スバル レヴォーグ▲2020年10月のフルモデルチェンジで、旧型となった初代レヴォーグ。中古車市場はかなりお得な状況!

中古車市場では初代が主役

北米市場に向けて大柄になってしまったレガシィツーリングワゴンとは少々異なる「日本の道でジャストなステーションワゴン」として登場した、スバル レヴォーグ。

2020年10月に発売された2代目となる現行型は各方面から非常に高く評価され、2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞。かくいう筆者も現行型のレヴォーグを所有しており、その各種性能の素晴らしさには日々、舌を巻いている。

そんな2代目レヴォーグの登場によりやや影が薄くなってしまった感もある初代スバル レヴォーグ(2014~2020年)は、シンプルに「車としての出来」を比べるのであれば、やはり2代目よりも少々劣っていると評さざるを得ない。

だが、「車」ではなく「中古車」としての魅力を考えるのであれば、1000台を超える中古車が流通していて100万円台から選ぶことのできる初代スバル レヴォーグは、今なおかなりイケているのではないだろうか?

本稿では初代のドライビング経験、そして2代目レヴォーグオーナーとしての目線から、「初代スバル レヴォーグの中古車としての魅力」をひもといていきたい。

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初代なら最新型の新車価格の半額で、まずまずの物件を選べる

スバル レヴォーグ ▲前期型であれば予算180万円で、1.6Lだけでなく2Lモデルも射程圏内に入る初代レヴォーグ

まず、初代レヴォーグには「中古車価格が安い」というシンプルな魅力がある。

2020年10月に登場した2代目となる現行型レヴォーグの平均価格は、2022年4月下旬現在で393.4万円。……ハッキリ言ってなかなかお高いプライスであり、人気の高い「STI Sport EX」というグレードの走行距離1万km台の中古車を買おうとすると、支払総額で400万円は軽く超えてくる。

繰り返しになるが、現行型は中古車でもなかなかお高いのだ。だが、「レヴォーグは初代でも良し!」と考えるのであれば、平均価格は一気に178.9万円まで下がることになる。

より具体的には、走行距離4万km台の前期型「1.6 GTアイサイト」であれば総額170万円前後で良質な個体を探すことができ、マイナーチェンジ後の後期型「1.6 GTアイサイト」でも、総額260万円前後という現実的な予算でかなりグッドコンディションな1台を見つけられるのだ。

とはいえ、物事というのは「安けりゃいい」というわけでもない。初代レヴォーグは、2代目レヴォーグと違う部分があるからこそ、中古車価格がお安いのである。

様々な違いがある初代と2代目だが、その最たるものは「スバルグローバルプラットフォームを使っているかどうか」であるだろう。

普通に運転している分には十分とも言える走行性能

X5 ▲現行型よりは劣るものの、適度なしなやかさのある初代レヴォーグの乗り味

レヴォーグでは2代目から採用されたスバルグローバルプラットフォーム(以下、SGP)とは、2016年登場の現行型インプレッサから採用されたまったく新しい車台。「強度の向上」と「剛性の増大」「重心の低下」により、それまでの車台を使ったモデルよりも直進安定性と乗り心地が向上し、振動と騒音は減少し――というのが主な特徴となる、新世代のプラットフォームだ。

2代目レヴォーグは、このSGPのさらなる進化版である「フルインナーフレーム構造のSGP」というものを採用している。そのため、乗り心地のよさやハンドリングの正確さ、剛性感の高さなどは初代とは比べ物にならず、ここについては「2代目(現行型)の圧勝」と結論づけるしかない。

だが、ここについても「価格次第」で感じ方は変わるものだ。例えば、もしも新旧レヴォーグの中古車価格が同じ400万円であったなら、旧型に対して「金返せバカヤロー!」と叫びたくもなる。

しかしながら前述のとおり、2代目の平均価格が約400万円であるのに対し、初代のそれは約180万円だ。実に約220万円もの開きがあるわけで、それだけの価格差があれば、初代の乗り心地やハンドリング性能もあまり気にならないというか、むしろ「初代の方が約220万円分も悪いとまでは思えない」というのが正直なところである。

よって、「プラットフォームの出来」だけでなく「お買い物としての納得度」も踏まえて考えるなら、非SGPな初代も「なかなかお買い得である」と結論づけるべきなのだ。

 

強力な2Lターボエンジンも魅力の初代

X5 ▲最高出力300psの2Lターボエンジンを搭載する「2.0 GT-S アイサイト」

お次、新旧レヴォーグで大きく異なるのはエンジンである。どちらも水平対向4気筒のガソリンターボエンジンではあるが、初代レヴォーグには最高出力170psとなる1.6Lターボの他、同300psのかなり強力な2Lターボも用意されていた。

しかし、2020年10月に登場した2代目では300psの2Lターボは廃止され、実用回転域のトルク特性を重視した最高出力177psの新型1.8Lターボのみとなったのだ。

まぁ2021年11月には最高出力275psの2.4Lターボエンジンも追加されたわけだが、こちらはまだ中古車がほぼ皆無であるため、新旧の「中古車」を比較する場合には無視して構わない存在だ。

新旧レヴォーグのエンジンの違いは、「2代目がおとなしめな1.8Lターボのみであるのに対し、初代は最高出力300psの超強力な2Lターボエンジンを選ぶこともできる」という点である。

ここについての優劣は付けづらいというか、「人それぞれの考え方や感じ方次第なので、一概には言えない」というのが正確なところだ。

ちなみに筆者個人は、もはや「300psのパワーを解き放ちたい!」と考えるようなお年頃ではないため、実用回転域では十分以上に力強い1.8Lターボで大々々満足している。だが、人によっては「物足りない!」と感じることもあるだろうし、かく言う筆者も、たまにではあるが「……ちょっとだけ物足りないかな?」と感じる瞬間はある。

それゆえ「300ps級のビッグパワーをたまには感じたい!」と考える人にとっては、初代レヴォーグの方が明らかに向いているだろう。しかも、そのビッグパワーを比較的お安く(具体的には総額120万円ぐらいから)入手できるというのが、初代レヴォーグの大きな魅力だ。

 

初代に搭載されるアイサイト ver.3も機能充実

レヴォーグ ▲初代に搭載されるアイサイト ver.3。先行する車両のブレーキランプや横断中の歩行者を検知するプリクラッシュブレーキを備える

新旧レヴォーグのお次の大きな違いは「運転支援システム」であろうか。

2代目レヴォーグには当然ながら最新世代のアイサイト・ツーリングアシストが全車に標準装備されていて、さらにはアイサイトXという、渋滞時のハンズオフアシストを含む高度運転支援システムを装着することもできる。

それに対して初代レヴォーグは、初期年式ではアイサイトver.3という若干古い世代のシステムが採用され、2017年7月のマイナーチェンジでやっとアイサイト・ツーリングアシストに進化した。

だが、最新のツーリングアシストとまったく同じものではなく、そして渋滞時の手放し運転が可能になるアイサイトXも搭載されていない。

このあたりの運転支援システムというのは、スバルのアイサイトに限らず日進月歩の世界なので「新しければ新しいほど高性能で高機能」というのが基本であり、古い世代の運転支援システムに、客観的に見た場合の勝ち目はない。

レヴォーグ ▲初代のアイサイト ver.3は手放し運転はできないものの、全車速追従機能付きのクルーズコントロールを装備している

だが、「実際のユーザー目線」で言わせていただくと、アイサイトXのハンズオフアシストも、アイサイト・ツーリングアシストの全車速追従機能付きクルーズコントロールも、筆者はさほどひんぱんに使っているわけではない。疲れているときなどに「たまに使ってます」というのが実情だ。

特にアイサイトXは約38万円もした高額装備なのに、なぜ筆者は「たまにしか使わない」のか? その理由は「スバル車というのは運転自体がめちゃ楽しいから」である。

ステアフィールなどがあまりにも良好であるため、疲れているとき以外は「こんなに楽しいことを機械にやらせるのはもったいない!」と思ってしまい、気がつけば、ほぼ常に手動で運転しているのだ。

日進月歩の世界であるだけに、2代目レヴォーグの運転支援システムの方が圧倒的に優れているのは言うまでもない。だが、「実際の話」としては初代の支援システムも、特に2017年7月のマイナーチェンジ以降の世代であれば、最新世代と比べて「実用面ではそこまでの大差はない」というのが結論となるだろう。

(※もちろん最新のシステムはハンズフリー運転や追従クルーズコントロールだけでなく、様々な細かい制御の質もずいぶん向上しているため、基本的な話としては「新しければ新しいほど好ましい」と考えるべきだが)

 

初代は力強い印象のフロントマスクが特徴的

レヴォーグ ▲塊感のあるヘッドライトが力強い印象を与える初代
レヴォーグ ▲シャープな形状のヘッドライトを採用している2代目となる最新型。ここについては賛否両論かも?

お次の違いは「デザイン」だろうか。……このあたりは好き好きの問題だが、車全体としては内外装とも、やはり最新のデザイン文脈に基づいている2代目の方がカッコいいというか「今っぽい」ことは明らかである。

だが、ヘッドランプまわりのデザインについては、2代目レヴォーグのそれは今ひとつ不評な場合も多く、2代目のオーナーである筆者も実は「横から見るとカッコいいんだけど、正面から見るとカッコ悪いな……」と内心思っている。

まぁ一概にはなんとも言えない話ではあるが、「デザインに関しては初代の方が圧倒的にステキである」と感じる人もいるだろう。そして筆者も、その感じ方を特に否定するつもりはない。 

 

走行性重視なら2Lターボ、価格重視なら1.6 Lターボを

以上のとおり、中古車としての初代レヴォーグには……、

・中古車価格が手頃である(平均価格は2代目より約220万円も安い)。
・車台は古いが、約220万円の価格差を考えれば「ぜんぜん納得の範囲内」である。
・最高出力300psの強力な2Lターボエンジンを選ぶこともできる。
・運転支援システムは、普通に使う分には十分である。
・デザインも、特にヘッドランプは2代目よりカッコいいかも?

という美点があることがわかった。

総額100万円台または200万円台付近の現実的な予算で「優秀なステーションワゴン」が欲しいと考える人にとって、旧型となった初代スバル レヴォーグは、いまだ「なかなか魅力的な選択肢である」と断言して構わないだろう。

レヴォーグ ▲初代レヴォーグは2017年8月にマイナーチェンジ行っている。これ以降の後期型は中古車の流通台数が少ないが、アイサイト・ツーリングアシストを装備する

中古車を選ぶ際は、3代目モデルにしかないハイスペックで超強力な2Lターボエンジン+スポーティな足回りを堪能できる「2.0 GT-S」、または「2.0 STI スポーツ」を選ぶのもいいとは思う。

こちらは230台超の選択肢があり、総額130万円から探すことができる。総額400万円近い高価格帯にはRECARO製シートやスポーティなエアロが奢られた物件もあるが、走行距離5万km以下の条件だけなら予算200万円から選べる。

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スバル レヴォーグ(初代)× 「2.0 GT-S」&「2.0 STI スポーツ」 × 全国

だが、普通に使う分にはぶっちゃけ1.6Lターボエンジンでも十分以上。そして700台近い中古車が流通量しており、総額100万円(走行距離5万km以下に絞っても総額150万円)から狙うことができる。

こうした“買いやすさ”的な観点に加えて足回りも、スポーティな「GT-S」ではなく標準の「GT」の方が、フランス車的なしなやかさがあって好ましいかもしれませんよ――ということを、最後に申し上げたいと思う。

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スバル レヴォーグ(初代) × 「1.6 GT」&「1.6 GT-S」 × 全国

※記事内の情報は2022年4月25日時点のものです。

文/伊達軍曹 写真/スバル
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。