月に世界500台限定で発売されたスポーツクーペ)の「天使の咆哮」と呼ばれたサウンドを継承したという。

さらに、「Sパッケージ」グレードを選ぶと、レクサスダイナミックハンドリングシステム(LDH)が備わる。

これはギア比可変ステアリングと後輪の切れ角の制御などを行うことで、ドライバーの意に沿った車両挙動を可能とするもので、高速走行時には安定走行を、山のワインディングでは軽快なステアリングレスポンスが楽しめる。

LC(現行型)▲LFAの可動式メーターリングを継承する液晶メーターが備わり、パドルシフト操作時はシフト表示を大きくするなど、ドライバーが瞬時に情報を認識しやすい。インテリアの表皮巻きやステッチはすべて手作業で仕上げられている

2018年8月にはステアリングフィールの向上を狙った改良と、乗り心地と操縦安定性の向上、滑らかな加減速などの改良が行われた。

2021年9月には足回りの改良でステアリングの応答性と、高い旋回G領域でのコントロール性が高められた。また、LDH装着車は制御の最適化が施された。

LC(現行型)▲2020年6月に追加されたLCコンバーチブル。ソフトトップが採用され、オープン走行する際は自動開閉式のトノカバーにキレイに収められる。ルーフの開閉時間は約15秒。クーペ同様、エンジン音や排気音などのサウンドにこだわれている。写真は特別仕様車のストラクチュラルブルー

■再び上昇基調に入る前に良コンディション車を狙いたい

LC500の2017年3月デビュー時の車両販売価格は、ベースグレードとLパッケージが1300万円、Sパッケージが1400万円。国産車にはライバルと言えるモデルはほぼ存在せず、かつデビューからまだ5年しか経っていないため価格はあまり下がっていない。

2020年春ごろに一度1000万円を切ったこともあったが、2021年に入ると上昇基調に。その後やや下がり、直近5月は1067.9万円となっている。

レクサス LC500の中古車平均価格推移

一方で、デビューから5年経ったことで波はあるものの中古車台数は微増傾向にある。1年前の2021年5月は102台で、その後一時100台を下回るまで減少したものの、再び増加傾向に。2022年5月は116台となっている。

レクサス LC500の延べ掲載台数推移グラフ

つまり現在は、中古車の価格は上がっておらず、台数が多くて選びやすい状況というわけだ。

平均走行距離は約2万kmで、良コンディション車も狙いやすい。

原稿執筆時点で見ると、2017年式・走行距離3万km以下・修復歴なしで支払総額約900万円からといったところ。唯一無二なモデルともいえるため、今後上昇していくことも考えられる。

LC500を狙うなら今がチャンスかもしれない。

▼検索条件

LC(現行型)×「500」系グレード×全国
文/ぴえいる、写真/レクサス、尾形和美

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。