ミツオカ ビュート ▲「レトロな雰囲気の車に乗りたいけど、中身もレトロ=古くて壊れやすいのはちょっと困る」と考える人は多いでしょう。そんな人にオススメなのが「中身は普通に新しめだけど、外観はほぼミッドセンチュリー」な車、ミツオカ ビュートなのです!

故障が怖いからという理由で「レトロな車」をあきらめる必要はない

「レトロなもの」というのは、見た目も中身もなかなかいいものです。

そのため例えば写真でも、最新のスマホで撮った画像に「フィルムカメラっぽい感じ」のフィルターをわざわざかけている人は多いでしょうし、中には「本当にフィルム式のカメラを買い、アナログな撮影を楽しむ」なんてことを趣味にしている人もいるでしょう。

それと同様に車も、レトロなやつは最高です。

最近のギラギラした車と違ってデザインがかわいいですし、乗り味もアナログな“手動感”が強いため、なんだかとっても癒やされるのです。

しかし、レトロでかわいい車というのは、当たり前ですが「古い車」とほぼ同義ですので、その維持はそんなに簡単ではありません。

最近の車と違って放っておくとすぐ壊れますし(壊れても直せばいいのですが、いちいち直すのは正直けっこう大変です)、出先で止まってしまい、JAFなどの救援を呼ばなければならなくなる可能性は、現代の車と比べて高いでしょう。

そうなると「レトロはあきらめて、現代的なデザインの車を買うしかないのかな……?」などと悲しい気分になってくるのですが、悲しみにくれる必要はありません。

世の中には「見た目はきわめてレトロなのだが、機械としての中身はそこそこ新しい」という車もあるからです。

その車の名前は、ミツオカ ビュート。

富山県に本社がある、光岡自動車という“日本で10番目の乗用車メーカー”が作っているクラシカルな、しかし中身的にはまあまあ新しい、5ナンバーサイズの4ドアセダンです。

ミツオカ ビュート▲こちらが現行型ミツオカ ビュートのリアビュー。1950年代から60年代にかけての英国車をデザイン上のモチーフにしている

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ところで「光岡自動車」ってどんな自動車メーカー?

ミツオカ ビュートを紹介する前に、そもそも「光岡自動車」とはどんなメーカーなのか簡単に触れておきましょう。

富山の光岡自動車は、とってもユニークな自動車メーカーです。創業者の光岡 進さんはもともと大手自動車ブランドのディーラーに勤務していたのですが、独立後、自動車整備と中古車販売の仕事を自分で行うことになりました。

まぁここまでは「よくある話」なのですが、光岡 進さんがユニークなのは「その後、自社に開発部を作り、まったくの新型車を開発して販売する『自動車メーカー』になった」という点です。

1982年に発売された最初の市販車は50ccのエンジンを積んだ超マイクロカーでしたが、その後は様々な名車のレプリカを製造。そしてスーパーセブンという英国製スポーツカーのレプリカである「ミツオカ ゼロワン」を作った際に、当時の運輸省に「型式認証」の取得を申請しました。

これが見事に認められたため、光岡自動車はホンダ以来、日本では32年ぶりに誕生した「新しい自動車メーカー」になったのです。

ある時期までは「往年の名車のレプリカ」だけを作っていた光岡自動車(新車製造部門のブランド名はミツオカ)ですが、2006年には流麗で個性的なオリジナルデザインのスーパーカー「オロチ」を発売。

その後も、往年のアメリカンスポーツカーをほうふつとさせる「ロックスター」というオープンスポーツが大きな話題になるなど、けっこうな躍進を続けています。

巨大メーカーと違い、ミツオカの車は富山県の工場で手作業によりじっくり作られているため、年間生産台数は500台ほどでしかありません。

しかし、その分だけ「希少性が高い」といえるのがミツオカの車ですので、「人とカブらない車に乗りたい」と考えている人であれば、注目してみる価値は大だといえるでしょう。

ミツオカ ヒミコ▲こちらは1930年代のスポーツカー風デザインとなる「ミツオカ ヒミコ」。こちらのベースとなっているのはマツダ ロードスターの現行モデル

AT限定免許でも運転できる“クラシックカー”

そんな光岡自動車が昔から作り続けている人気モデルが、今回ご紹介する「ミツオカ ビュート」です。

ミツオカ ビュートは、日産のマーチというコンパクトカーをベースに、往年の英国車「ジャガー Mk2」をモチーフとしたデザインの外板パーツを取り付けている4ドアセダン。

その初代は1993年に発売され、現在は、現行型日産 マーチをベースにして作られている3代目のミツオカ ビュートが販売されています。

ミツオカ ビュート▲ミツオカ ビュートのデザインとイメージはおおむねこのような感じ。写真は2020年4月に発売された特別仕様車「ビュート カフェラテ」
ミツオカ ビュート▲往年の「ジャガーMk2」を思わせるクラシカルな外観は、1993年に誕生した初代以来、変わらぬ「ミツオカ ビュート」のチャームポイント
ミツオカ ビュート▲ビュートのインテリアはこのような感じ。大きな板状のインパネルが与えられるなど、室内デザインも、ベース車である日産 マーチとの差別化が図られている。写真は特別仕様車「ビュート カフェラテ」

2012年5月に発売された3代目・現行型ビュートのボディサイズは全長4515mm×全幅1680mm×全高1550mm。ベース車両である現行型日産 マーチより73cmほど長く、1.5cm車幅が広くなっていますが、それでも十分以上に「取り回しがラクなサイズ」ではあります。

搭載エンジンは現行型マーチと同じ最高出力79psの1.2L直3自然吸気で、トランスミッションもマーチと同じCVT。本当のクラシックカーはMTである場合がほとんどですが、ミツオカ ビュートであればAT限定免許の人でも普通に運転できるわけです。

2013年8月にはボディカラーの選択肢が大幅に増え、2015年1月にはクラシカルなメッキパーツなどを多用した「12STプレミアム」を追加。

また、同年7月にはビュートの5ドアハッチバック版である「ビュートなでしこ」も追加されました。

 

さらに、2020年10月からは、インテリジェントエマージェンシーブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報などが全車標準装備になっています。

ミツオカ ビュートなでしこ▲こちらは独立したトランクルームをもたない5ドアハッチバックの「ビュートなでしこ」。中古車の数は少なめだが、2022年8月下旬現在、約5台がいちおう流通している

中古車は200万円台半ばの予算で低走行物件が狙える

そんな現行型ミツオカ ビュートは、「中古車」もそれなりに豊富な数が流通しています。

まぁ豊富といっても、もともとの数が少ない車ですので、2022年8月下旬現在の流通量は約30台でしかないのですが、少なくとも「3台」とかではありません。そのため「希少すぎて見つけるのが困難!」ということにはならないはずです。

中古車の価格は総額200万~380万円といったところ。2022年8月時点の平均価格である244.6万円付近では、2015~2019年式あたりの各種グレードの、走行1万km台から2万km台あたりの中古車を見つけることができます。

ミツオカ ビュート▲現代的な街並みの中、良い意味で異彩を放つミツオカ ビュートの世界観は、ハマる人にはハマるはず!

ちなみに「クラシカルでかわいいデザインの車」というと、まず頭に浮かぶのは「ミニ」であり、実際にミニの購入を検討している人も多いかもしれません。

それはそれで悪くない話であり、ミニは車としてもとってもステキなので、オススメしたい選択肢であることは間違いありません。

とはいえ、あえてミニの弱点を挙げるとしたら、「あまりにも人気があるから、街を走っている数がきわめて多く、人とカブりまくってしまう」ということになるでしょうか。

しかし、幸いなことに(?)ミツオカ ビュートはやや希少な手作りの車ですので、路上や駐車場などでカブることは可能性ゼロとはいいきれませんが、「たぶんほとんどないでしょう」とはいえるはず。

そして見た目的にはきわめてレトロではあるものの、中身は現行型の日産 マーチですので部品代も手頃であり、維持するのは非常に容易です。

「レトロな見た目の車は好きだけど、別にメンテナンスでヒーヒー言いたいわけじゃない」と考えている人は、意外な大穴(?)であるミツオカ ビュートの現行型を、ぜひ一度真剣にチェックしてみることをオススメいたします。

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文/伊達軍曹 写真/光岡自動車
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。