アウディ S5 アバント▲アウディは基幹モデルとなるミドルクラスセダン/アバント(ステーションワゴン)「A4」の車名を「A5」に変更しフルモデルチェンジ。ハイパフォーマンスモデルも「S5」に変更されている

内燃エンジン車用の新プラットフォームを採用

2025年2月、新型アウディ「A5シリーズ」が発売された。これは従来のA4シリーズの後継という位置づけにある、いわゆるDセグメントモデルだ。

アウディに詳しい方はご存じかと思うが、従来このDセグメントでは、「セダン」とステーションワゴンの「アバント」がA4、その派生車種である「クーペ」、「カブリオレ」、5ドアハッチバックの「スポーツバック」にA5の名が使用されてきた。

しかし、新型では車名をA5シリーズに一本化。モデルバリエーションもリアにハッチゲートを備えたファストバックの「セダン」とステーションワゴンの「アバント」の2モデルのみの設定となっている。

なぜ車名がA5になったのか。これは100%電動化に向けて車名の再編成を進めてきたことによるものだ。アウディは2024年の段階で電気自動車には偶数の、内燃エンジン車には奇数の数字を割り当てると発表していた。したがってDセグメントにおいて「4」は電気自動車を、「5」は内燃エンジン車を意味するというわけだ。

ところがその法則はとりやめ、今後は従来どおりセダン・ハッチバックを「A」、SUVを「Q」としながら、それにボディサイズに合わせて1~8の数字を組み合わせるカタチに戻す予定という。電気自動車はこれまでのように車名の最後に「e-tron」を付加する。

アウディはこれまで2026年以降に登場するすべてのモデルを電気自動車とし、2033年をもって内燃エンジンの製造は終了するという電動化戦略を打ち出していた。しかし、電動化は想定していたスピードでは進んでおらず戦略変更を余儀なくされている。今後は年を区切らず市場動向に合わせて柔軟に対応するという声明を出している。

そのような流れで、すでにひとクラス上のEセグメントにおいては、電気自動車のミッドサイズSUVは「Q6 e-tron」となり、今後日本にも導入予定の内燃エンジンのステーションワゴンは「A6アバント」と、「6」を電気自動車にも内燃エンジン車にも使用している。
 

アウディ S5 アバント▲ルーフスポイラーや鋭い傾斜のDピラーがダイナミックなスタイルを演出。S5は19インチアルミホイールを標準装備する

車名としては過渡期にある新型A5シリーズだが、その中身はオールニューの新世代モデル。注目のポイントは、プラットフォームが刷新されたこと。これまでのMLBプラットフォームの後継となる「プレミアム・プラットフォーム・コンバスション(PPC)」と呼ばれる、縦置きの内燃エンジン車用のものだ。

これはポルシェと共同開発した電気自動車用の「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」と対となるもの。アウディはこれを使って新型Q6 e-tronを、ポルシェは新型マカンをすでに日本でも発売している。

プラットフォームを刷新したことにより、性能向上はもちろん、電動化、環境規制への対応、安全性の向上、最新の電子アーキテクチャーの採用によりインフォテインメントシステムの進化など、様々なメリットが生まれる。今後はこのPPCをベースに新型Q5やQ7、A6なども導入される予定だ。
 

ラグジュアリーからスポーティまで、思いのままの走り

新型A5シリーズのラインナップは、2L 4気筒ターボで前輪駆動の「A5 TFSI」(最高出力110kW/150ps)とその高出力版(150kW/204ps)の「TFSIクワトロ」、2Lディーゼルターボの「TDIクワトロ」、そして3L V6ターボを搭載する「S5」からなり、それぞれにセダンとアバントが用意されている。

今回試乗したモデルは、スポーツグレードのS5アバントだった。ボディサイズは全長4835mm×全幅1860mm×全高1450mm、ホイールベース2895mmで従来型と比べてホイールベースは70mm延長されている。そのおかげで室内空間は旧型A6と同等のサイズにまで拡大している。
 

アウディ S5 アバント▲ホイールベースを70㎜拡大しリアオーバーハングを短くすることで、ロングノーズ&ショートデッキのスポーティなスタイルに仕立てられた
アウディ S5 アバント▲バーチャルコックピットプラスとセンタータッチディスプレイに加えパッセンジャーディスプレイ(オプション)を備える

エクステリアでは、L字型インサート付きのマットチタンブラックで仕上げたハニカムメッシュのシングルフレームグリルと大型エアインテーク、そしてリアの4本出しテールパイプがSモデルの特徴。

そしてアウディの得意とするライティング機能が進化しており、フロントのLEDデイタイムランニングライトおよびOLEDリアライトの配光パターンをそれぞれ8種類から好みに応じて選択可能となっている。このリアライトには停車時に後続車が近づくとOLEDセグメントを強く点灯させることで車間距離の確保を促す機能や、ハザードランプに連動して警告シンボルを表示する機能も搭載している。

インテリアも一新。新世代のインフォテインメントシステムを搭載しており、11.9インチのAudi バーチャルコックピットプラス(デジタルメーター)と、14.5インチのMMIタッチディスプレイ、そして助手席用の10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイによって構成されている。Sモデルにはフラットボトムデザインのステアリングやスポーツシートなども標準装備する。
 

アウディ S5 アバント▲環境性能を向上させた新開発ハイブリッドシステムを採用。S5には367psの3L V6ターボを搭載する

車内の乗り込むとまずドアの閉まり音がいい。いかにも密閉感があって静粛性が高い。そして電動アシストの恩恵もあり、軽々と滑らかに走り出す。S5が搭載する3L V6ターボエンジンは最高出力270kW(367ps)、最大トルク550N・mを発揮。48V MHEV plusシステムにより、最大18kW(24ps)の電力を追加し減速時には最大25kWのエネルギーを回生する。この新世代のマイルドハイブリッドシステムにより低速走行時には電動走行が可能となった。デジタルメーターにアシスト状況を表示する機能は備わっていないが、駐車場内での徐行時など気づけば電動走行しているし、市街地などを走行している際にも耳をすませば積極的にエネルギー回生を行っていることがわかる。

Sモデルだからと少しばかり硬めの乗り心地を予想していたが、走行モードを「コンフォート」にしておけば、しなやかで洗練されたどちらかといえばラグジュアリーな雰囲気が味わえる。Sモデルなのに物足りないという人は「ダイナミック」に変更すれば、ダンピングコントロールスポーツサスペンションによって、しっかりと引き締まった足さばきになる。

クワトロシステムも新しくなり電子制御式AWDクラッチを採用。これは走行状況に応じて前後アクスルへのトルク配分を最適化。低負荷時にはプロペラシャフトを切りはなし、前輪駆動に切り替えて燃費効率を高める。スポーツドライビング時には、標準装備するリアスポーツディファレンシャルが左右のトルク配分を最適に可変制御してくれるので安定したコーナリングを楽しめる。

近頃、電気自動車に試乗する機会が多くなったこともあるけれど、やはり3L V6エンジンのフィーリングは気持ちがいいものだ。まだまだ積極的に選ぶ価値があると思う。気になるのはこれから登場するであろうRSモデルの車名のこと。普通に考えればRS5になるはずだが、これまで歴史を積み重ねてきた「RS4」の名を途絶えさせないでほしいなとも思うのだ。
 

アウディ S5 アバント▲フロントには立体的なハニカムパターンを備えた、フラットで幅の広いシングルフレームグリルを採用
アウディ S5 アバント▲1ユニットあたり364個のLEDが1秒間に数度の画像を表示する、ダイナミックインジケーター付きデジタルOLEDリアライト。S5に標準装備される
アウディ S5 アバント▲S5はフロントに、Sロゴの入ったスポーツシートを標準装備。室内にはマルチカラーアンビエントライティングも備わる
アウディ S5 アバント▲ホイールベースの拡大により室内が広くなっており、後席もより快適になっている
アウディ S5 アバント▲ラゲージ容量は通常(5名乗車時)で448Lを確保
文/藤野太一 写真/阿部昌也

ライター&エディター

藤野太一

カーセンサー、カーセンサーネットの編集デスクを経て、カーセンサーエッジの創刊デスクを務める。現在はフリーランスのライター&エディターとして、自動車誌をはじめビジネス誌、ライフスタイル誌などにも寄稿する。

先代となるアウディ A4/S4の中古車市場は?

アウディ A4

2016年2月にフルモデルチェンジし5世代目となったセダンとアバントの基幹モデル。モジュラープラットフォーム「MLB evo」や5リンク式サスペンションの採用などにより、乗り心地や走りが向上している。高性能モデルのS4は同年10月に登場。過給器をスーパーチャージャーからツインスクロールターボへと変更した3L V6を搭載、専用サスペンションや駆動力を可変制御する4WDなどを備えた。2020年にマイナーチェンジ(写真)が行われ、ブリスタフェンダーの採用(A4)など内外装を変更している。

2025年4月上旬時点で、中古車市場にはA4が200台程度流通、支払総額の価格帯は100万~650万円となる。A4アバントは180台程度で110万~660万円。2021年に追加設定されたディーゼルエンジン搭載車もセダンとアバントともに10台弱が流通している。S4とS4アバントはどちらも15台程度が探せる。
 

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文/編集部、写真/尾形和美

【試乗車 諸元・スペック表】
●3.0 4WD

型式 3AA-FUS 最小回転半径 5.6m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.84m×1.86m×1.45m
ドア数 5 ホイールベース 2.9m
ミッション 7AT 前トレッド/後トレッド 1.62m/1.61m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1990kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 -m
マニュアルモード
標準色

アルコナホワイト、グレイシアホワイトメタリック、ミトスブラックメタリック、グレナデンレッドメタリック、ファーマメントブルーメタリック、ホライズンブルーメタリック、デイトナグレーパールエフェクト

オプション色

アスカリブルーメタリック

掲載コメント

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型式 3AA-FUS
駆動方式 4WD
ドア数 5
ミッション 7AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 アルコナホワイト、グレイシアホワイトメタリック、ミトスブラックメタリック、グレナデンレッドメタリック、ファーマメントブルーメタリック、ホライズンブルーメタリック、デイトナグレーパールエフェクト
オプション色 アスカリブルーメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.6m
全長×全幅×
全高
4.84m×1.86m×1.45m
ホイール
ベース
2.9m
前トレッド/
後トレッド
1.62m/1.61m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1990kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
掲載用コメント -
エンジン型式 DWV-4551-ECR 環境対策エンジン -
種類 V型6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 60リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 2994cc 燃費(WLTCモード) 13.3km/L
└市街地:10.4km/L
└郊外:13.4km/L
└高速:14.9km/L
燃費基準達成 -
最高出力 367ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
550(56.1)/4000
エンジン型式 DWV-4551-ECR
種類 V型6気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 2994cc
最高出力 367ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
550(56.1)/4000
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 60リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 13.3km/L
└市街地:10.4km/L
└郊外: 13.4km/L
└高速: 14.9km/L
燃費基準達成 -