▲STIがスバル WRXをベースにチューニングを施したWRX S4 tS。2ペダル仕様のモデルだが、どんな走りを見せてくれるのだろうか ▲STIがスバル WRXをベースにチューニングを施したWRX S4 tS。2ペダル仕様のモデルだが、どんな走りを見せてくれるのだろうか

STIによる完成度の高いチューニングが施された2台

昨年末に次世代プラットフォームを採用したインプレッサをデビューさせたスバル。満を持しての登場とみえ、ボディ剛性をはじめとするその出来栄えは素晴らしかった。その記憶が新しい最中に迎えたのが先日のSTIによる試乗会である。テストする機会を得たのはWRX S4 tSと、XVハイブリッド tSの2台だ。どちらも先述のインプレッサよりは前の世代の車をSTIがチューニングしたモデルで、新世代の車にどこまで完成度で迫れるか、注目しながらの試乗となった。
 

疲労感が少なく、ドライバーに優しいWRX S4 tS

まずはWRX S4 tS。2ペダル仕様で、エンジンはベース車と同じ2L。AT仕様(CVT)といっても本格的なスポーツドライビングに耐えうるもので、空冷のオイルクーラーが装備されているのがその一例だ。

もともとATはMTに比べ多くの熱を発生し、ATフルードの性能が安定しなくなることがある。スポーツ走行時はなおさらだが、これをオイルクーラーで冷却することで、スポーツ走行時でも安定した変速が可能になっているのだ。加えてフルードが劣化しにくくなるので、どんなユーザーにも恩恵がある装備である。

エンジンについてはベース車と変わらず、吸排気系のチューニングが中心だが、レスポンスはとても良く、まったくストレスを感じさせなかった。ターボ車の場合は吸排気系、例えばマフラーをむやみに交換すると低速域でトルクが不足することがあるが、そのあたりもまったく問題ない。上品なエグゾーストノートと走行性能が両立された、素晴らしいチューニングである。

次にハンドリングについて触れてみたい。今回試乗が行われた河口湖周辺の林道は路面状態が良好とはいえず、足回りが固く引き締められた、限界性能の高い車の場合は直線でもステアリングを取られることがある。このWRX S4 tSももちろんそうした限界性能が高められた車なのだが、果たしてとてもマナーのよいステアリングフィールだった。ドライバーの操作に対してのダイレクト感も損われておらず、狙ったラインを正確にトレースできる。ホールド性の良いシートも相まって、意のままのドライビングが可能だ。

WRX S4 tsは、全体として公道での走行でもストレスを感じにくく、加えてスポーツ走行にも耐えうる性能を持った完成度の高い車に仕上がっていると言えるだろう。
 

▲今回の試乗車は「NBR CHALLENGE PACKAGE」で、大型リアスポイラーが装備されていた。その他、鍛造アルミホイールがブラック塗装(通常のS4 tSはシルバー)となるなど装備が異なっている ▲今回の試乗車は「NBR CHALLENGE PACKAGE」で、大型リアスポイラーが装備されていた。その他、鍛造アルミホイールがブラック塗装(通常のS4 tSはシルバー)となるなど装備が異なっている
▲シートはSTI製のバケットタイプ。ベースがスバル車ということで、予防安全・運転支援機能で評価の高いアイサイト Ver.3も備える ▲シートはSTI製のバケットタイプ。ベースがスバル車ということで、予防安全・運転支援機能で評価の高いアイサイト Ver.3も備える

今までのSTIのイメージを覆すデザインと伝統の走りが融合したXVハイブリッド tS

▲随所に用いられたオレンジが印象的なXVハイブリッド tS。ボディカラーは写真のクリスタルホワイト・パールの他、ブラック系、ブルー系の全3色 ▲随所に用いられたオレンジが印象的なXVハイブリッド tS。ボディカラーは写真のクリスタルホワイト・パールの他、ブラック系、ブルー系の全3色

さて、次はXVハイブリッド tsである。WRX S4 tsと同じく、STIの手によるチューニングが施されている車だが、こちらはホイールやスポイラーのカラーリングを見る限りいささか可愛らしい印象もある車だ。しかしよくよく考えてみると、ナロー時代のポルシェ 911RSに通ずるセンスがちりばめられているようにも思える。

もちろん本来はスパルタンなイメージのSTIだけあり、XVについても相応のチューニングが施されている。主なポイントは剛性の強化であり、これはハードなスポーツ走行をするユーザーからスタイリング重視というユーザーまで、どのレベルのユーザーにも恩恵がある。というのも、ボディ剛性が上がることによって細かな振動まで確実にサスペンションが捉えて吸収でき、疲労の原因となる不快なバイブレーションが減るからだ。

XVハイブリッド tSについては1月22日(WRX S4 tSは3月12日まで)をもって注文が締め切られ、その後は在庫のみの販売となってしまうが、今後中古車でそれを購入した人がいれば「なぜその車を選んだのか」と理由を聞いてみたくなる車である。もちろんネガティブな意味ではなく、ボディをはじめ地味だが本質的なチューニングと、これまでのSTIのイメージを覆すスタイリングという、選ぶ人のセンスが光って見える車だからである。
 

▲見た目だけでなく、フロントストラットやリアダンパーがSTI製に換装され、またタワーバーも装着されるなど足回り、ボディに手が加えられている。オプションのスポーツマフラーは低速域ではSTIの中でも上位に入るほど迫力のある音を奏でていた。中速~高速では意外にも音が抑えられていたこともお伝えしておく ▲見た目だけでなく、フロントストラットやリアダンパーがSTI製に換装され、またタワーバーも装着されるなど足回り、ボディに手が加えられている。オプションのスポーツマフラーは低速域ではSTIの中でも上位に入るほど迫力のある音を奏でていた。中速~高速では意外にも音が抑えられていたこともお伝えしておく
▲インテリアにも随所にオレンジが差し色として使われている。シートはウルトラスエードと本革を組み合わせた専用のもの ▲インテリアにも随所にオレンジが差し色として使われている。シートはウルトラスエードと本革を組み合わせた専用のもの

【SPECIFICATIONS】

WRX S4 tS
■乗車定員:5名 ■総排気量:1998cc
■エンジン種類:水平対向4気筒+ターボ
■使用燃料:ハイオク ■駆動方式:4WD ■トランスミッション:CVT
■最高出力:221(300)/5600[kW(PS)/rpm]
■最大トルク:400(40.8)/2000-4800[N・m(kgf・m)/rpm]
■全長x全幅x全高:4635×1795×1475mm ■ホイールベース:2650mm
■車両重量:1550kg ■車両価格:496万8000円(税込)
 

XVハイブリッド tS
■乗車定員:5名 ■総排気量:1995cc
■エンジン種類:水平対向4気筒+モーター
■使用燃料:レギュラー ■駆動方式:4WD ■トランスミッション:CVT
■最高出力:110(150)/6000[kw(ps)/rpm]+10(13.6)[kW(PS)]
■最大トルク:196(20.0)/4200[N・m(kgf・m)/rpm]+65(6.6)[N・m(kgf・m)]
■全長x全幅x全高:4485×1780×1550mm ■ホイールベース:2640mm
■車両重量:1530kg ■車両価格:332万6400円(税込)
 

text/松本英雄
photo/奥隅圭之